<産業用バルブWTO結審>日韓どっちも勝訴宣言ってどうなってるの

今週、立て続けに日韓のWTOに関する案件が報道されました。
まず、産業用バルブに対する韓国のアンチダンピング関税に関する結果ですが、なんと日韓双方が勝訴を叫ぶという事態になっています。どういうことなのでしょうか?

■どこを勝利したと言っているのかその差を見てみる
今回のWTO紛争は、2015年に日本企業が国内価格よりも安い価格で、韓国に産業用バルブを輸出しているとして、最大22.7%のアンチダンピング関税を課したことが発端です。
なので当然、このアンチダンピング関税が適正がどうかが争点です。それを踏まえて日韓両国の主張を見てみましょう。

「なぜ?WTO紛争で日韓とも「勝訴」を主張する事態に=韓国ネット「どう見ても日本の完敗」「WTOは賢い」」2019年9月11日
WTOは日本が提起した13件の争点のうち10件について「韓国の措置はWTO協定に違反しない」、3件について「協定に合致しない」と判断したが、同部はこの3件について「手続きと方法論についての問題であるため紛争の核心的事案とは関係ない」と判断したと説明。
チョン局長は「WTOの最終判断に基づき多少調整することはできるが、措置を却下または取り下げよと主張するのは間違い」と強調したという。
https://www.recordchina.co.jp/b744057-s0-c10-d0058.html

韓国は、日本の主張を認めた部分のWTOの判定を、「核心的事案でない」としています。一応「多少調整することはできる」と幅を持たせていますが、「措置を却下、取り下げよ」という日本の主張を認めていません。
対して日本は単純明快です。

「韓国の反ダンピング課税はWTO違反 日本の勝訴が確定」
報告書は30日以内に正式に採択される。経済産業省は11日、韓国が報告書の勧告を早期に履行し、本件措置を速やかに撤廃することを求めるとし、「仮に韓国が勧告を履行しない場合には、WTO協定が定める手続きにのっとり、対抗措置を発動することができる」とした。
https://www.asahi.com/articles/ASM9C027CM9BULFA03J.html

「勧告を履行しろ。でなければ対抗措置を取る」ということですね。この対抗措置ですが、即座に行うことはできません。そして手順を踏む必要があります。

韓国がすぐに履行できない場合には15カ月間を越えない範囲で猶予期間が与えられる。
この期間内に勧告などを履行できなかった場合には日本は代償を求めることができ、一定の期間の間に代償について合意ができなかった場合は、日本は対抗措置を取ることについてDSBの承認を求めることができる。
DSBは全加盟国が異議を唱えない限り採択されるネガティブ・コンセンサス方式を採用しているため、DSBの承認が得られるのはほぼ確実。
https://maonline.jp/articles/wto_japan_korea20190912

つまりWTOの紛争解決機関(DSB)に、「対抗措置を取りますよ」と承認を求める必要はありますが、これを拒否されることはまず無いということですね。WTOのお墨付きが出た形になりますから、WTOの判定は強力なのです。
もちろん今回の結果が委員会で採決されるまで、30日の猶予期間がありますから、その間に日韓が妥協点を見出せば、判定の結果を回避できます。
ただ、朝鮮日報の続報を見ると、韓国側がこの猶予期間の意味を、勘違いしている可能性があります。

WTOダンピング紛争判定に韓日いずれも「勝利宣言」」朝鮮日報2019年9月12日
WTOは一審で韓国を支持したが、今回は「韓国の分析方式は不適切だ」として、日本を支持した。実際にこうした主張が認められ、関税が見直された例があるため、日本は重要な争点だと主張した。しかし、専門家は関税を引き下げるかどうかはまだ推移を見守るべきだと主張する。韓国が論理を補強し、WTOを説得すれば、関税を見直さなくてもよいからだ。
https://news.livedoor.com/article/detail/17069764/

いやいやいや。
WTOの紛争解決機関(DSB)は二審制で、今回の上級委員会が最終判定です。今から論理補強をしてWTOを説得って、WTOの紛争解決規則を何もわかってないじゃないですか。これ今からロビー活動してひっくり返せって言ってるんですかね? WTOでそれをやると?
まぁ、今の韓国は暴走状態ですから、何をやるかわかりません。各省庁は先入観に囚われず、緊密に対応していって欲しいですね。

■ついにホワイト国排除についてWTO提訴
そしてもう一つのWTO案件。日本が7月から実施した、フッ化水素など3品目の輸出管理を厳格化した措置について、韓国がWTOへの提訴を決定しました。

「「日本輸出規制」WTO提訴…韓国政府、69日ぶりに剣を抜いた」
韓国政府は、関税と貿易に関する一般協定(GATT)最恵国待遇(1条)、数量制限の一般的禁止(11条)、貿易規則の公表および施行義務(10条)に違反したと見た。
http://japan.hani.co.kr/arti/economy/34345.html

日本は、1条と11条に関しては、21条の「安全保障における例外規定」で反論するつもりでしょうし、10条の公表と施行義務は、5時間説明会をやったことで反論するつもりだと思います。
とりあえず、今後10日以内に2国間協議を行うかどうかが焦点です。

 

「韓国のWTO提訴、日本の反論根拠は「GATT21条」」
WTOの紛争解決手続きは、まず2国間で協議を行う。日本は原則10日以内に、韓国からの協議要請に応じるかどうかを回答する。日本が協議に応じたら要請から30日以内に協議を開く。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20190912-OYT1T50024/

「輸出管理の強化」ということについて、当初誤解を与えそうな報道やコメントがあったことも考えると、協議においてはっきり、「ホワイト国認定において必要な手続き不備」を宣言した方がいいでしょう。特に2年ごとに開催するはずの「戦略物資会議」が開かれなかったのは、明白な事実ですので、韓国もこの点を否定はできないと思います。
問題は、これまで明らかにしてこなかった「輸出管理を巡る不適切な事案」というのが、どんなものなのかですね。結局は、これがしっかり示してこなかったせいで、混乱を招いている面があります。日本国民も知りたい事実でしょうし、是非「不適切な事案」というものを明示して欲しいですね。

