「みんぽす」はステマサイトか WillVii社長が弁明

*「スポンジメディア」なる言葉の意味を確認していたのですが、1週間経っても回答がありませんでした。残念です。



大手ゲームブログ「はちま起稿」の広告企業サイト判明に続き、WillVii社運営の「みんぽす」に火の粉が広がりました。
なぜ、そんなことになったかと言いますと、「はちま起稿」の管理人の父親のフェイスブックに、WillVii社の藤井広大氏がフレンド登録されていたことが発端です。この藤井広大氏は、大手ゲームレビューサイト「mk2」の管理人ということが判明。
さらにWillVii社の役員であることが明らかとなり、WillViiとは何の会社か? ということがクローズアップされました。その中で出てきたのが、WillVii社のプレゼン資料です。

スポンジメディア
キュレイター、J-cast、価格コム、2ch2chまとめサイト
http://www.willvii.co.jp/pdf/WillVii_brochure.pdf

この中にある2chまとめサイトが、広告企業サイトと判明した「はちま起稿」に当たります。つまり客とソーシャルメディアをつなぎ、評判のお墨付きを与える存在として、「はちま起稿」のようなまとめサイトが位置づけられ、WillVii社の業務に組み込まれていることになります。
このWillVii社の社長が塚崎秀雄氏。ソニーウォークマン商品企画統括にいた方です。また役員には元ソニー会長の出井氏もいます。そして筆頭の顧客がソニーです。やたらにソニー尽くしなのですね。
 



WillVii社長の弁明で出た「みんぽす」の正体
さて騒動の中心となりつつあったWillVii社の活動ですが、社長自らブログで弁明を行いました。

「やらせ・ステルスに対するWillViiの考え方」
1)ステルスマーケティング
2)やらせマーケティング
3)ネガティブキャンペーン
4)著作権法違反
5)アフィリエイト収入
2ch上の議論を拝見していると当社は「はちま起稿」さんを当社主催のイベントにご招待していること、「はちま起稿」さんの親族を紹介されたことがありFBフレンド申請を受けていたこと、みんぽすのランキングが閲覧された方のイメージと異なったこと、更には当社を起業した私がソニー出身であることなどから、1)2)3)に対する疑惑を持たれたようです。
http://blog.goo.ne.jp/hi_tsuka/e/3f0fd63497bc34075b020a90451eb9d3

この弁明の中で、「みんぽすのランキングが閲覧された方のイメージと異なったこと」と言及があります。いったい何のことなのでしょうか?
さっそく「みんぽす」のサイトを見てみましょう。

レビューランキング
映像
1 BRAVIA KDL-46HX920 38 pt.
2 BRAVIA KDL-46HX920 37 pt.
3 BRAVIA KDL-46HX920 30 pt.
http://www.minpos.com/
(調査は2012年1月22日)

いきなりソニーブラビアが1、2、3フィニッシュを獲得していますが、このレビューランキングとは「最も評判の高い製品」でも「最もレビュー数が多い製品」でも、ましてや「最も売れている製品」でもありません。「この製品を紹介したレビューで、最も評価の高かったもの」です。要するに製品の評価ではなく、「評価が高いレビュー」順に表示されているのですね。この「みんぽす」の一番特徴的なところがココにあります。
この結果いったい何が起きるのか?
たとえ1つしかレビューがなくても、そのレビューに評価30ポイントつけば、レビューが20個ついた製品よりトップに表示されるということになります。
ではどんなものが、レビューランキングの上位を占めているのでしょう?(調査は全て2012年1月22日)

順位 映像 デジカメ オーディオ パソコン
1位 ソニーBDレコーダー ソニー アップルiPod touch ソニーノートパソコン
2位 ソニーウォークマン ニコン ソニーウォークマン アップルiPad
3位 キャノンビデオカメラ カシオ ソニーウォークマン アップルiPad
4位 キャノンビデオカメラ ソニー ソニーウォークマン アップルノー
5位 ビクター液晶テレビ キャノン アップルiPod nano ソニーノートパソコン
6位 ソニービデオカメラ リコー アップルiPod classic ビクター液晶モニタ
7位 パナソニックDVDレコーダ リコー ソニーヘッドホン ソニーノートパソコン
8位 ソニー液晶テレビ ペンタックス ソニーヘッドホン ASUSノートパソコン
9位 シャープ液晶テレビ ニコン ソニーイヤホン キングジムキーボード
10位 パナソニックワンセグテレビ リコー ソニーヘッドホン アップルノー

