海外から『ソーシャルカジノ』と呼ばれ始めた日本のソシャゲ最前線

グリーの業績が壁にぶつかり、カードバトル方式に限界が見える日本のソーシャルゲーム
コンプガチャ後に、パッケージガチャの導入も行われましたが、かつての収益を上げられていないようです。理由はここのところの不祥事で、ユーザーの警戒感が強まっていること。そしてガチャによる単純なゲームに飽きが来ていることの2つです。まぁこれまでの状況を考えれば、当然の結果でしょう。
そんな中注目を集めているのが、ガンホーの「パズル&ドラゴンズ」です。

「『パズドラ』が変える ゲーム業界の勢力図」2013年3月2日
 
パズドラもアイテムを購入すればゲームを進めやすくなるが、無料プレイでも十分に楽しめる。かつ、ガチャ重視のゲームに比べて、パズルゲームとモンスターバトルを組み合わせた面白さが、ユーザーを引き寄せた。結果として課金収入も拡大している。

森下一喜社長兼CEOは「従来のガチャに依存するソーシャルゲームと違い、純粋にゲームとして楽しめる作品を追求した。課金単価を引き上げるのではなく、無料でも多くの人に楽しんでもらいたい」と話す。
http://toyokeizai.net/articles/-/13106

ガチャ中心のビジネスモデルに対するアンチテーゼとしての立ち位置を、社長自身も認識していることがわかります。また、「パズドラ」はグリーやモバゲーのプラットフォームを通していません。直接グーグルプレイやアップストアに配信しています。当然旨味も大きいわけですね。これからこの動きが強まるのではないか、というのが今の日本のソーシャルゲーム業界のトピックです。
しかし海外では、日本の別の流れに注目が集まっています。
 
■ガチャからポーカーへ
2月の最終週に、アメリカはニュージャージー州で、オンラインカジノ法案が通りました。これまでアメリカで禁止されていたネット賭博が、いよいよ解禁されます。とはいえ、誰でも簡単にネット賭博を始められるようになるわけではありません。アメリカは賭博が合法ではありますが、実際に賭博事業を行うには「カジノライセンス」を取得する必要があります。数百万円レベルの申請費用もさることながら、反社会組織に金が流れないよう極めて厳しい財務監査を受ける必要があります。特にアメリカが警戒するのは、ネット賭博を利用したマネーロンダリングや、テロリストの資金源になることなので、特に厳しい制約を受けることになるでしょう。
ニュージャージー州の公式サイトでは、ポーカーとはなんぞや? ブラックジャックはなんぞや? と超細かくレギュレーションが公開されています。
http://www.nj.gov/oag/ge/chapter69F.html 
ですから、ネットでリアルマネーを使うポーカーのサービスを提供するには、カジノライセンスを取得し、決められたレギュレーションで行わなければならないということになります。
と、同時に、ポーカー=賭博なのですね。海外の認識は。そして注目されているのが、日本のソーシャルゲームの流れです。
 

「Japan to experience “mini boom” in social casino」(日本でソーシャルカジノがミニブームとなっています)
 
“Social game makers over here realize that the card battle frenzy will come to an end someday and are getting increasingly experimental by mixing adventure or RPG elements with social casino game mechanics,”
(ソーシャルゲームメーカーは、カードバトルの狂乱がいつか終わるとわかり、ソーシャルカジノゲーム製作者に、実験的にアドベンチャーRPGの要素を混ぜています。)
)
日本のオペレーターが構築した、モバイルソーシャルカジノ・タイトル

コナミ ; Dracolle&ポーカー
GREE ; Poker Creature
Cybird ; Dragon Poker
CyberAgent ; Battle Slot
Sega ; Dragon Coins
Magical Company ; Pachinko Battle
http://www.socialcasinointelligence.com/tag/konami/

RPGにポーカーの要素を加えたのではなく、ポーカーにRPG要素を加えたと判断するのですね。(サイバーエージェントのゲームはスロットゲーム)
記事では、日本のソーシャルゲーム各社が、ポーカーなどの賭博ゲームに、従来のゲームを合体させて進出してくるのではないか、と警戒している様子が見て取れます。
これらのゲームが、カジノライセンスを取らずに海外で導入できるのかどうかは、未知数です。が、脱法行為になりますから、難しいのではないでしょうか。
しかし、ライセンスを取ったら取ったで、今度は『海外でカジノライセンスを取得して運用しているゲームを、日本でそのまま運用していいのか』という問題が出てきます。日本では賭博は違法ですから、一応グレー扱いのパチンコより、ブラックなゲームになってしまいます。それが何の網もかからず、小学生から遊べるようになるわけで、下手すると警察の怠慢という形になりかねません。ガイドラインが発表されたことで、警察も静観している形になっていますが、そんなこと言ってる事態じゃなくなる可能性があるわけです。
 
■自主規制に限界も
一応ソーシャルゲーム各社によるガイドラインは定められましたが、さっそく隠蔽事件が発生したのは記憶に新しいところです。そのガイドラインも相変わらず威力を発揮しているのか、心配な面が多々あります。
たとえば、私が注目しているゲームにこんなものがあります。

「華やかなパリで荒れ狂う恋と復讐の嵐!!「禁断の復讐者」女性向け恋愛シュミレーションゲーム「Mobage」にて配信開始!」2013年2月27日
ジグノシステムジャパン株式会社(本社:東京都千代田区代表取締役社長:沼尻 一彦)は2013年2月18日(月)に、ソーシャルネットワーキングサービス「Mobage」にて、 女性向け恋愛シミュレーションゲーム『禁断の復讐者』を配信開始いたしました。
<ゲームの特徴>
また、好感度がアップするアバターには、可愛いアイテムがいっぱい!ガチャのシリーズアバターをコンプリートしてレアアイテムをゲットしたり、トータルコーディネートも楽しめます。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000415.000000730.html

これアウトでしょ?
消費者庁コンプガチャ運用基準、第4項の(1)「4 告示第五項(カード合わせ)について」では、
「特定の二以上の異なる種類のアイテム等を揃えた利用者に対し、例えばゲーム上で敵と戦うキャラクターや、プレーヤーの分身となるキャラクター(いわゆる「アバター」と呼ばれるもの)が仮想空間上で住む部屋を飾るためのアイテムなど、ゲーム上で使用することができるアイテム等その他の経済上の利益を提供するとき。」
とちゃんと、アバターコンプガチャ要素もアウトと指摘してるわけですし。こんなプレス発表をしちゃってて、ガイドラインがしっかり運用されていると宣言することはできるのでしょうか。ちなみに引用の記事ではモバゲーで配信となっていますが、グリーでも配信されています。
 
ガチャの次を模索する各社の動きは始まったばかりです。そこで「日本ではRPGにポーカーを組み合わせただけ」。海外では「ポーカーにRPGを組み合わせたのでライセンス取得」。などというダブルスタンダードに突入することになるのか、今後の動きに注目しましょう。