一連の対立で、政府は国際的に日本が優位になったとみている。韓国による世界貿易機関WTO)への提訴も「優遇措置から日本を除外しようとしている韓国が提訴できるわけがない」(外務省幹部)。
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/538770/?page=2

 心配なのは、この外務省側の見通しの悪さです。今の韓国に「できるはずがない」という先入観は極めて危険です。実際提訴に向けて動いてますし、しなかったら逆に韓国国民から突き上げを食らうでしょう。

いい加減、外務省は従来の楽観主義から脱却し、厳しく現状分析して、適切な対処をしていって欲しいですね。

<暴走韓国>日本製品不買条例で日韓は「投資紛争」状態に

9月6日、韓国のプサンとソウルの市議会で、日本企業を「戦犯企業」と呼称し、公共機関が製品を購入しないことを「努力義務」とする条例が可決しました。

 

日本製品の不買条例相次ぐ 韓国 ソウル・釜山市制定」2019/9/6

戦時中に朝鮮半島出身者を働かせたとする日本企業を「戦犯企業」と呼び、これらの市や教育機関が対象企業の製品を購入しないよう努力義務を設ける条例を可決した。ニコンパナソニックなど284社を指定している。

 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49493590W9A900C1EAF000/

 対象企業の数は、実に284社です。凄い数ですね。しかもプサンとソウルの議会だけに留まりません。

 

「日本284社を「戦犯企業」 三菱重など指定 釜山市が条例」2019年9月6日

 釜山市議会によると、ソウルを含め全国十七の地方議会で条例制定に向けた動きが進んでおり、今後相次いで成立する可能性がある。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201909/CK2019090602000292.html

この流れでいけば、韓国中の議会が条例を可決するでしょう。可決しないと「親日」としてバッシングされるんですから、どうしようもないです。

ちなみにこうした企業排除運動では、有名なもので「BDS運動」というものがあります。

 

■吹き荒れた「対イスラエルボイコット運動」とは 

「アラブボイコット調査成果報告書(2018) 」日本貿易振興機構ジェトロ
ボイコット運動に対し各国政府が距離を置き始めている環境の変化
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H29FY/000544.pdf

BDS運動とは、「ボイコット、投資撤収、制裁」(Boycott, Divestment, and Sanctions)の頭文字を取った運動です。イスラエルによるゴラン高原占領に反対し、イスラエルに対する企業活動を、「ボイコット、投資撤収、制裁する」というものです。

ただ、やはり自由貿易を妨げる運動は長続きしませんで、今回の韓国のように条例化までいくことは、余りありませんでした。当のパレスチナにも条例はありません。むしろその後に成立した「反BDS法」の方が導入した国の数が多いくらいです。

それだけではなく、韓国の日本製品不買運動と大きな違いがあるのですね。それは、イスラエルによるゴラン高原占領は、1981年に国連安保理決議第497号で「国際法違反である」と、決議されているんです。しかも全会一致です。アメリカも拒否権を発動できませんでした。まぁ今年の6月にトランプ大統領が発言をひっくり返して、結構物議をかもしたりしたのですが。

しかも、日韓には「日韓投資協定」という国際条約があります。今回の地方議会が「戦犯国」として日本企業に一方的に不利益を与える行為は、この条約における「紛争状態」になってしまうのです。

 

■GSOMIA破棄から韓国は暴走状態

「日韓投資協定」とは、日韓が互いに「最恵国待遇」で投資経済活動を支援する国際条約です。「最恵国待遇」とは「自国の企業に与える待遇と同じもの」という意味ですから、日本企業を一方的に「戦犯国」として韓国経済から排除するのは、明白な条約違反です。

「投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府大韓民国政府との間の協定(略称 日・韓投資協定)

第二条
1 各締約国は、自国の領域内において、投資財産の設立、取得、拡張、運営、経営、維持、使用、享有、売却その他の処分(以下「投資及び事業活動」という。)に関し、自国が同様の状況において自国の投資家及びその投資財産に与える待遇よりも不利でない待遇(以下「内国民待遇」という。)を、他方の締約国の投資家及びその投資財産に与える。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty_020418.html

もちろん不買運動が、市民運動レベルで留まっていたなら、問題ありません。まぁホントは良くないんですが、それと議会で条例を制定するのとは、まるでレベルが違ってきます。

第二十二条
1 各締約国は、この協定に基づく義務を履行するに当たり、自国の領域内の地方政府によるこの協定の遵守を確保するため、利用し得る妥当な措置をとる。

ちゃんと地方政府が勝手なことをしないよう、韓国政府は措置をしないといけない条項がついているわけです。当たり前ですね。「地方政府が決めたことだから仕方がない」とか言ってたら、国際条約を締結する意味がありません。

こうした一方の国が一方に不利益を与える場合、事前に通告しないといけないことになっています(第16条第3項)。そして解決のために「合同委員会」を設置しなければなりません(第20条第1項)。にも関わらず、韓国政府は何もやってないわけですよ。

おかげで、日本からの是正要求を韓国政府が対処しない限り、日韓は「投資紛争」状態に突入してしまうわけです。そして国際仲裁裁判所に付託することができてしまいます。

 「募集工(徴用工)問題」と違うのは、最初の段階で「両国の合意」項目自体がないことです。特に第14条の仲裁裁判所は、相手国が拒否しても手続きは進みます。

第14条:
国対国の紛争処理:締約国は、協定の解釈等について協議を行う。円満な解決が図れない場合、拘束力を有する決定を得るため、一方の締約国の要請に基づき、仲裁裁判所へ付託される。

 そして裁判結果は拘束されます。もちろん、福島産水産物規制で負けた時のようなことは許されません。

 

 ■自由貿易への攻撃である

先に説明したBDS運動では、アイルランドイスラエル排除の法案を決めようとしたことがあります。しかし「自由貿易」を叫んだアメリカが介入し、通りませんでした。

自由貿易への攻撃」というフレーズは、アメリカに特に大きな影響があります。日本は直ちに「自由貿易への攻撃」だとして、韓国を非難し、アメリカと意識を共有するべきでしょう。