 
見てください。このソニー尽くし!
先ほど仮定した1つしかレビューがなくても、という現象が起きているのが、上記の中でトップを取れていない「オーディオ」です。5位の「iPod nano」のレビュー数は510件。対して、2位のソニーウォークマンはたったの190件です。それでもウォークマンが「iPod nano」の上に来てしまうのは、1つのレビュー評価が非常に高いということになります。では、そこまでしているのに、なぜ1位の「iPod touch」に負けているのでしょうか? 実は「iPod touch」のレビュー数は1153件。文字通り桁が違います。1つの記事に評価が2、3個しか付かなくても、評価の総数で優ってしまうのですね。
ソニーが製品を出していない「調理家電」や「生活家電」は、こんな極端にメーカーが偏る結果は出ていません。ソニーが絡んだジャンルにだけ起きる怪奇現象です。
中でも「カー用品」のジャンルが目を引きます。
1位をソニーが取っているのはもちろんのこと、3、4、7、10位とソニーのカーナビです。なんとカーナビ市場で一大勢力を誇るパイオニアカロッツェリアシリーズは、1つもランキングされません。なんと極端な。
 
なぜこんなことになるのかは、WillVii社が自分で説明しています。

「ユーザーレビューサイト構築・運営」
また、「みんぽす」は、2007年4月現在、大手メーカー40社と協力をしてデジタル商品を、中立的な優良ブロガー(モノフェローズ)に無償で貸し出しを行い、モノフェローズに自分のblogで自由にレビュー記事を書いてもらい、そのレビュー記事を「みんぽす」に掲載するというブログマーケティング活動を行っています。クチコミを活用した商品のプロモーションについてお気軽にご相談ください。
http://www.willvii.co.jp/userreview.html

ソーシャルメディアマーケティング紹介」
クチコミ活用
みんぽすで高い評価を受けたクチコミを安価に自社HP及び販売サイトで活用できる
http://www.willvii.co.jp/smmarketing.html

WillVii社は、無料でブロガーに商品を貸し出し、その記事を「みんぽす」に掲載することを「ブログマーケティング」だとしています。そして「高い評価」を受けたレビューがトップページに表示される仕組みと、その「高い評価」を受けたレビューを発注者が使用できることを「クチコミ活用」と呼んでいます。
つまり、たった1つしか大絶賛のレビューがなくても、評価さえつけばトップページに反映され、様々に活用できることを自分で謳っているわけです。その結果、顧客であるソニーは最大限このシステムを活用し、結果このように極めて偏った評価ランキングを生み出してしまっているのです。(一応、評価は1アカウントにつき1回できる仕組みですが、まぁそんなものはいくらでも抜け道があるから、この結果なのでしょう。)

 



ゲエムノセカイも検証してみる
続いてWiiVii社が運営するもう1つのサイト、「ゲエムノセカイ」も見てみましょう。まず注目すべきは「利用規約」でしょうね。

第4条 著作権及び使用権
(前略)
利用者様はレビューを送信した時点を持って例外なくレビューの掲載の可否及び著しく意向の変わらない範囲で、当該レビューに関する利用権を、運営者に対し、永続的に無償で許諾することを同意したものとします。また、利用者様は、当該著作物を第三者に許諾できないものとします。

当該利用権利に基づいて、運営者は、ゲームユーザーに有益であると判断した場合、利用者様に対価を支払うことなく、当該レビューを複製、構成の変更、提供、配布、翻訳、公開し、広く露出をすることができるものとします。また、運営者の判断により、利用者様に対価を支払うことなく、第三者と契約を締結し、当該レビューを複製、構成の変更、提供、配布、翻訳、公開し、広く露出をすることを許可できるものとします。
http://game.minpos.com/terms_psmk2.html

