グリー決算、営業利益3割下方修正へ 

グリーが決算を発表しました。いやぁ、酷い決算であります。

「グリー、通期営業利益約3割下方修正へ ― 海外向けゲームの一部不振など」
グリー(3632、東証一部)は12日、2013年6月期通期の営業利益を従来予想の下限値740億円から500億円に下方修正した。また、同日発表した中間期決算は、営業利益が前年同期比23.4%減の300億900万円となる減益だった。
 国内及び海外向けソーシャルゲームのリリース延期が影響したほか、海外向けソーシャルゲームの一部不振等により、当初予想した売上高を下回った。
 加えて、開発体制強化等の積極的な採用を継続するなど、コストは増加傾向にあり、営業利益、経常利益、当期純利益についても前回予想を下回る見込み。
 
http://www.venturenow.jp/news/2013/02/12/1541_019656.html

一応前期より売上高は上がりましたが、去年コンプガチャブイブイ言わせていた頃、当時が462億円で今回が394億円ですから、全く届いていません。
決算でいい数字が出なかった理由ですが、修正理由のIRで以下のようにグリーは言及しています。

平成25年6月期上期(第2四半期連結累計期間)において、当社の主要な収益源であるソーシャル・ネットワーキング・サービスSNS)「GREE」の有料課金収入は回復傾向にあるものの、国内及び海外向けソーシャルゲームのリリース延期、海外向けソーシャルゲームの一部不振等から当初予想した売上高をやや下回りました。
今後は、延期したソーシャルゲームのリリース、海外でのヒットタイトル創出に向けた施策等を実施してまいりますが、現行水準を踏まえて計画を見直した結果、下期の売上高に関しましては上期と比較して伸長する計画ではあるものの前回予想を下回る見込みとなりました。
http://v3.eir-parts.net/EIR/View.aspx?cat=tdnet&sid=1037710

1 国内及び海外向けソーシャルゲームのリリース延期
2 海外向けソーシャルゲームの一部不振等
以上2点ですね。まず1ですが、「なぜリリース延期となったのか」です。理由は簡単。

くじ引きの要素を持つ「コンプガチャ」と呼ばれるゲームの手法が景品表示法の規制対象になり、その対応を進めた結果、去年、発売する予定だった新作ゲームの開発が遅れていることなどを挙げています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130212/k10015467871000.html

要するにコンプガチャショックが、まだ尾を引いていたんです。投入ソフトの収益モデルが、全部コンプガチャを想定していたということなんでしょう。これからは新たな収益モデル「パッケージガチャ」への移行を推し進めていくことになるのではないでしょうか。

2の海外進出。当ブログでも取り上げたように、グリーの海外進出は失敗しました。

グリーの秋山仁コーポレート本部長は決算会見で、今期中の海外事業黒字化は想定していないと述べた。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MI3FIF6TTDTP01.html

数年前から目標にしていた、「海外市場の2012年内収益化」は果たせなかった、ということになります。カードバトルが本当に海外で人気を取れるのか、もう一度検討が必要だと思うのですが、田中社長はまだ諦めていないようです。

海外ではコイン消費の金額は伸びていますが、当初の予測ほど大きく成長はしていません。今後は、日本で人気を集めているカードバトルやシミュレーションゲームをリリースし、より一層の市場拡大を目指すとのことです。
http://www.inside-games.jp/article/2013/02/12/63789.html

拡大を目指すのは結構なんですが、いつ収益化できるのか新たな目標を教えて欲しいところですね。なにしろ経常利益は、実に去年の半減となっているそうですし。

会社側が発表した上期実績と通期計画に基づいて、当社が試算した1-6月期(下期)の連結経常利益は前年同期比45.5%減の234億円に落ち込む見通しとなった。
http://kabutan.jp/news/marketnews/?b=k201302120142

改善していくと決算では語っていましたが、売上収益523億円(前年同期比52%増)となったライバルDeNAも含めて、またも壁がやってきています。
 
■グリーとDeNAがぶつかる壁
グリーの決算資料で、支払手数料の増加に注目しましょう。前期51億円が今期57億円と増えています。これはアップルストアなどのプラットフォーム利用料が嵩んでいるということなんですね。実はDeNAも同じ問題があります。スマートフォンのサードベンダーソフトは、まずアップルストア等の使用料を払い、次にグリーやモバゲーのライセンスを払っています。当然直接ソフトを供給した方が利益が良くなりますよね。これは自前のソフトを供給しているDeNAとグリーにとっても同じです。増加する支払手数料がそれなのですね。さらに、NTTのドコモが参入したこともあり、問題の深刻化が確実です。この問題を改善するために、DeNAは自分のプラットフォーム「comm」を普及させ、支払手数料のダブルカウントから脱出しようとしています。

無料通話・メッセージアプリの「comm」は12月末までに1000万ダウンロードの目標を掲げていたが、累計500万ダウンロードだった。「ユーザー使ってもらって、他社のサービスと比較して、バイラルでもっと広がるべきところが弱かったと思っている。もっといいインパクトのあるものを提供しないと。簡単なマーケットではない」(守安氏)。なお、commの第三四半期におけるプロモーション費用は10億円程度。第4四半期に関しては、これより減少するとしている。
http://japan.cnet.com/news/business/35027953/

目標値に全く届きませんでした。フェイスブックやLINEに歯が立たなかった、というのが結果です。でもLINEのように、後発のサービスでも大ヒットできるのが、スマートフォン市場です。プラットフォーム戦争はまだまだ佳境が続くでしょう。DeNAが目論見どおり結果を出せるかで、第2のmixiと呼ばれるかどうかが決まると思います。
 
問題はグリーです。何にも考えずに買収を繰り返しています。いや考えているつもりなんでしょうが、そう見えないところが問題です。

「グリー、OpenFeintを12月14日で閉鎖〜既存アプリに影響が出る恐れ」
OpenFeintのユーザーベースに目をつけたグリーが約85億円で買収。グリーの子会社となってからも、OpenFeintのサービスは継続されてきました。
ところが、グリーは2012年11月16日付けでOpenFeintを12月14日に閉鎖すると発表。
現在OpenFeintを使用しているアプリは、1ヶ月足らずの間に移行する必要があり、開発者の間で波紋を呼んでいるようです。

http://www.excite.co.jp/News/apple_blog/20121120/TouchLab_2012_2_4691.html

自前でプラットフォームを開発するより、既にユーザーを持ったプラットフォームを買収しちゃえ、という発想自体はマイクロソフト的でカッコいいんですが、せっかく買収したのにとっとと閉鎖してしまう迷走ぶりです。ユーザーもアプリ開発者も大混乱。「いったい何をやりたいんだ、お前は?」と問いたくなる行状です。こういう戦略の無さが、今のDeNAとグリーの決算となって現れているのではないでしょうか。
任天堂も「ミーバース」でプラットフォーム戦線に参入しており、マイクロソフトも近々動きがあると噂されております。戦いは続いていますが、無策でなんとかなるほど簡単ではありません。グリーとDeNAの力が試されるのはこれからが本番です。