 韓国は、GSOMIA破棄以降、「市民が独自に不買運動をしてるだけ」など、表面上取り繕うことすら止めてしまいました。日本も韓国の早い動きに対応していかないと、ドンドン不利益が重なっていくことになります。

 外務省はのんびりしている暇はありませんよ。

<GSOMIA破棄>「国格が上がった!」 大喜びの韓国国民と慌てる保守派マスコミ

韓国側による「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」の破棄が日本側に通告されました。

「日本大使の厳しい抗議に韓国「日本は自尊心を傷つけるほど無視続けた」(2019年8月24日)

日本と韓国が軍事機密を共有するために結んだGSOMIA(=軍事情報包括保護協定)について、韓国政府は23日、日本側に協定の破棄を通告した。

https://news.livedoor.com/article/detail/16972998/

 ■妥協のつもりだった文大統領

上で引用した記事のタイトルが、なかなか強烈です。本文を見てみましょう。「自尊心を傷つけた」ってなんのことを言ってるのでしょうか。

韓国大統領府国家安保室・金鉉宗第2次長「日本の対応は単純な拒否を超え、我々の国家的な自尊心まで傷つけるほど無視を続け、外交的な礼儀を欠いた」

GSOMIAを破棄したのは、日本のせいだと言いたいらしいのですが、そもそも日本側に、ここまで「外交的礼儀を欠いた行動をした」という認識はないと思います。

「日本が対話と協力の道に乗り出せば、われわれは快く手を取る」

この件で他の政府高官の発言を見てみると、決定的だったのはこの8月15日の文大統領の演説のようです。「文大統領が日本に対話の姿勢を示したのに、日本側は無視した」ことが「自尊心を傷つける」ほどの外交的欠礼だというわけですね。

しかしねぇ。両国にある問題について、何の具体的な策を示さないで、「日本側から協力しろ」という発言に、日本がどう反応しろと言うのでしょうか。日本が何か言って、それが外交欠礼だと言うならともかく、無反応だったことが「自尊心を傷つける」とまで言われるのは、納得しがたいものがあります。それに妙に上から目線だし。

この妙な上から目線は、韓国の日本に対する通常対応ではありますが、それにしても輸出管理で困ってる立場の韓国が取る態度ではありません。

 

■「不買運動で日本は大損害」

なぜ文大統領が「日本側が対話をしてくる」と考えていたのでしょうか。その理由は、事実を捻じ曲げる韓国のマスコミにあった可能性があります。

 「【ソウルから 倭人の眼】GSOMIA破棄の韓国、「快く手を取る」と言いつつ逆襲連発」

韓国メディアには「日本が大打撃を受けている」などと報じる社もあった。

韓国での不買運動に日本全土がそれほどの衝撃を受けているとは思えないのだが、少なくとも韓国で不買運動に賛同する者は、そのように信じているか、信じていたいようで、「日本が慌てふためき、困っている」と満足そうに振る舞っている。

 https://www.sankei.com/premium/news/190824/prm1908240009-n3.html

 韓国の反応をインターネットで確認すると、様々なメディアで「日本は不買運動で困ってる!」という報道ばかりです。実際、ユニクロの売上が急減して、「社員を有給で休ませた」という報道もあり、影響はそれなりに出ています。

 

「売り上げ70%急落の韓国ユニクロ、結局全職員に有給休暇検討」(2019年8月20日

https://news.livedoor.com/article/detail/16953001/

がしかし、それで日本の企業が立ち行かなくなるほど大きな損害ではありません。むしろLCCなどの航空会社は日本から中国に振り替えようとした航空路線を中国に拒否されて、全社が赤字確定という緊急事態です。結局困るのは韓国経済という図式です。

ユニクロも有給とか言ってないで、社員を解雇していかないと、不買運動が結局韓国の経済に悪影響があると理解できないのではないでしょうか。

こうした状況を文大統領が誤認して、「日本が困って、対話に乗り出してくる」と考えていたとしたら、先の上から目線の演説も理解できるところです。

 

■事態の深刻さを報道しない韓国マスコミ

GSOMIAの破棄で、韓国マスコミの反応は二分されています。

「協定破棄に韓国世論は二分 深入り避けた米の覇権に陰り」

https://www.asahi.com/articles/ASM8Q6KC2M8QUHBI02X.html

 韓国マスコミは、保守派がGSOMIA破棄に反対。革新派が賛成と分かれました。ただ、この報道のように韓国世論は二分されていません。

インターネットや韓国テレビの報道を見ればわかる通り、圧倒的多数がGSOMIA破棄を賛成しています。なぜか「国格が上がった」と喜ぶ反応もあり、日本人にはよく理解できません。この辺り、マスコミが相変わらず正しい報道をしないことに原因があります。

改めてGSOMIAの正式名称に注目しましょう。正式名称は「軍事情報包括保護協定」です。「軍事情報【共有】協定」ではありません。情報共有ばかり注目されていますが、この協定は「情報の保護」、つまり「第三国への情報共有の禁止」も、うたっているのです。そもそもこの協定は北朝鮮のミサイル発射情報を目的にしてますから、「第三国」の想定は中国、ロシア、そしてもちろん北朝鮮です。日本が軍事情報をこれらの国に流すわけはありませんから、韓国側が流さないように「足枷を掛けた協定」だったのです。もっと言うと、この協定はアメリカが推進したわけですから、アメリカが韓国に足枷を掛けていたのですね。

それを今回、韓国は破棄してしまったのです。

青瓦台「GSOMIA終了決定、韓米同盟一段階アップグレードさせる」」

金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長はこの日の記者会見で「韓国政府は今回の決定が韓米同盟の弱化ではなく、むしろ韓米同盟関係を一段階アップグレードさせ、今よりさらに堅固な韓米同盟関係とすることができるよう努力していく」と述べた。 

https://japanese.joins.com/article/890/256890.html

 何を寝言を言ってるのでしょうか。別の報道では、「アメリカは韓国との協議で(GSOMIA破棄を)理解した」という報道もありましたが、速攻でアメリカに否定され発言を訂正しています。

「GSOMIA破棄に米が理解と説明していた韓国大統領府「うそ」と米高官」(2019年8月24日)