最初に利用権を定めています。で、その後で利用の範囲を定めているのですが、注目は「また、」でつないだ文章です。前段にある「ゲームユーザーに有益であると判断した場合」という文章は、「また、」と切り替えた後には関係しません。後段「運営者の判断により、」と判断基準を再定義しているのも、そのためです。
読んでわかるとおり、投稿したレビューは、自由に契約などに使用できることになっています。かつて「mk2」という個人サイトだったせいで、気がつかない人がいるかもしれませんが、今のゲエムノセカイは投稿レビューが自由に使用されてしまう広告企業サイトです。この点をもう一度良く把握したほうが良いでしょう。
さて、それでは投稿レビューの傾向を見てみましょう。
据置機

ポイント PS3 Xbox360 Wii
90以上 9本 4本 1本
80以上 65本 53本 36本

携帯機

ポイント PSP DS 3DS
90以上 4本 2本 0本
80以上 51本 48本 7本

予想通りといいますか、PS3PSPが高ポイントを獲得しております。しかも全く同じマルチソフトの「バーンアウト パラダイス」ですら、PS3版が82点、Xbox360版が80点とPS3版が高かったりするのですね。それどころかフレーム落ちが起きてXbox360版より不評だったPS3版「アサシンクリード」が65点、良かったはずのXbox360が64点。同様にフレーム落ちがあったPS3版「オブリビオン」が80点、良かったはずのXbox360が78点などなど。
要するに圧倒的にSCE寄りのレビューが書かれるサイトとなっていることがわかります。
それではWillVii社は、このゲエムノセカイをどのように利用しているのでしょうか?

「ユーザーレビューサイト構築・運営」
また、ゲエムノセカイネットワークのユーザーはコアゲーマーが多く、ユーザーの6割以上はゲームを年間6本以上、3割以上はゲームを年間11本以上購入していますので、コアゲームのプロモーションには最適なサイトとなっています。
ゲエムセノカイを活用したクチコミプロモーションや、広告枠に関するお問い合わせ(商品のお貸し出しなど)はゲエムノセカイお問い合わせフォームよりお願いいたします。
http://www.willvii.co.jp/userreview.html

ゲエムノセカイの構成は、ゲームニュースとゲームレビューの2つしかありません。ニュースも投稿型、レビューも投稿型です。とは言っても、ニュースをプロモーションに使用できないでしょうから、プロモーションはレビューで行うのでしょう。そういう投稿レビューを利用した「クチコミプロモーション」が、ゲエムノセカイでWillVii社が行っている業務の姿なのです。
だから顧客であるSCEは、最大限活用して、結果レビューポイントがPS3PSPに偏る結果を生み出していると思われます。
 



WillVii社長はどう弁明したか
このような2つのサイトを運営しているWillVii社長は、弁明で以下のように疑惑を否定しました。

次にみんぽす(とそれに連動するプラボ)のランキングについてです。まずこれはレビューのランキングであって商品のランキングではありません。そして、これは閲覧された方の記事のクリック回数、「参考になった」、「大変参考になった」の投票により決まります。こうしたものですから、ここにもやらせ・ステルスの要素は入り込みません。

? 弁明になっていないような気がします。レビューのランキングになっているからこそ、不思議な結果を生み出しているのではないでしょうか?
 

最後にゲエムノセカイについてです。上記当社の運営ポリシーからもお分かりいただけると思いますが、こちらもやらせ・ステルスは一切ありません。また、ゲエムノセカイについては各サイトを長年運営してきた方がいらっしゃいますので、万が一にも当社が「やらせ・ステルス」を依頼したところで無視されるか脱退されるのが落ちです。

投稿レビューという形で、「コアゲーマー向けプロモーション」を行っているのではないですか? ゲエムノセカイを利用したクチコミマーケティングは、1ユーザーを装うことしかマーケティング活動できないと思いますが。それこそが「やらせ・ステルス」だと批判を受けているのではないでしょうか?
どちらのサイトも、一方的にソニーSCEに有利なレビュー評価ばっかりになっています。ソニー出身者が作った広告企業サイトが、ソニーを顧客とし、ソニーに偏った結果を発信している。非常にわかり易い構図が、仄見えます。WillVii社長の弁明だけでは、WillVii社の「クチコミマーケティング」のブラックさを打ち消すことは出来ないでしょう。