『核の抑止力』は、東アジアでは空論? 必要なのは『核保有やるやる詐欺』

緊迫感が高まる東アジア情勢。ここでにわかに「非核三原則」を見直す発言が出てきました。

非核三原則「持ち込ませず、は議論の価値ある」 石破氏」
北朝鮮が潜水艦から核が撃てるようになると、状況は全く変わる。その時に(非核三原則のうち)「持ち込ませず」をどうするかは議論する価値がある。
核を使わない環境は外交努力でつくらなければならないが、全く使わないと言ったら核の傘は意味がない。
http://www.asahi.com/articles/ASK1F6T84K1FUTFK017.html

この「全く使わないと言ったら核の傘は意味がない」という言葉が、「核を撃つかもしれないよ。互いに撃ち合ったら困るよね。だから撃たないで均衡を保とう」という「核の抑止力」という考え方の根幹です。
この考え方が生まれたのは、東西冷戦時。アメリカとソ連が行いました。しかし今の東アジアにおいて、アメリカとソ連のような関係が成立するかというと、それは不可能と言えるでしょう。
 
■10分で飛んでくる核。撃った者勝ちに

「使える時間は4分のみ 現実に見えた「Jアラートの実力」」
発射時刻は5時57分と見られていることから、発射後5分ほどで情報を発表したことにはなる。ただし、多くの国民にその情報が行き渡るかどうかというと、話は別だ。スマホで“速報”が実際に受信できたのは1〜2分遅れだった。

 北海道上空を通過したと見られるのが6時6分。発表からわずか4分。いや、実際に国民が情報を入手してからは、最大でも2〜3分しかないかもしれない。

https://news.nifty.com/article/world/worldall/12180-608349/

発射が5時57分。北海道上空を通過したのが6時6分。9分間しかありません。東西冷戦時、アメリカとソ連、どちらかから核が発射されたとしても、着弾まで最低45分と言われてました。しかも両国は、有数の広大な国土を持っています。たとえ核を発射しても、着弾前に報復が可能なわけで、『核の抑止力』は機能していました。
しかし、東アジアでは互いの国が近すぎて、着弾までの報復がほぼ不可能です。要するに、「撃った者勝ち」の状況になるのです。互いに核を持ち合って、「先に撃たれたらどうしよう」という緊張感した関係となり、とても『抑止力』などにはなりません。
 
■『核の抑止力』を支えるのはお互いの信頼関係
冷戦当時、米ソはホットラインを開設し、互いに情報を共有。ある程度、相手の理性を信頼する土壌がありました。しかし東アジアではどうでしょう? 撃った者勝ちの状況で、韓国や北朝鮮と、そういう相手の理性を信頼することができるでしょうか?
親族だろうが気に入らない人間を殺しまくる北朝鮮。韓国では、ストレスがかかると怒りを爆発させる「憤怒調節障害」が社会問題になっています。

「韓国で怒りを抑えられない人が増加、カッとなっての凶悪犯罪も頻発」
韓国では、否定的な感情のコントロールができないことが原因の犯罪も増加している。今月8日には、15階建てマンションに暮らす男(41)が、外壁塗装中の作業員らが流していた音楽がうるさいと彼らの命綱を切断し殺害する事件があった。
http://www.recordchina.co.jp/b179859-s0-c30.html


朝鮮人特有のこの病気は、別名「火病ファビョン)」。最近では、浦和レッズとの国際試合で、韓国チームが敗戦にブチ切れ、ケリを入れるわ、肘打ちするわ、追い掛け回すわを行いアジアサッカー協会から処分されました。
核を持った中国、北朝鮮、韓国、日本という状況が整った時、韓国、北朝鮮が「日本や中国に先に撃たれたらどうしよう」というプレッシャーに勝てるのか。
逆に日本は、彼らの理性を信頼できるのか。韓国や北朝鮮の実態を知れば知るほど、「そんなことは不可能だ」としか思えなくなるのですが。『抑止力』どころか、核を武器にして高圧的な外交を始める可能性の方が、遥かに高い気がします。もう既にこんな言葉を言ってますしね。

北朝鮮が警告「日本列島を焦土化、太平洋に沈没」 小野寺防衛相を名指しで非難」2017年08月09日
北朝鮮の報道官が、「日本列島を瞬時に焦土化できる」と警告する声明を発表した。国営の朝鮮中央通信が8月9日に伝えた。
小野寺五典・防衛相が4日、敵のミサイル基地を攻撃する「敵基地攻撃能力」の保有を検討する姿勢を示したことに反発した格好だ。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/08/09/north-korea_n_17705576.html

敵基地攻撃能力に言及した段階で、既に「日本列島焦土化」と警告するくらいなんですから、日本の核保有議論が現実化したらどうなるかわかりません。
迎撃できない近距離での核。信頼できない近隣諸国。機能しない『核の抑止力』に意味がないのです。つまり日本にとって、やっぱり「朝鮮半島非核化」は絶対守らなければならない大原則なのです。
 
■じゃあ北朝鮮の核保有にどう対応するのか?
上で引用した記事の通り、もう北朝鮮は交渉どころか会話もままならない状況なので、交渉相手は中国です。問題は、北朝鮮の非核化が中国の得にならないことです。ただし、今までもコントロールが効かなかった北朝鮮が、核保有国という全能感によって、中国にも歯向かう可能性が出てきたことは、今後重大な問題となるでしょう。