トランプ政権の高官はまた、青瓦台がGSOMIA破棄について「米国が理解を示した」と説明したことに関して、本紙に「うそ(lie)」だとして、「明確に言って事実ではない。ここ(駐米韓国大使館)とソウルの(韓国)外交部に抗議した」と語った。記者の質問に答えたものだが、「うそ」という表現を使ったのも極めてまれなことだ。

https://news.livedoor.com/article/detail/16974107/

ただ問題は、文大統領自身は、本当はわかってやったかもしれないんですね。なにしろ北朝鮮に情報を渡す足枷がなくなるわけですから。 

 

■迫るホワイト国除外決定 また勘違いしそうな韓国

日本は淡々と28日に、韓国のホワイト国除外を推進するでしょう。でもGSOMIA破棄と関連させて、なんらかの処置を取るとは思えません。あくまで輸出管理の変更ですからね。でも韓国側は違った予想をしています。

「GSOMIA終了の影響が長期化なら…半導体業界の生産に支障も」

韓日の軍事情報保護協定(GSOMIA)終了で韓国の半導体業界がまたも悪材料に直面することになった。GSOMIA終了宣言の翌日の23日、証券業界ではGSOMIA終了の影響が長期化すれば国内半導体業界にも追加の被害が予想されるという見方が出てきた。

  https://japanese.joins.com/article/891/256891.html

面倒くさいのはですね。単に「ホワイト国除外」を決定しただけだと、「日本は追加措置を取らなかった。韓国政府の強い姿勢が日本を退かせた」などという報道になりかねないことです。輸出管理と報復措置の区別が全くわかってないので、また勝手に勝利宣言する可能性があるのですね。

韓国には、GSOMIAがアメリカ主導の「保護協定」だったということが、スコーンと頭から消えてるようです。日本は単独で対応するのではなく、アメリカと緊密に連携し、できれば共同で何かを発表する形で対抗していって欲しいですね。それもできるだけ早く。そうでないと、また韓国がどこかトンデモナイ方向へ暴走を始めてしまうかもしれません。

「日本に勝った!」 輸出再開に韓国は狂喜乱舞

輸出管理厳格化後、初の輸出許可が出ました。韓国では蜂の巣をつついたような騒ぎです。
 
「韓国向け輸出、初の許可 申請審査、標準より早く」(2019年08月08日)
公正に手続きを進め、韓国が主張するような禁輸や貿易制限措置でないことを示す狙いがある。
世耕弘成経済産業相は8日の閣議後の記者会見で、日本の措置が「禁輸ではないということを韓国側もよく理解してほしい」と強調した。
日本は、「禁輸ではない」と示すため通常より早く認めたようです。でも、今のところそんなメッセージは韓国側に全く伝わっていません。韓国内の反応は、「負け犬の遠吠え」であります。
 
■「日本を許すな」
「[社説]日本はたじろいで「名分」示すより、交渉に応じよ」ハンギョレ(2019.8.8)
日本の貿易報復で韓国経済の安定性が弱まったが、日本もまた観光や部品輸出などで打撃を避けられない。
日本が一息ついたのには、韓国政府と国民の効果的な対応が一役買ったのだろう。日本がすべての輸出規制を原状復帰させるまで、わずかでも緊張を緩めずに断固たる基調を続けねばならない。
ハンギョレ紙が反応を綺麗にまとめています。
1 日本の措置には、日本にも被害がある。なにより韓国国民の不買運動と他国への代替手段確保の取組が、日本を敗北に追い込んだ。
 2 日本が土下座するまで許してはならない。
 
韓国国民の反応はだいたいこんな感じです。渋谷の交差点で大騒ぎが、24時間続いてると言えばわかりやすいでしょう。
そしてもう一つは、サムスンの力を過信する反応です。
「日本が半導体材料の輸出管理を厳格化、サムスンは最悪の事態に備える?―中国メディア」
記事は、亜洲日報などの韓国メディアが6日、業界関係者の話として「サムスン半導体製造に使われる日本製の化学製品や材料約220種類全てについて、国産製品または日本以外の外国製品で代替することを決定した」と報じたことを紹介した。 
サムスンの広報担当者は
「日本製の半導体材料を全て入れ替えることは目指していない」とコメントし、報道を否定したという。 
https://www.recordchina.co.jp/b735776-s0-c20-d0054.html
 不思議ですよねぇ。普段の反応は「サムスン王国許すまじ」とばかりに大企業への反感に満ちているのに、いざ海外、特に日本との絡みでは「日本に勝ったサムスン!」ってなるんです。
今回もそうでした。複数のマスコミが「サムスンが全材料の国産化を宣言した!」って報道して、それを否定するサムスン側のコメントがあっても、誰も気にしていません。
そして「サムスンがコメントを出した瞬間、日本が負けを認めた! サムスン凄い!」って大騒ぎです。
 
ほんの数日前まで阿鼻叫喚だったのに、今は狂喜乱舞。この振り幅の大きさは、本当に別の人種なんだなぁと感じます。
とにかくマスコミが事実を報道しません。数週間前まで「禁輸措置」って報道するマスコミがあったほどなんです。今ではさすがに少なくなりましたが、それでも「輸出規制」と報道するマスコミが大半です。「輸出管理」という報道は、ほとんどありません。
だから韓国側から見える事実は、
 
1 日本が韓国に輸出規制を仕掛けた!
2 不買運動したら、日本が困って輸出開始した!
 
