任天堂が特許訴訟で逆転勝訴! 一方SCEは・・・

以前、「任天堂法務部その後の戦歴は?」にて唯一負けた訴訟事例として取り上げた、任天堂とアナスケープとの特許訴訟。
その訴訟の控訴審がありました。なんと任天堂の逆転勝訴です。

家庭用ゲーム機「Wii」や「ゲームキューブ」に使用されるコントローラーの特許が侵害されたとして米テキサス州の未公開企業アナスケープが任天堂を相手取り訴えを起こしていた裁判で、連邦特別行政高裁は13日、任天堂に2100万ドルの支払いを命じた連邦地裁の評決を無効とした。任天堂が逆転勝訴した。
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100417/mcb1004170506022-n2.htm

主要特許がアナスケープに独占された状態の中で、この勝訴はまさに予想外の結果でした。
なにしろアナスケープの特許自体を無効としてしまったのです。

連邦高裁は、アナスケープが主張する特許を無効としたほか、特許侵害があったとの判断やアナスケープへの賠償金も取り消した。

特許無効の判決なんて、そう簡単に出ません。いったい何が起こったのでしょうか?

In reversing the verdict, the appeals court found that claims in U.S. Patent Number 6,906,700, owned by Anascape, are not entitled to the same July 5, 1996, filing date as Anascape's other asserted patent, U.S. Patent Number 6,222,525.
控訴裁判所では、Anascapeの所有する特許番号6,906,700号の特許侵害が、Anascapeの特許(6,222,525号)と同じ1996年7月5日、出願日まで遡らないことがわかりました。
 
The '700 patent was a continuation-in-part of the '535 patent, and the entitlement to the earlier date was necessary for the jury to have found that Nintendo infringed the '700 patent, in part because a prior art Sony product anticipated the asserted claims, the Federal Circuit said.
特許'700号は、特許'535号の一部派生特許でした。そして任天堂が特許'700号を侵害したとするには、1996年に権利が遡っていることが必要でした。なぜならソニーに特許侵害を申請されるからです。
http://www.law360.com/articles/161660

今回の訴訟の焦点は、アナスケープ社の持つ6,222,525号の派生特許である特許6,906,700号の侵害です。元特許の'525号は、1996年7月5日出願ですが、'700号は2000年11月16日出願です。そして'700号の類似特許がソニーから1998年に出願されていました。
アナスケープ社が今回訴訟の対象としたのは、任天堂と既に和解したマイクロソフトだけでソニーは訴訟対象としていません。
これはソニーの方が出願が早いため、訴訟しても負けるからです。ということは、特許侵害を争点にできるのはソニーの権利であり、アナスケープに無いことになります。
1審では、特許'700号を元特許'525号の1996年まで遡って判断されましたが、控訴審ではアナスケープ社がソニーと特許闘争を行わなかったことから、自らソニーの特許の先行性を認める形になってしまいました。
アナスケープ側は、「特許700号は特許525号の派生特許である。だから出願日は遡る」という主張を繰り返したそうですが、裁判に召還された専門家が、その主張を全て否定したようです。
結局相手は名うての特許ゴロでしたが、大逆転劇となりました。任天堂法務部の歴史にまた1ページと言うことでしょうか。まぁ、最高裁にアナスケープが上告する可能性もありますけど。



さて、自分の知らないところで何故か任天堂を助けてしまったSCE。4/1付けで行われたLINUX削除アップデートで、新たな問題に頭を悩ませています。

iapetusさんは、PS3から同機能が削除され、自分の所有するPS3が当初の広告内容通りに機能しなくなったことは、2002年に成立した欧州連合法に違反するとAmazonに苦情を申し立て、それが認められたということです。
その法律によると、商品は「消費者の購入目的」と「販売者に明らかになっている商品の使用目的」を満たしていなければならず、その点が守られない場合は、製造者ではなく販売者の責任となるそうです。
http://www.kotaku.jp/2010/04/linux_ps3_refund.html

確かに当初の性能をダウングレードするわけですから、法律に違反する可能性もありましたね。SCE側は「アップグレードはユーザーの判断」としていますが、アップデートしなかった場合、

PSNへのアクセスや各種サービスが利用できなくなるほか、Ver.3.21以降が必要なPS3向けゲームソフトウェア/BDビデオの再生、DTCP-IPを使ったビデオ再生などが不可能となる。
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20100401_358392.html

ということで、実質ユーザーに選択権はありません。さらにPSNウォレットにチャージしていたお金も使えなくなります。返金も受け付けていないため、そもそも選択肢はあって無いようなものと言えるでしょう。
PSPを持っていれば、PSPのソフト購入等に利用できますので、完全に死んでしまうというわけではありませんが・・・。
ヨーロッパだけでなく、アメリカでも訴訟となる可能性があり、この問題はSCEにとって厳しいものになる場合がありえます。

if the agreement also says that Sony can engage in some nefarious bait-and-switch
scheme, though, the agreement can be challenged in court.
合意書があっても、ソニーが邪悪なおとり販売計画であったと証明できれば、合意は裁判所で疑問を呈されることができます。
http://thedailycougar.com/2010/04/16/sony-falls-short-with-system-update-to-ps3/

アマゾンが既に返金を決めたとの報道もあり、SCEとして払わないわけにはいかないでしょう。問題は今回のようなダイレクトに現金が必要な場合、SCEにそれに耐えうる資金がないと思われることです。
まぁ、おそらくソニー本体が金額を持ってくれるのでしょう。この問題がこじれて、アマゾンがソニー製品を排除したりすれば、ソニー本体の商取引にも影響が必至ですから。
SCEになっても、相変わらず前途多難な道のりと言えそうですね。