<従軍慰安婦問題>文大統領演説は何を目指そうとしているのか分析してみる

今年も8 月15日がやってきました。韓国大統領の定例演説はどうだったのでしょうか?

「日韓歴史問題に触れず 韓国大統領演説」

日韓関係に関しては「安倍晋三首相と韓日関係を未来志向的に発展させる」と強調した。朝鮮半島の平和構築を巡って協力を進めることで「結果的に日朝正常化にもつながる」と指摘した。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34166700V10C18A8EAF000/

前日(14日)の「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」の式典で、演説をしたので、それで十分という判断のようです。しかし、たたえちゃうんですね、従軍慰安婦を。なんか偉業を残した人を「たたえる」とかならわかるんですが。日本が「北朝鮮拉致被害者をたたえる日」とか作ろうとしたら、おそらく猛批判を受ける気がします。

さて、その「たたえる日」の演説はどのようなものか見てみましょう。 

 

■韓国流ふしぎ表現連発の演説

「文大統領「慰安婦問題、韓日外交紛争につながらないことを望む」」中央日報(2018.8.15)

「私はこの問題が韓日間の外交紛争につながらないことを望む」とし「両国間の外交的解決法で解決する問題とも考えない」と述べた。

文大統領はこの日、初めて国家記念日に指定されて天安(チョナン)の国立墓地「望郷の丘」で開かれた「日本軍慰安婦被害者をたたえる日」の行事で「(慰安婦問題は)我々は自らと日本を含む全世界が女性全体の性暴力と人権問題について深く反省し、二度と繰り返さないという覚醒と教訓にしてこそ解決する問題」と話した。文大統領は「日本軍慰安婦問題は韓日両国間の歴史問題にとどまらず、戦時女性性暴力の問題、人類普遍的な女性の人権の問題」と強調した。

http://japanese.joins.com/article/026/244026.html?servcode=A00§code=A10

まず「外交で決着しない」と宣言しています。では、どうすれば解決するのか? 太字で示したように「韓国と日本を含む世界が、『深く反省し、二度と繰り返さないという覚醒と教訓にすること』で解決するそうです。意味がさっぱりわかりません。
そもそも従軍慰安婦問題は、韓国と日本との関係以外に大きな問題になっていないわけで、それを韓国も含めた世界で反省というのは、よくわからない上に、そもそも韓国自身は何を反省するつもりなのでしょう?

他の朝鮮日報東亜日報も見てみましたが、同じ内容を報道してるだけで結局どうしたらいいのかわかりませんでした。韓国国民は、自分の大統領が言ってる内容を理解できてるんですかね? 
で、ようやく取っ掛かりをみつけたのが、左派系新聞のハンギョレ新聞です。

「文大統領「慰安婦問題、外交では解決できない」人権解決法を強調」ハンギョレ新聞(2018.8.15)

昨年の8・15祝辞と今年の3.1節記念演説とは異なり、日本政府を直接狙わなかった。真の謝罪と反省をする意思のない日本に対するメッセージは減らす代わりに、韓国政府が、日本軍「慰安婦」被害者メモリアルデーの国家記念日指定▽日本軍「慰安婦」問題研究所発足▽関連教育など後続措置を強化してこの懸案に対して国際社会の評価を受けるという意と見られる。ある大統領府関係者は「日本にさらに根源的な覚醒を促し、韓日関係は未来指向的に進めようという意」と解釈した。

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/31352.html

要するに、国際社会への告げ口外交を再び実行するということが、「世界が深く反省し、二度と繰り返さないという覚醒と教訓する」ということのようです。まさに「慰安婦合意違反」であります。
そして、韓国自身や世界うんぬん言ってましたが、やっぱり「覚醒」するのは、日本だけのようですね。なんだかんだ言ってましたが、結局そういうことのようです。

しかし、まだわかりません。「覚醒」ってなんでしょう? 大統領関係者も「日本さらに根源的な覚醒を促す」と言ってますけど、日本が何を「覚醒しろ」と言ってんでしょうか? いろいろ探して、中央日報英語版「たたえる日」の記事にその片鱗がありました。

 
■結局「1000年経っても加害者」演説と同じ

「 day to honor ‘comfort women’」中央日報英語版(2018.8.15)

“I don’t think this issue can be settled with a diplomatic solution,” Moon said, breaking from a statement he made last March when he called Japan the “perpetrator.”