というものなわけです。ここで韓国政府が、ちゃんと情報を出してコントロールすれば良かったんですが、この政府がまたダメでした。
 
■文大統領「本当の意図はわからない」
「日本の貿易報復 「勝者のないゲーム」=文大統領」
文大統領は「日本は当初、大法院(韓国最高裁)の強制徴用判決を理由に掲げたが、その後は戦略物資の輸出管理の不備のためだと言葉を変えた」として、「本当の意図は何なのか疑問を持っている」と述べた。
文大統領のこのコメントは、本気で「意味わかんねえ」って言ってると思います。実際、読売新聞がこんな報道をしてました。
 
「韓国への「禁輸」4日から、半導体産業に痛手」2019/07/01
これねぇ。おそらく「日本が行うのは輸出管理。何の問題もない」と最初から思われたら無駄になるので、政府の関係者が「禁輸になる可能性もある」みたいなことを言ったと思うんですよね。で、文句を言われたら「ただの輸出管理だよ」と言えばなんとかなると。
しかし、韓国は中国から似たような形の圧力を、これまで何度も何度もやられてきたのです。「圧力なんてしないよ」とコメントしながら、平然と圧力をかける中国を見てきた韓国政府や国民は、日本政府の言葉を全く信じませんでした。この辺り、日本側は「韓国の思考回路」を見誤ったかなと思います。
なにしろ「輸出管理だから、書類が整えば、輸出許可されるぞ」と韓国の掲示板に書き込んでも、「この状況で日本を信じるなんて愚か者のすることだ」と取り合ってくれないし、なおも説明しようとすると「土着倭寇め!」って言われてしまうくらいなんです。
そんな状況で「不買運動」が全国的に広まり、サムスンの「全部材国産化」宣言が出た瞬間、輸出再開がなされました。韓国人は喜びを爆発させ、韓国株価、ウォン相場も回復したのです。
 
■輸出再開で、すこーし冷静に
「計算が複雑になった韓国政府、「ホワイト国」日本除外の正面対抗を延期」2019年08月08日
当初は日本の貿易報復への正面対抗レベルで8日から日本をホワイト国から除外しようとしたが、「ひとまず眺めよう」という慎重論が出ている。 
企画財政部によると、洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官の主宰でこの日開かれた日本輸出規制対応関係長官会議でこのような内容を議論した。
この「ホン財政部長菅」は以前当ブログで取り上げた「日本をホワイト国除外措置にし、日本の韓国ホワイト国除外措置をWTOで訴えよう」という、錯乱したようことを言っていた人ですが、少し様子見になりました。
5時間も説明会をやったというのに、韓国側は全く理解していなかったということです。
なにしろ文大統領が、日本とのパイプ作りを軽視して、必要な人員を削減しまくってしまいましたから、誰も日本と情報共有できる人がいません。日本に来る議員団は、自分たちの言いたいことを言うだけで、日本の言い分を理解する人たちではありませんから、解決につながりません。
 韓国のマスコミはここぞとばかりに、「首脳会議によって、正常化を!」と声高らかに進言していますが、日本側が問題と思っている事案が何も解決していないのに、いきなり首脳同士で会って、笑って握手するわけにはいかないでしょう。
 
■新しい日韓関係がついに始まる
「不正輸出、156件を摘発=戦略物資めぐり4年で-韓国」
こうした不正輸出事件で、韓国側は関係した企業の名前を公開していません。日本としては、それだと輸出管理にならないわけで「関係した企業名を公表しろ」と、求めることが必要だと思います。
包括契約縮小判断における事前協議」といった名目で、「関係企業の情報を出さないと除外範囲を広げるよ」と圧力を加えつつ、韓国との情報共有を目指してはどうでしょうか。
 
8月15日、文大統領が今の狂喜乱舞を受けて「経済侵略を起こした日本は謝罪と賠償しろ」と言い出すか、「やっぱり日本との対話がいるんだな」と方針転換するかが見所です。
ようやく日韓関係は新たな次元に突入します。怒涛の一か月でしたが、まだまだ何もかもこれからです。
次は「募集工(徴用工)問題」のターンになると思います。外務省マターだと思うので、ICJ提訴が仕事になるでしょう。もう福島産水産物で、逆転負けを喫したような信用失墜行為は許されませんよ。これまでの日韓関係とは違うと頭を切り替えて、適切に対応していって欲しいですね。

気勢を上げる韓国政府 悲鳴を上げる韓国企業

8月2日、日本政府は韓国のホワイト指定解除を、閣議決定しました。ロイターから流れてきていた「ポンペオ国務長官による仲裁案」も提示されず、淡々とスケジュールを消化しています。次の山場は8月15日。何が飛び出すでしょうか。

 

■「経済戦争だ!」いきり立つ韓国政府

「経済戦争を選んだ安倍首相…文大統領「私たちは屈しない」」2019-08-03

ホン・ナムギ経済副首相兼企画財政部長官も、国務会議の後に政府ソウル庁舎で開いた関係部署合同ブリーフィングで「私たちも日本をホワイト国から除外して、輸出管理を強化する手続きを踏んでいく」と明らかにした。

また、彼は「日本の措置が世界貿易機関(WTO)規範に全面的に反するものなので、世界貿易機関への提訴準備に一層拍車を加えていく」と強調した。

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/34014.html

もう何度目かわかりませんが、韓国は阿鼻叫喚であります。上の記事でもそうですが、前段と後段で矛盾したことを言ってるのに、誰もおかしいと思いません。

ホン財政部長官は「韓国も日本をホワイト国から除外する」と宣言したわけですが、後段で日本のホワイト国除外措置を、「WTO違反として提訴する」と明言しています。日本の措置が「WTO違反」なら、韓国が同じ措置をしたら「WTO違反」で提訴できなくなるのに、なぜ矛盾を感じないんでしょうか。

WTOの場で日本が「韓国側も日本をホワイト指定解除したのに、WTO違反はおかしい」って反論したら、なんて言うんでしょうかね。「日本はダメだけど、韓国はいい」とか言い出す?

