E3からグリーが早くも撤退。北米の壁あらわに

6月11日から6月13日まで、北米LA・コンベンションセンターで例年通り「E3」が開催されています。今年の目玉はなんと言っても、マイクロソフトXboxの次世代機Xbox-Oneの御披露目と、ソニーPS4の発表です。去年既に次世代機を投入している任天堂は、毎年E3前日に行っていたメディアブリーフィングを開催せず、ネット中継に切り替える大胆な決断をしてきました。
そんな中、鳴り物入りで海外進出を宣言したグリーのE3参加が、たった1年で終了しています。

「ゲーム見本市「E3」開幕へ ネット課金ネック ソーシャル消極的」
世界最大のゲーム見本市「E3」が11日(日本時間12日)、米ロサンゼルス市で開幕する。ソニーなどは新型家庭用ゲーム機をアピールするが、日本国内で人気を集めるソーシャルゲーム大手は参加しない。収入を支えるネット上の「課金システム」が米国では浸透しなかったためで、「E3出展にお金をかけるよりも、新作ゲームなどの開発を優先する」という。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130611/biz13061107030002-n1.htm

去年、大上段から海外進出のメッセージを送るとしていた姿はなんだったんでしょうか。

荒木氏:ソーシャルゲームのプラットフォームとしても,これまで北米ではPCがベースでしたので,各社ともこれからモバイルへの取り組みを本格化させるという印象を受けます。今,いろいろなメーカーさんにお話を伺っているのですが,モバイルソーシャルゲームの作り方を理解されているところはそんなにないのではないかと感じています。
http://www.4gamer.net/games/000/G000000/20120608001/

なんとグリー自身が「ゲームの作り方を理解していなかった」という衝撃の展開です。日本市場でもグリーは、2期連続の業績下方修正をかけるなど、大失速が続いていますが、海外戦略で当てが外れっぱなしが効いています。
 
■北米市場の壁を未だ越えられず

米国は日本と比べ、「ネットゲームを有料で遊ぶ習慣が根付いていない」(業界関係者)事情があるという。ソーシャルゲームの米最大手、ジンガでは約2億3千万人の利用者がいるが、10年は全体のわずか約3%しかアイテムを購入しなかった。
米業界団体によると、11年の米国のソーシャルゲームなどの売上高は前年比7・4%増の73億ドルだったが多くは、広告収入とみられている。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130611/biz13061107030002-n2.htm

ただし上記部分は、産経の報道が間違っています。そもそもネットゲームは北米生まれであり、アイテム課金は大先輩です。現在でも、シェアやユーザー数は圧倒的な数を誇りますし、Xbox360は、PS3と違って通信それ自体が有料サービスでしたが、日本より遥かに多いユーザーが、有料通信プレイを楽しんでいるのです。iTuneで音楽をダウンロードして聴くサービスがアメリカで成功したように、ダウンロードコンテンツに関しても、日本より遥かに進んでいて、今でもシェアは世界最大です。
つまり、グリー海外進出の失敗は、北米が「ネットゲームを有料で遊ぶ習慣が根付いていない」ことが「原因ではない」ということです。
では、なぜ思うような収益が上がらないのか? 当ブログでは、2013年1月の時点で既に「課金カードバトルは流行らない」という指摘を行っています。
グリー自身はまだ認めたがりませんが、「課金カードバトル」は北米で流行らないのです。北米市場の切込隊長を務めたグリー謹製「Zombie Jombie」が、アップルストアから撤退してしまったこと自体が、その証拠と言えるでしょう。なぜかグリーはそのことをプレス発表しませんが。いいんですかね。プレス打たなくて。あれだけ初週のランキングを報道させてたのに、この顛末を出さないのは、不公平に思うのですが。
グリーはきちんとプレス発表を行って、海外市場進出をどのように収益化していくのか示して欲しいと思います。