<従軍慰安婦問題終結> 韓国「不可逆って何?」 日本は確実に訪れる「蒸し返し」に備えよ 

あけましておめでとうございます。
年の暮れもさし迫った12月28日に、電撃合意した従軍慰安婦問題。一週間ほど経ち、日韓とも情報が一通り出たのではないでしょうか。その中で気になった情報を取り上げつつ、これからの従軍慰安婦問題の展望に迫ってみたいと思います。

「安部、初めてお詫び言及 『不可逆的解決』は足かせになる可能性」東亜日報2012.12.29
これからこの合意の 『最終的、不可逆的』の精神が守られるかは、日本がどのように行動するかに懸かっている。 1993年の河野談話直後に韓国政府は、「これ以上慰安婦問題を韓日外交懸案で申し立てない」と言及したが、日本が独島、教科書、靖国神社で歴史問題の挑発を続けたため、約束は変更された。
国際法に精通した前職外交官は、「国際関係で『最終的(final)』という単語と違い 『不可逆的な(Irreversible)』は、あまり聞かない表現」と指摘した。今度の合意は、政府間の合意なので、民間次元や政治的な問題申し立てを押さえつけることはできない。しかし、『不可逆的』という約束のために、彼らの立場が減るという恐れが出る。
http://media.daum.net/politics/dipdefen/newsview?newsid=20151229030826385

なぜか、和訳されて無い東亜日報のこの記事。河野談話の顛末について「今後慰安婦問題を申し立てない」とする韓国政府との協定が、反故された問題を、韓国側もしっかり認識していたことに驚きます。しかもその反故したこと理由が、竹島問題や教科書記述問題、靖国問題の報復のつもりだったんですね。全然関係ない問題を理由に、国家間の協定を無視して当然とする感覚は、日本人には理解しがたいものがありますが、従軍慰安婦問題がとっくに「韓国側にとっても政治的駆引き材料として認識されていた」ということが、やっと納得できます。要するに「竹島の発言続けるなら、従軍慰安婦問題の協定を反故にするぞ。いいのか?」みたいな感じです。
ただ、今回の合意で「不可逆的」という言葉が付け加わったことで、これから先「竹島問題を続けたため、従軍慰安婦の合意を撤回する」とするのは難しくなったかも、とは感じてるようです。
わざわざ外交の専門家に「不可逆的」の意味を確認するところを見ても、韓国が「最終的かつ不可逆的に解決」の意味をよくわかっていないことは、明らかと言えるでしょう。
 
■政治的交渉材料として生き続ける従軍慰安婦問題
民間レベルはともかく政治レベルにおける問題提起を拘束しないと考えているらしいところを見ても、韓国側が全く「最終的かつ不可逆的に解決」の意味を理解していないことは間違いありません。
というよりむしろ、竹島問題や教科書記述問題があれば、いつでも従軍慰安婦問題を「蒸し返せる」と高をくくっている可能性もあるのです。

「<韓日慰安婦交渉妥結>「不可逆的」めぐり韓日間で解釈の違い」中央日報2015年12月30日
複数の政府当局者は「事実と異なる側面がある」と述べた。特に「不可逆的」という表現を入れる問題は交渉中に韓国側が先に提起したものだという。日本の政治家が旧日本軍の慰安婦強制動員を初めて認めた河野談話(1993年)などを否定する発言を繰り返すことを念頭に置き、「もうこれ以上は言葉を変えるな」という趣旨で強調したということだ。
http://japanese.joins.com/article/176/210176.html?servcode=A00§code=A10

竹島問題などを理由に、河野談話の協定を反故にしたなら、当然河野談話も自動的に失効するはずですが、そうは認識していないんですね。まぁ、河野談話がそういう協定の元に行われたということ自体、最近まで明らかになりませんでしたから、協定を盾にすることができなくなっているんですけども。
上記の記事の通り、「河野談話の是非論」も「不可逆的の範疇である」となります。この点は日本側も覚悟しなければならないでしょう。
とにかく河野談話の時との違いは、「表の協定として記者会見まで行った」ことです。文書化していないことは非常に片手落ちですが、それは今後の日本の立ち回りでフォローしていくことになるでしょう。
 
従軍慰安婦問題の解決はここから始まる
まず間違いなく、韓国は従軍慰安婦問題を蒸し返すことになります。これだけ反日の御旗として掲げてきたものを、明日から存在しないことできるはずがないのです。それが5年後か、10年後か、50年後かわかりませんが、いずれやってくることは間違いありません。そのいずれやってくる「危機」に対して、日本は着々と手を打っていく必要があると思います。
では、その打つ手にはどのようなものがあるでしょうか。以下3点挙げます。

1 各国政府による終結合意への支持の取り付け

2 台湾をはじめとする従軍慰安婦問題提起国への適切な対応

3 「既に終結済み」とする国内政治家の意識統一
まず1から考えましょう。合意の会見がなされたと同時に、まずアメリカが、そしてドイツが合意の支持を表明しました。タイミングからして、前もって支持表明を打ち合わせてあったのでしょう。文書化されていない以上、日本側はこうした各国からの支持を取り付け、韓国が合意を反故にしたら、批判してもらえるよう根回しが必要です。来る「危機」に向けて、できるだけ多くの国の支持を集めて回るべきでしょう。
 
次に2です。まぁ当然のことながらアジア各国やオーストラリアから、従軍慰安婦問題の新たな提起がありました。だから言わんこっちゃないと思ったかもしれませんが、これは逆に利用するチャンスでもあります。要するに各国と従軍慰安婦問題を交渉する際には、「今後、従軍慰安婦問題を蒸し返した国があれば、日本と協力して批判する」といった協定を結んでおくのです。韓国が約束を反故にしたとき、同じ従軍慰安婦問題を抱えていた各国が「その問題は解決したはずである」と批判すれば、韓国への大きな圧力になることは間違いありません。
 
最後に3です。河野談話も含めて、従軍慰安婦問題は「不可逆的な解決」となりました。もう今更国内でも蒸し返す必要はありません。なにしろ共産党まで支持する今回の合意です。日本の政治家が自分から合意を反故にするのはバカバカしい話であります。
ただ、学術的研究として従軍慰安婦問題が「解決」したわけではありません。今回の合意で言及された「軍の関与」とはどんなものだったのか、更なる研究が必要でしょう。
 
■日本には雇用者責任がある
ご存知の通り、従軍慰安婦の募集の実行は、ほとんどがブローカーの手配でした。はっきり言って、従軍慰安婦をどう集めるかなんて軍にとってどうでもいいことだったんでしょう。「一人につきいくらやるから集めて来い」と丸投げした場合がほとんどだったと思います。しかしそれでも金を払った以上、「雇用者責任」は厳然と存在します。つまり「軍の関与」の責任は、0か100かでなく、20なのか50なのかという割合の問題なんですね。もちろん残りの割合の問題は、ブローカーがどんな手配をしたのかです。
従軍慰安婦の手配なんて現地に詳しい人間の独壇場ですから、ブローカーの多くは韓国人だったと思われます。そういった「ブローカーがどんな人間で、どんな手配をしたのか」を調査し、発表していくことは「雇用者責任」のある日本の問題であります。政府が前面に立つわけにはいきませんが、アカデミックな研究分野として、これからもしっかり研究、調査を進めていく必要があると思います。
 
文書化していない従軍慰安婦問題終結。日本の解決への努力はこれからが本番です。