とにかく、沸騰する韓国の中で、企業の方はそうもいかず、逆に悲鳴が出ています。

 

■ハイテク材料の全製品内製化なんて絵空事

「韓国半導体業界、輸出規制への対策手詰まりで前途多難」2019年8月2日

しかしサムスン電子とSKハイニックスと取引しているあるサプライヤーの幹部は「国内サプライヤーの努力に加えて、ハイテク材料を内製化しようとする現在の国家的な取り組みは続くだろう。とはいえ全ての材料を自前で代替するのは不可能だ。そこに到達するには相当な時間がかかる。われわれは日本と協力する必要があるのだ」と打ち明けた。

https://jp.reuters.com/article/southkorea-japan-chip-analysis-idJPKCN1US04K

全部材の内製化なんて、世界中どこの国でもやってないんだから、当たり前のことです。まぁ、技術は金出して買ってくることはできますから、一から開発する必要はないかもしれません。

しかしそれを製造し始めると、自国だけでは全く利益が出ないでしょう。となると、世界に売って行かなくてはならなくなりますが、そうなるとライバルは日本企業となるわけです。これはもう、ちょっとやそっとじゃ利益を出せる話ではありません。韓国企業が不可能だと言うわけです。 

とはいえ、そんなことしなくても、普通に申請されていれば、約90日の審査機関を経て輸出は許可されるでしょう。今回の話は元々、それだけの話なんですから。ですからあと2か月ちょっとで、だんだん申請が許可されるはずです。別に驚くほどの話にはなりません。普通なら。

 

■結局、これもファーウェイ案件であった

今回のホワイト国除外措置で最も変わることは、日本産の高純度フッ化水素などの戦略部材が、韓国から中国の工場へ輸出されることが不可能になる点です。やれ北朝鮮だ、イランだ、と話がありましたが、それらはミスリードだったということなんでしょうか。

「対韓国輸出管理:「横流し先は中国か」を統計から読み解く」 2019年07月17日

この統計からわかるように、中国は日本よりも韓国、台湾からフッ化水素酸を輸入している。重要なことは、中国・台湾にはそれなりに、高純度(と称している)フッ化水素酸製造工場があることだ。逆に、韓国に中国へ輸出できるほどの高純度のフッ化水素酸製造工場があるのかどうか。

http://agora-web.jp/archives/2040357.html

中国貿易の専門家、五十嵐氏が中国の国別フッ化水素輸入量を、統計データから引っ張り出して可視化してくれています。

驚くことに、中国には日本の100倍以上のフッ化水素が、韓国から輸入されているのです。その量、なんと月に300トン。多い時には500トンを超えます。日本から韓国への輸出は、激増して月3000トンを超えています。

ちなみに、台湾も同じような量のフッ化水素を輸出してますが、台湾には日本からの輸出がほとんどありません。つまり台湾が中国へ輸出しているフッ化水素は間違いなく自前です。

しかし韓国は違います。中国にはサムスン西安工場、SKハイニックスの無錫工場があり、中国ファーウェイ向けにハイエンド半導体を大量に製造しています。それらの製品製造に必要な、高純度フッ化水素を自前で精製できるなら、こんな大騒ぎにはなっていません。五十嵐氏が、韓国の「フッ化水素横流し」が間違いないと結論する理由です。

つまり今回のホワイト国除外措置で、韓国から中国のサムスン工場やSK工場で使用する戦略部材を横流しすることは、ほぼ不可能になるわけです。それは工場の交換部品から、センサー、燃料など、1000を超える部材が該当します。

中国としては他人事でなくなるわけで、日本になんらかの圧力を掛ける可能性もありましたが、非常にナイスタイミングでトランプ大統領が「新たな追加関税」を発表してしまい、それどころではなくなってしまいました。

 

■ナイスなトランプツイートで世界の目が逸れる

「トランプ氏、9月からまた中国に追加関税とツイッターで発表 貿易戦争悪化へ」2019年08月2日

ドナルド・トランプ米大統領は1日、9月1日に中国からの輸入品3000億ドル分(約32兆円)を対象とする追加関税を発動するとツイッターで表明した。

https://www.bbc.com/japanese/49201932

 いやぁ全く良いタイミングで、やらかしてくれたお陰で、世界の目は日本の「韓国ホワイト国除外措置」から、トランプツイートに移ってしまいましたね。騒いでるのは韓国だけです。

このまま行けば、たとえ約90日の審査を合格し、輸出が再開されても、中国の工場が止まってしまう可能性があります。それは中国側にとって、韓国が「ファーウェイ規制」に乗ったように見えるかもしれません。

「韓国株2日 続落、2000割れ 7カ月ぶり安値 米中対立を懸念 」2019/8/2

https://www.nikkei.com/article/DGXLASB2IDE22_S9A800C1000000/

さらにトランプツイートと、ホワイト国除外措置のダブルパンチで、韓国株価、ウォン相場共に下落しています。早急に対処しないと、韓国は今年中にも、大変な事態になる可能性もあるわけで、ノンキに反日運動をやっている場合ではありません。

過去には、こういう状況になると「日本との通貨スワップ締結」という話が必ず出てきたのですが、今回はまだ静かです。

日本の財務省は、今から「韓国側からの通貨スワップ要請にどう答えるか」の文案を考え、先手を打って韓国に圧力をかけて欲しいですね。

今こそチャンス! 韓国の「ツートラック外交」を『死語』にする方法

トランプ大統領が、中韓などのWTO途上国優遇措置を否定するコメントを公表し、90日という期限を区切って、対応することを明らかにしました。日本のホワイト国適用除外で、アメリカの仲裁を望んでいた韓国にとって、さぞかし衝撃を受けるニュースと思いきや、ほとんど反応していません。

 

■楽観論と話題逸らしが蔓延する韓国メディア

「【社説】「韓国にWTO途上国優遇なくすべき」というトランプ大統領の警告」

農林畜産食品部は報道資料を通じて「米国はこれまで途上国地位に関連し、WTO加盟国が現在受けている優遇を放棄しろというわけではないという立場を明らかにしてきた」とし「現在の農産物関税や補助金はそのまま維持されるだろう」と伝えた。 
要するに「問題はないはず」という漠然とした楽観だ。

https://japanese.joins.com/article/016/256016.html

 社説で、中央日報が批判を展開してるのが珍しいくらい、他の新聞はこの問題を大きく取り扱っていません。一応大手の朝鮮日報東亜日報ハンギョレ新聞などは扱ってますが、政府も新聞メディアも事態を矮小化して、「慌てるな」というニュアンスのものが多いです。

 

