電脳コイルが星雲賞を受賞

SF界の日本アカデミー賞星雲賞」が発表され、「電脳コイル」がメディア部門を受賞しました。
「第39回星雲賞長編部門 図書館戦争 電脳コイル20世紀少年も受賞」
http://animeanime.jp/news/archives/2008/08/39_20.html

さてこの「電脳コイル」、元はNHKのアニメです。
国から最新電脳技術のモデル都市に指定されている大黒市。そこでは街の至る所に設置されたノードにより、電脳メガネを通してリアルタイムに情報を受け取れるようになっています。主人公のペットである「デンスケ」は電脳ペットなんですが、メガネをかけている限り、どこにでも行けて、主人公たちにくっついてきます。AIのお陰で、手に触れないだけで本物のペットと変わりません。
そんな大黒市で不思議な現象の噂が起きています。電脳の体と実体が離れてしまう「電脳コイル」現象です。都市伝説のはずなのに、「そのせいで人が死んだ」という怪しい噂とともに、子供たちの間ではまことしやかに語られています。
普通の下町と最新の電脳設備が融合した世界で、主人公たちは電脳コイル現象の謎に迫っていく、そういうストーリーです。
この作品、ストーリー自体も面白いのですが、電脳技術に対する日本人と、海外の人との感性の違いを見ると面白いです。
最近の電脳世界の話題というと、「セカンドライフ」があります。これは元は「スノウクラッシュ」というSF小説を元にしていることは、結構有名です。あの「アバター」という自分をコミカライズしたキャラクターも、実はこの「スノウクラッシュ」が元祖ですね。
しかしあくまで名前が「セカンドライフ」です。ということはファーストライフが別にあるわけで、それが所謂「現実世界」、「リアルワールド」です。この2つの世界の対立や問題が、これまでサイバーパンクのミソでした。
しかしロボットが現実世界で対立しなかったように、日本の場合「電脳世界」が必ずしも対立しないんですね。その極北が「電脳コイル」です。
電脳コイル」の世界では、電脳世界は別個ではなく現実世界を補完するものです。ペットで癒しを得たり、携帯電話の代わりになったりしますが、本来対立するものではありません。
しかし現実には壁であるところに、あたかもCGで道があるように表示してしまうと、あっと言う間に対立が起きてしまいます。事故の原因ですし、悪意を持てばどうなるかわかりません。なので法で規制するかどうか、などの未来の問題が待ち構えています。
けれども「セカンドライフ」と違う切り口での電脳技術の実現性であり、また革新性も「セカンドライフ」に負けずとも劣りません。
そんな世界を「電脳コイル」はわかり易く、一発で表現したため、研究者の方々から非常に高いリスペクトを受けています。
是非、一度ご覧になってみてください。