「習主席、面目丸つぶれ BRICS会議開幕 演説で核実験には触れず 」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO2071121004092017FF8000/

北朝鮮の核実験が無いのは、中国の圧力のお陰と安保理に説明してきた中国にとって、面目が完全に潰れた形になったことは間違いありません。それでも北朝鮮が倒れて難民が押し寄せたらどうするとか、アメリカの勢力圏が広がるようなマネはできないとか、中国にとって不都合な条件が揃っています。そうした北朝鮮が倒れた後の不都合を呑み込んでも、「朝鮮半島非核化」を中国にやらせるためには、相応の条件が必要です。
 
それは「日本の核保有化論」です。なんか矛盾しているようですが、実際の「核保有」と、外交武器としての「核保有論」は違うということです。特に中国は、日本の「核保有」に関して異常に警戒してきた背景があります。

「中国、日本のプルトニウム申告漏れを批判 「反日プロパガンダ」と海外専門家も呆れ顔」2014年6月16日
華報道官は「もしも日本が非核三原則を守るならば、必要以上の核燃料を保有しているのはいったいどういうことなのか」と発言しているという。
【中国の懸念はおかしいと米誌の指摘】
専門家のジェームス・コンカ氏は「中国が日本のプルトニウムをやたら懸念するのはおかしな話」という見解をフォーブス誌に寄稿している。コンカ氏によると、プルトニウムMOX燃料として混合することは、むしろ兵器転用の可能性を下げることで、核兵器が欲しいのであれば、兵器生成のための施設を作った方が早いという。
https://newsphere.jp/world-report/20140616-6/

非核三原則を守れ」と中国が日本に説教するというね。とにかく、日本が核保有に走るとなれば、中国は間違いなく北朝鮮の非核化を進めるでしょう。日本が核保有に走ることの方が、明らかに中国にとって困ることだからです。
でもいきなり石破氏のように、「非核三原則を変えるべし」なんてやってはいけません。日本が思っているより遥かに非核三原則は重いものです。まずは「非核三原則を再検討を始めようかなー」と中国に言い、それで何も動かなければ、「非核三原則の有効性について、政府が検討した」と発表します。「やっぱりいきなり非核三原則を変えるのは無理だよね」と検討の結果判明したとしてもです。
次は「非核三原則について、アメリカと協議しちゃおーかなー」と中国に言い、それで何も動かなければ、「非核三原則の有効性について、アメリカと協議した」と発表します。「やっぱ簡単には非核三原則を変えるのは無理だわー」と協議の結果判明したとしてもです。
そして「非核三原則の現状での有効性を検討するための専門委員会を設置する」と中国に言い、それで何も動かなければ、「専門委員会を設置した」と発表します。「朝鮮半島の非核化を考えると難しいねー」と答申の結果が出たとしてもです。
ま、要するに、「非核三原則の政治カード化」をして、中国にプレッシャーを掛けるわけです。
 
■なぜか日本を脅した中国。でもそれは方向が違う
繰り返しますが、日本と朝鮮半島が揃って核保有なんて、悪夢以外にありません。中国もそれはわかっているはずなのに、アメリカにプレッシャーを掛けられて、血迷ったのか日本に的外れな脅しをしてきました。

「中国高官、北ミサイル「次は東京上空」明言 9・9要警戒?具体的根拠示さず」2017/9/8
中国の孔鉉佑・朝鮮半島問題特別代表兼外務次官補が8月30日、日本の超党派の国会議員団と北京で会談した際、北朝鮮弾道ミサイル発射について「次は東京の上空を越える発射を行うシナリオも考えられる」と発言していたことが分かった。
孔氏は、北朝鮮への圧力強化を求める日本を牽制したとみられる。
http://www.iza.ne.jp/kiji/world/news/170908/wor17090821300015-n1.html

脅す相手が違いますね。もし本当に東京の上空をミサイルが通過するようなことになれば、その後は中国にとって最悪の展開になる可能性の方が高いでしょう。非核三原則まで持ち出して日本の核保有化を警戒していたくせに、その核で日本を脅すなんて筋違いもいいところです。
日本は、中国に冗談でもこんなことを言わせてはいけないのです。専守防衛だったとしても、東京上空にミサイルが飛んでくるなら、それを宣戦布告と判断する可能性は大いにあるんですから。
日本としては、朝鮮半島非核化を絶対の命題としつつも、中国の最終行動を引き出すために、「核保有論をぶち上げちゃおうかなー? どうしようかなー?」と『核保有やるやる詐欺』を続けて、北朝鮮の暴走を中国に止めさせるよう圧力を掛け続けるべきでしょう。
そのためには、本当はやる気がないと思われないように、実行可能な政治ステップに切り分けて、非核三原則を大いに利用する必要があります。実際の日本の核保有論は、中韓のみならず、アメリカ、ロシアなど各国に多大な影響を与えます。もちろん国内にもです。
世界中に大混乱を起こすような事態は北朝鮮だけで十分ですし、今回は中国をなんとかすれば事態が改善することがわかっているのですから、うまく外交力を発揮して北朝鮮の核放棄を目指して欲しいと思います。