「トランプ、WTO無力化 韓国, 発展途上国地位難しく」ハンギョレ(2019-07-29 

トランプアメリカが、韓国・中国などを名指しで世界貿易機構(WTO)の 開発途上国優遇措置の剥奪を要求した。そのため、我が国の開発途上国措置は現実的に難しくなった。 今回の開発途上国優遇措置を問題視したトランプの心算は、アメリカの WTO 脱退のための名分を積むか、あるいは WTO 体制の無力化を狙っているという分析がでている。

http://www.hani.co.kr/arti/international/globaleconomy/903801.html

ハンギョレ紙のこの報道が典型なのですが、韓国にとって、どういう影響があるのかという大きな問題より、「アメリカのWTO脱退が真の目的」という結論にしてしまうのは、客観的な記事のようで、ミスリードを起こすと思います。まぁ、そもそも日本語化してませんけどね、この記事も。

安倍首相が音頭を取った「ホワイト国優遇措置除外」という対応を、「優遇措置の除外」という同じキーワードを出してきたトランプ大統領が、全く念頭になく偶然同じ言葉を使ったというのは、あり得ないと思うのですが。

 

■建設的な意見が全く出ない韓国の不思議

日本の「ホワイト国除外措置」に対する韓国の反応は、未だ混乱しています。

しかし実に不思議ですね。言及された山ほどある対抗策では「日本が文句を付けようのない完璧な輸出書類を出してやれ」とか、「募集工(徴用工)問題で、請求権協定を守ると日本に言えば」とか、本当の意味での解決につながる主張や意見は、全く出てきません。

出てくるのは、「ホワイト国優遇除外措置の撤回を求めるにはどうすればいいか」とかそんな意見ばっかりです。良くて「募集工(徴用工)問題を一旦棚上げにするのが良い」程度ですよ。棚上げじゃないくて、解決しようと何故思わないのか。

 

安倍氏「答えを持ってきていただきたい」要求に青瓦台「いつも答えてきた」反論」2019年07月22日

韓国の青瓦台(チョンワデ、大統領府)は22日、安倍晋三首相が参議院選挙直後、韓国政府に対して「ちゃんと答えを持ってきていただきたい」と脅したことに関連して「韓日関係を過去-未来のツートラックで分けていこうという我々の立場を繰り返し述べてきた」と強調した。

https://japanese.joins.com/article/784/255784.html

 安倍首相のコメントが、「脅し」かどうかはともかく、その返答が「ツートラックで分けていこう」じゃ話が噛み合ってません。でも彼ら、これを本気で言ってるんですね。

バカバカしい話ですが、「ツートラック外交なんて成立しない」と理解させるところから、やらないと話が通じるレベルにならないのです。

ですが、今その千載一遇のチャンスが巡ってきています。

 

■GSOMIAで日本型ツートラック外交を要求しよう

 アメリカが主導したGSOMIA( 軍事情報包括保護協定 )。なぜかこれが、外交カードとして成立すると韓国は思っています。「GSOMIA破棄」なんて言い出したら、アメリカの報復がどうなるかわからないのにです。

 

「“韓米日3国安保の象徴”である軍事情報保護協定カード、米国の仲裁を引き出せるか」2019-07-23

専門家たちは韓日対立が極限に達し、韓国がGSOMIAを延長しなくても情報資産の確保レベルで被る損失は大きくないだろうと口をそろえる。韓米日軍事情報の共有状況をよく知る元軍関係者は「韓日が実質的にやりとりする情報のレベルはそれほど高くはない。韓米連合司令部があるため、韓国が日本から直接得る情報は微々たるものだ」と話した。

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/33957.html

全く役に立たない専門家ですね。これに対して、日本は「GSOMIAは維持する」という姿勢で一貫しています。おかげで、ますます韓国側が「経済で信頼できないと言っているのに、なぜ安全保障で信頼できるのか」といきり立ち、「これは日本にとって必要なもの。外交カードになる」と勘違いする状況になっています。

 

「最近、日本の輸出規制行為などのため経済交流もまともに行われない中、軍事情報交流などとんでもないという主張もある。

https://japanese.joins.com/article/070/256070.html

しかしこの状況は、「ツートラック外交」を葬り去るいい機会になるかもしれません。

つまり、日本側は「GSOMIAを維持する」と言うだけでなく、「韓国とは様々な問題があっても、安全保障問題に関しては、連携すべき課題では連携するツートラック外交を行う」と言及するわけです。これで「日本にとってのツートラック外交とは、安全保障の連携を指す」と再定義することができます。

なぜか彼らは、「経済交流が無いのに、軍事交流できるか」という発想と、「歴史問題で対立しているのに、経済交流だけできるか」という発想が、「同じ形である」ということに気づきません。

「GSOMIA維持問題」は毎年更新する関係上、これからも毎年持ち上がります。「ツートラック外交」を言えば、何か提案した気になってる状況を打開するために、是非「GSOMIA更新問題」を利用して欲しいですね。

「WTOで日本は恥をかく」 韓国の期待が裏切られ阿鼻叫喚

ずーっと混乱が続いている韓国。「日本は韓国との協議を拒否し続けてる!」と大騒ぎです。しかしそもそも、日本が半年以上協議を求めてきた事実があるはずなのですが、そのことはスコーンと頭から抜けてしまって、「日本許すまじ」とヒートアップしている状況です。

 

■「世界は日本に怒ってる!」

ヒートアップを続ける韓国の中でも、特に大きなトピックスがWTOの一般理事会でありました。なぜなら韓国の報道では、「世界が日本に怒ってる」という認識だったからです。

 

「【コラム】安倍-韓半島の悪縁とトランプの平坦でない世界(2)」中央日報

当然、世界メディアも日本を非難している。「安倍首相の輸出規制はトランプ大統領を真似たものであり、グローバル貿易規則への挑戦」(ニューヨークタイムズ)、「安倍晋三の望みのない貿易戦争」(ブルームバーグ通信)、「日本の近視眼的な規制であり自害行為」(エコノミスト)、「自由貿易の恩恵を受けてきた日本の偽善」(ファイナンシャルタイムズ)、「日本の外交がトランプ化している」(ウォールストリートジャーナル)…。 

https://japanese.joins.com/article/919/255919.html

 こうした海外の反応を受けて、WTOでは「日本が世界に吊し上げを食う」と予想されていました。

 

