続 垂直落下が止まらないグリーとモバゲー

以前記事にしてから半年。
グリーの年度決算が発表になりました。

「グリー、2期連続減益 14年6月期23%減」
 グリーが13日発表した2014年6月期の連結決算は、純利益が前の期比23%減の173億円だった。減益は2期連続。スマートフォンスマホ)の普及で、従来型の携帯電話向け交流ゲームの課金収入が減少した。スマホ向けゲームでもヒット作に恵まれなかった。
 前期の純利益はアナリスト予想の平均であるQUICKコンセンサス(15社、7月22日時点)の199億円を下回った。年間配当は前年同期の14円から3円減配の11円とした。同社は13年6月期決算で08年の上場以来、初めて減益となったが、業績の悪化に歯止めがかからない状況だ。
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXLASFL13H7N_13082014000000&dg=1

経常利益は1/3が吹っ飛ぶという強烈な決算です。しかも3か月前の 「売上高300億円、営業利益91億円」という決算見込みすら未達という有様です。 去年の数字と比較してみましょう。

2012年度 売上高 営業益 経常益 最終益 1株益
前年度比 -3.8% -41.2 % -35.0% -53.1% -53.2%

去年の数字は凄いですねぇ。ホンマかいな、と疑うような下落率が並んでいます。
 

2013年度 売上高 営業益 経常益 最終益 1株益
前年度比 -17.5% -28.0 % -32.3% -23.0% -21.5%

まず注目は、売上高です。前回より減少幅が5倍に増えました。これはガラケーからスマホに移動したユーザー減が加速しており、スマホでの売上回復が追い付いていないということになります。
対して、最終益が前回より減少幅改善となったのは、人員削減などのコストカット効果が表れていると言えるでしょう。
問題はゲームコインの利用状況です。
 
■グリーのプラットフォームビジネスが、遂に破綻


左図のとおり、ゲームコイン消費量がどんどん減っています。一度も好転していないのですから、病は深いと言えるでしょう。
個別に見ていくと、特にガラケーの消費量が酷いことがわかります。そのせいで結果的にスマホの占有率が上がり、全体の73%に上がりました。
しかしスマホも減ってきているんですね。4期合計では、なんとか2012年度より増えたようですが、表を見ての通り、1年かけて急速に減っています。
去年のゲームコインの流通推移は、一年を通じてほぼ横ばいでした。つまり、グリーのプラットフォームビジネスは、2012年にピークを迎え、2013年に破綻したと言えるでしょう。
  
この状況を受けて、グリーは、ビジネスモデル転換に踏み切りました。

説明会の質疑応答では、記者から「グリーはプラットフォーマーからネイティブゲームのソフトメーカーになるのか」という質問が飛んだ。GREEプラットフォームを中心とするウェブゲームの売上はまだ大きい(2014年度で1252億コイン中759億コイン)ものの減少傾向にあるし、同社はネイティブゲームの開発者を300人から1000人に増やすとしている。これに対して青柳氏は、「ウェブとネイティブで明確にポジショニングや戦略を変えている。引き続きウェブはプラットフォーム。ネイティブについてはデベロッパーであり、パブリッシャーとしてプラットフォーマーと協力していく」と回答した。
http://japan.cnet.com/news/business/35052330/

ネイティブゲーム製作に3倍の人数をかけ、プラットフォームビジネスからの脱却を図ろうとしています。ネイティブゲームのヒットで莫大な収益を上げるゲームメーカーが出ている以上、上納金の二重取り状態のプラットフォームでは、サードパーティは乗ってきません。プラットフォームビジネスの破綻は、スマホの普及で約束された未来だったと言えるでしょう。
 
■またも業績予想を出さず

15年6月期通期の連結業績と配当の予想は開示せず、2014年7〜9月期の連結業績見通しのみ開示した。売上高は前年同期比26%減の260億円、営業利益は44%減の55億円、純利益は37%増の33億円を見込む。
同社は通期の業績見通しを開示しない理由について「インターネットを取り巻く環境の変化が厳しく、当社グループの業績も短期的に大きく変動する可能性がある」とした。

来期の業績予想を非開示にしており、これで2年連続先行き不明です。
かろうじて開示した直近四半期の業績予想は、なんと26%の売上減。業績低下が止まっていません。純利益だけは大幅な増加を見込んでいますが、売上が回復しないと、どうにもならんでしょう。
 
■衝撃のDeNA決算
しかし、グリーなんてどうでもよくなるほど、DeNAの決算は衝撃でした。

「ゲームのコイン消費減少で厳しい決算となったDeNA、新事業と投資で活路を開けるのか」
ディー・エヌ・エーDeNA)が8月6日に発表した2015年3月期第1四半期決算は、売上収益が358億1900億円(前年同期比31.3%減)、営業利益が69億7500万円(同59.0%減)、四半期利益は40億3300万円(同59.2%減)となった。
 
ゲーム事業におけるコイン消費の減少が顕著になっている。国内コイン消費は376億円(前四半期比23.8%減、前年同期比31.4%減)、海外のコイン消費は4億ドルだったが、主力タイトルでコイン消費の減少が続いている。
http://jp.techcrunch.com/2014/08/06/jp20140806dena/

営業利益、約6割減! 前期に続き2度目!
やはりプラットフォーム事業が破綻し、モバコインの消費量が壊滅的となりました。グリーと同時期に破綻を迎えているのが、興味深いです。
そして、DeNAも遂に、これまでのソフト開発姿勢を変更、質的変換を目指すそうです。
 

ゲームに関しては、タイトル数ではなく品質を重視した開発体制に変更。欧米や中国では有力IPもののタイトルリリースを準備しているという。

似たソフトでも、タイトル数確保のために乱造しました、なんてビジネスが、うまくいくわけないですね。まぁ今までよくもったと言えるでしょう。
  
グリーとモバゲー。奇しくも同時期に同じ壁にぶつかり、ビジネスモデル転換を目指しています。両社の挑戦が本当に実を結ぶのか、注目していきたいと思います。