IBMがCELLサーバの販売終了をアナウンス

2009年11月25日に公になったCELLの開発中止アナウンス。
当ブログでも取り上げ、ロードマップが2008年6月から更新されていないと指摘していました。(誤報でない次世代CELLの開発中止。そしてインテルはLarrabeeの開発を中止。)
この最後のロードマップでは、2011年前半までに新CPUが出るとしていましたが、このほどIBMからCELLサーバ展開終了のアナウンスが出されました。

IBMは、PowerXCellマルチコアプロセッサの「セル」ファミリーの支持者に、ブレードサーバ購入には、あと6カ月しかないと発表しました。
http://www.theregister.co.uk/2011/06/28/ibm_kills_qs22_blade/

2010年3月23日に旧世代サーバQS21の販売終了がアナウンスされていましたが、今回のアナウンスは現行機種を、2012年1月6日でもって販売終了するアナウンスです。次世代機で2コア32SPEが載るとされていた QSZ2 も発売がキャンセルされ、CELLサーバは市場から姿を消すことになりました。
 
さてそれでは、もしPS3の後継機種が発売される場合、CELLはどうなるのでしょうか?
2011年5月26日に、ソニーの加藤CFOが投資家と電話会談し、その中でPS4開発を認めたと言う報道が、海外からもたらされました。ところが、これが全くの誤報とわかっています。

PSPの次世代機「NGP」のことだった」
加藤CFOが答えた内容は、開発・販売を発表している携帯型ゲーム機PSP(プレイステーションポータブル)」の次世代機「NGP(ネクストジェネレーションポータブル)」についてであり、「PS4」ではないのだそうだ。
SCE広報によれば、「PS4」の開発を伝える複数の海外サイトを見つけて驚いているが、なぜこのような誤報になったのかは分かっていないという。それでは改めて「PS4」の開発はどうなっているのか尋ねたが、「今のところお話しするようなことは何もありません」ということだった。
http://www.j-cast.com/2011/05/27096783.html?p=2

この誤報騒ぎの中で、IBMPS4の情報を求めた報道がありまして、その中で新CELLの言及があったのです。

The new 32nm Cell processor is tipped to be capable of up to 16 SPEs which is twice as fast as the current Cell processor according to IBM leaks.
IBMのリークによると、32nmによる新CELLプロセッサーは、現行より倍早い16SPEで開発中です。」(2011年5月30日)
http://www.smarthouse.com.au/Gaming/Industry/F5C6F8A6?page=1

16SPEのCELLなんてどこのロードマップにもありませんし、そもそも最初の報道から誤報だったPS3後継機の情報で、どこまで信憑性があるのかわかりません。
そして一番の問題は、現行PS3のパワー不足は、CELLのSPEの個数が足りないからでは無いことです。むしろ発売から5年経ってなお、PS3の7つのSPEを使いこなしてるメーカー自体が圧倒的に少ない状況です。CELLの構造から言っても、2倍の16SPEになれば、劇的に性能を上げられるものでもありません。
CPUの開発と言うのは、とんでもなく費用がかかります。ゲーム機に使用されているCPUも、他の分野での使用を見据えて開発されています。IBMの中では、
Power系はサーバ用途
PowerPCは組込み用途
CELLも、テレビの映像出力やサーバ用途
という形で転用されてきました。ゲーム機としてしか使用できない16SPEのCELLの開発は、CELL路線から完全離脱し、Power系派生製品としての扱いに格下げするIBMにとって、全くありえない選択です。
ソニー側も、年末に発売予定のPS VITAで独自CPU路線を放棄し、UMDの互換性を捨て、汎用CPUを採用する方針転換を明確にしました。互換性を考えると、PS4のCELL選択も無くはなかったのですが、VITAの選択からさらに転換して、莫大な資金をかけて独自CPUを開発する方向性は、ちょっと現実味がありません。
最大顧客であるソニーの路線と今回のIBMの販売終了宣言。やはりCELL消滅は確定と言えそうです。