分析屋さんは邪魔のなのか?――評価のあり方を考える

野安ゆきお氏のブログ「野安の電子遊戯博物館」において、「分析屋さんは邪魔」という記事が出されました。
http://retro.mmoh.jp/e90510.html

もう一度、言葉を変えつつ、くりかえしておこう。いま、ネット上で邪魔なのは「醒めてるヤツ」ですよと。

いま、ネットでゲームに関する文章を書いて、ゲームの作り手(というか売り手?)に喜ばれるのは、「おれは、このゲームが好きなんだぁぁぁぁ!!!」と叫ぶタイプです。いま、そういうことを書くサイトが極端に不足しているから。

なるほど。感性を迸らせて書き殴る人は、ブログではめっきり少なくなりました。どっちかと言うと、そういう人は携帯のプロフに行ってしまいましたね。
確かに個性バリバリで文章を書いている人の方が読んでいて楽しいです。
「絶対SIMPLE主義」http://sinplelove.blog34.fc2.com/
というサイトがありまして、なぜかクソゲーばっかり買ってしまい、如何につまらないかをあの手この手で一生懸命書いているサイトがあるんですが(本人は別にクソゲーハンターではないと主張している)、読んでいて本当に面白いです。
しかし「面白いブログ」「つまらないブログ」というのではなく、「邪魔」と言われてしまうと「ん?」と思ってしまいます。

魂の叫びでも、クールに分析でも、個人のブログで必要なのは「どんな切り口でゲームを語るか」だと思うのですね。「冷静に分析」するブログももちろんあって当然のものだと思います。
おそらく野安氏が批判しているのは、「客観的な姿勢に見せかけて、実は批判するだけ」というブログでしょう。もっと言うと「公平性のないブログ」ですね。「いいもの」は良い。「悪いもの」は悪い。ちゃんときっちり線を引っ張っているならいいけど、そうでは無い。これが百害あって一利無しだというなら、同感です。

この手の話が出るたびに思い出すエピソードがあります。黒澤明七人の侍」のエピソードです。今は日本が世界に誇れる最高の映画の1つとして輝く作品ですが、公開当時は観客動員数700万人という大人気だったにも関わらず、日本で賞を取れませんでした。娯楽映画ということで、評論家のウケが悪く、百姓を侮辱しているとか自衛隊賛美だとか、妙にうがった評価が多かったんですね。
ですから海外で絶賛されて初めて、ようやく評価が日本で定着しました。「いいものは良い」と評価できなかった日本映画界は、やがて長い低迷期に入ることになります。
 
「いいものは良い」。クールな分析だろうとホットな叫びだろうと、ちゃんと評価をしなければ、世界最高峰を生み出した業界も没落する。
ゲーム業界でもそれは同じでしょう。単に批判するだけならダメ。たとえブログでも、どれだけ「良い」と思う記事を書いているか? クールに分析するブログほど、もう一度クールに自分のブログを見直す必要があるということでしょうね。