(ムン氏は、「この問題は外交的解決策で解決することはできないと思う」と述べた。ムン氏は、昨年3月に発表した声明を踏まえ、日本を「加害者」だと指摘した。

http://koreajoongangdaily.joins.com/news/article/article.aspx?aid=3051900

わざわざ二重引用符で書き出している「perpetrator」ですが、「犯人」とか「加害者」とかの意味であります。ハンギョレの記事と合わせると、「真の謝罪と反省をする意思のない日本に、『加害者』としての自覚を目覚めさせること。そして教訓として教え諭すこと」となりますね。
つまり、「日本は根源的な加害者である自覚を持ちなさい。そして二度と繰り返さないよう、教訓としなさい」ということで、これはもう確かに外交どころかそもそも解決しません。だって韓国の求める教訓も「未来に渡って言い聞かせなさい」ということですから、未来永劫解決しないわけです。
なんのことはない、朴前大統領が2013年3月1日に行った

「(日本と韓国の)加害者と被害者という歴史的立場は、1000年の歴史が流れても変わることがない。日本が私たちのパートナーとなり、21世紀の東アジアの時代をともに導いていくためには、歴史を正しく直視して責任を負う姿勢を持たねばならない。韓国と日本はつらい過去を1日も早く治癒し、共栄の未来に向かって共に進めるよう、日本政府は積極的な変化と責任ある行動を取らなければならない」

という演説の内容を、わかりにくく言い回しただけです。
で、朴大統領はこの演説の後、告げ口外交を始めたわけで、文大統領は演説の内容も、これからやることも、朴大統領となんら変わらないということになります。結構調べるのに時間掛かった割りに、つまらない結果でがっかりですよ。
 
■「慰安婦合意」はどうなった?
こういう「始めにもどる」にならないよう、「不可逆的な解決」を合意した「慰安婦合意」があったはずなんですが、これはどうなったんでしょうか? 文大統領の演説からは、そもそも「12.28慰安婦合意」の言葉そのものが消えてしまっています。「外交的解決はできない」の一言で済ませてしまっていて、明らかに棚上げを狙っています。勘違いしてはいけないのは、文大統領は一度も「慰安婦合意は無効という発言はしていない」ということです。むしろその逆です。

「韓経:韓国外交長官「再交渉を要求しない」…慰安婦合意「あいまいな折衝」」中央日報(2018年01月10日)

「2015年の合意が両国間の公式合意だったという事実を否認できず、日本に再交渉要求はしない」と発表した。

http://japanese.joins.com/article/359/237359.html

散々ひっくり返したのですが、「朴大統領が日本からお金を貰って合意を結んだ」といった不正の結果は、遂にみつかりませんでした。結果、「公式合意だった」と認めるしかなかったのです。以前から当ブログの記事「ついに日韓激突へ 「慰安婦合意」再検証と戦う方法を考える」で言及しているとおり、ここに韓国側の弱みがあります。今回の演説に対して、日本政府は即座に「慰安婦合意に反する」と申し入れましたが、それでは足りません。「文大統領も検討した結果、『慰安婦合意』を公式合意と認めた」だから、「慰安婦合意を着実に実施するよう求める」のです。
拠出された10億円に関しても、政府予算に振り替えたりといろいろ棚上げの工作をチマチマやってますが、「合意は公式合意」である以上、朴前大統領の時より不思議な表現で遠回りした棚上げを狙うしかないのです。「文大統領も公式合意と認めた」ということを、もっともっと前に押し出して行って欲しいです。
 
ただ、面倒くさいことは、今回直接の日本の責任に言及しなかったことを、韓国側が「譲歩した」と認識している可能性が高いことです。なので、「対価」を要求してくる可能性があるのですね。たとえば「日韓通貨スワップの再開」とか。「慰安婦像の撤去」とか、まだまだ全然解決していないのに、対価を求められても日本側はどうしようもないと思うのですが。
韓国側からそんな「対価」を求めらた時にどうするのか? 徴用工の問題再燃と共に、外務省には適切なマネージが求められています。