減らない高額請求トラブル グリーは多角経営化の道へ

5月に大きく報道され、7月から規制された「コンプガチャ」。その後、ソーシャルゲームにおける高額請求トラブルは、一応の収束を迎えると思われてました。しかし実際には、消費者センターへの相談件数は今でも減っていないようです。

「「高額請求」相談2.6倍 オンラインゲームトラブル急増」2012年10月5日
 
パソコンや携帯電話のオンラインゲームで「高額な利用料を請求された」などの相談が各地の消費生活センターに相次いでいる。全国のセンターに寄せられた本年度の相談件数は8月末現在で前年の約2・6倍。福岡県のセンターも倍増した。国は7月に高額なアイテム商法「コンプリートガチャコンプガチャ)」を規制したが、射幸心をあおるゲームは他にもあり、トラブルは後を絶たない。
コンプガチャ以外にも、1回数百円のくじを何度も引いて多数のアイテムを購入しないと先に進めないものや、人気アイテムが出るまで数万円かかるゲームは多いという。センターには規制後も「人気アイテムが出やすくなるイベントで10万円使った」「15万円使っても欲しいアイテムが手に入らない」との相談が絶えないという。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/327545

去年と比較して、2.6倍にもなっているソーシャルゲームトラブル。業界のガイドラインだけで、問題が収束できないとなれば、ガチャそのものへの規制が不可避となります。
そんな中、グリーの株主総会では、会社の定款を大きく変更することが示されました。

「グリー、定款変更20項目が映す危機感」2012年10月12日
 
ソーシャルゲーム大手、グリーの定款変更が話題を集めている。9月末に開いた株主総会で20項目を超える事業目的を追加する定款変更案を諮り、承認されたのだ。なかにはテレビ放送や芸能プロダクションのような内容も盛り込まれた。グリーはどこへ向かおうとしているのか。内容を分析すると、国内事業の飽和に対する強い危機感が透けて見える。
放送法による各種放送事業、芸能タレントや音楽家、スポーツ選手などの養成やマネジメント……。これまで交流サイト(SNS)で遊ぶソーシャルゲーム1本で成長してきただけに、こうした内容は違和感が強い。ほかにも遊技場やスポーツ施設、飲食店、宿泊施設の運営や投資顧問業など金融関連も盛り込まれた。会社側は「将来参入する可能性のある事業を盛り込んだ」と説明するが、具体的な参入時期や詳細については明らかにしていない。
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/editors.aspx?g=DGXNMSGD0402O_11102012000000

 
なんと、グリーは飲食店や宿泊施設の経営なんかにも手を出す可能性があるのですね。定款は、必ずしも書いてある事業を行わなければならないわけではありませんが、記事のとおり、グリー側の焦りが見える気がします。
定款変更を「将来参入する可能性のある事業を盛り込んだ」と説明しているようですが、はたして全く未経験の分野に手を出して、うまく事業化できるのでしょうか?
 
国内市場が飽和し、海外進出も芳しい結果が出せていないグリー。ガチャ規制の足音も聞こえるということになれば、ソーシャルゲームを見限るのもわかる気がします。でも、行き詰まりから多角経営に手を出したとしても、ろくな結果にならないでしょう。
グリーとしては、「まだキャッシュがあるのに、行き詰ってなんかいない」と言いたい所でしょうが、他業種には、既に信頼と実績のある競合他社がたくさんあるわけで、グリーが収益を上げ続けるのは極めて困難です。むしろコンプガチャ以上に利益率の良いビジネスモデルなんて、存在しないでしょう。それをグリーなどソーシャルゲーム各社が把握しているかどうか、見えてこないところに、昨今のソーシャルゲーム銘柄の暴落の理由があると思います。
はたして、ソーシャルゲーム各社は、うまく立て直すことができるのでしょうか? 次の決算が楽しみです。