WTO理事会控え、日本「輸出規制」に対する国際世論戦に拍車」ハンギョレ新聞(2019-07-24)

しかし、国際社会でも報復措置ではないという日本の主張を額面通り信じる人は多くない。ブルームバーグ通信は22日、

「しかし、今回の措置は日帝強制占領期に強制徴用労働者の被害に賠償せよという最近の韓国裁判所(最高裁)の判決に対する報復であることは明らかだ」と皮肉った。

http://japan.hani.co.kr/arti/international/33966.html

 この「WTOで日本が世界に吊し上げ」の世論をさらに助長させたのが、文大統領の強気の演説と、福島産水産物禁輸措置において活躍した対応チームの投入でしす。

 

文在寅大統領が日本に3度目の警告」(2019年7月16日)

文在寅大統領は15日、日本政府による半導体材料の輸出管理強化について「韓国の経済成長を妨げたことに等しい」とし、「結局、日本経済により大きな被害が及ぶことを警告する」と批判した。日本政府に「一方的な圧力をやめ、今からでも外交的な解決の場に戻ることを望む」と要求した。

https://news.livedoor.com/article/detail/16779782/

 凄い上から目線であります。措置を撤回してもらいたいなら、「警告する」とか言わない方がいいと思うんですけど、韓国にはこういう態度をオカシイと思う人はいません。「日本の間違った態度を正す」というスタンスが常にあり、日本からの「韓国は間違っている」という指摘には、脊髄反射で拒否する習慣が根付いているせいです。

文大統領のこの強気の姿勢は、WTOでの勝ちを見越したものだと話題になりました。さらにダメ押しが「ドリームチーム」の登場です。

 

WTO韓日戦…韓国「福島産水産物紛争」で逆転勝ちの主役が主軸」(2019年07月24日)

産業通商資源部は4月に日本の福島産水産物輸入禁止措置をめぐるWTO韓日戦で逆転勝ちした主役を主軸に対応チームを構成した。 
  彼らは23~24日にスイスのジュネーブで開かれるWTO一般理事会で国際世論を韓国側につけるための「説得戦」に入る。WTO韓日戦2次戦を戦うドリームチームの面々が関心を引く。

https://japanese.joins.com/article/867/255867.html

 福島産水産物輸入禁止をめぐるWTO大逆転は、韓国のプライドを大いに満足させました。その「ドリームチーム」がまたもWTOで活躍するわけです。韓国国民の期待値は天井知らずの状態でした。

韓国にも日本のワイドショーみたいな番組があって、専門家やコメンテイターが色々事件にコメントをつけるんですが、もう凄かったです。なにしろボルトン大統領補佐官が、WTOに参加することを題材に、「選挙も終わったし、そろそろ安倍はマトモになれ」ってWTOで言うに違いないとか、既に福島案件でWTOの信頼を勝ち取ったドリームチームが出ていけば、「よし、また日本の間違いを正そうじゃないかと一緒に立ち上がってくれる」といった、それこそドリームみたいな話を、番組に出てる人間が、決定事項のようにコメントしてるんですね。

そんな圧倒的勝利予想の中、WTOで日韓の演説がありました。

 

■予想外の結果に、またも阿鼻叫喚

WTOで日本・韓国が論戦 「日韓対立に巻き込まれたくない」との参加国も」

日本と韓国は24日に開かれた世界貿易機関WTO)の一般理事会で、半導体材料の対韓輸出規制についてそれぞれの立場を主張した。

日韓以外の複数国の代表はロイターに、複雑な歴史が絡む2国の対立に巻き込まれたくはないと述べた。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/07/wto-19.php

 韓国側の演説に拍手喝采、などという結果は出ませんでした。またボルトン大統領補佐官からも、この問題に関するコメントは全く無し。「アメリカは日本の暴走を許さない」という期待も、大きくハズレてしまいました。

 

WTOで強気の韓国“支持得た認識” 対立浮き彫り」

議長を通じて、日本側に局長級の協議を要請したが、日本側が理由も言わずに断ったと主張し、「日本が自らの措置に対して自信がなく、非協調的だと立証したかった」と話した。また、韓国メディアによると、日韓以外に発言した国がなかったことについて、「沈黙は韓国への支持とみなすか」との記者の質問に、「異議申し出はなかった」として、事実上支持を受けたとの認識を示している。

https://www.fnn.jp/posts/00421382CX/201907251207_CX_CX

異議は出なかったとして、事実上支持を受けたとみなすという苦しい結果になりました。

この結果について、現在韓国は、様々な意見が飛び出して、またも混乱状態です。見てて思うんですが、なんでこんなに極端なんでしょうね。「韓国が言えば、アメリカがすぐに日本を怒る」。「選挙が終わったら元に戻る」。「WTOで日本が負ける」。でも最終的に現実との乖離が判明して、混乱する。日本の輸出規制(の準備)が始まってから、この展開を延々繰り返してます。昔はもうちょっとマシだった気がするんですけど。

 

さて、日本も笑っていられる訳ではありません。上の記事にもあるとおり、WTOの場で「議長からも協議を開くよう言ってください」という韓国側の要望に応じて、議長が協議開催を日本側に提案しました。しかし日本は、テンプレどおりの言葉しか返していません。曰く「貿易とは関係のない問題であるため、WTOで議論するものではない」。

これは悪手だと思います。議長が仲介しているのです。韓国への回答と違う「協議を開かない理由」をちゃんと示して、韓国側の勝手な言い分を、論破する機会に変える必要がありました。韓国側が反論しようとしたら、「ここで議論はしない」とキッパリ拒否。あくまで議長に対する説明というスタンスを維持しつつ、日本の主張を世界に示していく形です。

「3年間、必要な意見交換をしてこなかったのは韓国だ。また、輸出における不適切事案もあった。日本としては、世界の安全保障のために正しい輸出管理を行っていることを示さなければならない」。

こういうふうに、しっかり主張することが、世界を相手にした世論戦というものなのです。

今回、外務省の山上信吾経済局長が出席したようですが、外務省のやり方はまだダメです。カンペを読むだけでなく、もっと臨機応変に対応できる柔軟さを発揮して欲しいですね。