消費税増税がどれほど間違っているか検討してみる
安倍首相が消費税を、2019年10月に10%に引き上げることを表明しました。
「安倍総理、来年10月の消費税10%へ引き上げ表明」
景気は改善しつつありますが、財政逼迫を改善するために、やむなしと言われています。
しかし、同時に消費税増税は景気に打撃を与えます。いろいろ「クレジットカード使用時のポイント付保」とか、「本気かいな」と思うような対策も出ていますが、どう頑張っても打撃与えるでしょう。
■過去の増税で何が起きたのか?
内閣府が長期経済統計を出しています。
「平成30年度 年次経済財政報告 長期経済統計 物価」
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je18/h11_data05.html
消費者物価指数の前年度比増減率を抜き出してみましょう。(2018は3月までの数値)
年度 | 1985 | 1986 | 1987 | 1988 | 1989 | 1990 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 |
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前年度比 | 2.0 | 0.6 | 0.1 | 0.7 | 2.3 | 3.1 | 3.3 | 1.6 | 1.3 | 0.7 | -0.1 |
年度 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 |
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前年度比 | 0.1 | 1.8 | 0.6 | -0.3 | -0.7 | -0.7 | -0.9 | -0.3 | 0.0 | -0.3 | 0.3 |
年度 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 |
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前年度比 | 0.0 | 1.4 | -1.4 | -0.7 | -0.3 | 0.0 | 0.4 | 2.7 | 0.8 | -0.1 | 0.5 | 1.3 |
ざっくり言うと、プラスがインフレですから好景気。0に近いほど不景気。マイナスがデフレなので超不景気です。
グラフにするとわかりやすいですね。3%導入時はバブル経済まっさかり。消費税導入によって直に影響が出ていないのはこの時だけです。どれだけバブル経済が凄かったかわかりますね。
91年から転げ落ちた日本経済は、ようやく96年に回復の兆しが見えてきます。ところがその翌年に消費税5%導入。致命的な衝撃となり10年に及ぶ大不況に入ってしまいます。この時は他にもアジア通貨危機とか様々な要因が重なっており、最悪のタイミングでした。
08年、なんとかかんとか復活してきた日本経済を、今度はリーマンショックが襲います。復活の先を折ったと言うべきか、低迷していた時にやられたらもっと大変だったとポジティブに考えるべきか。とにかくこれでまたマイナスに落ち込んでしまいます。
そして2014年。ようやくプラスになったところで、またも8%に増税。マイナスに落ちてしまいます。
で、2019年。またまた景気が上向いてきたところで10%にしようとしているわけですね。もう「わざとじゃないのか」と思いたくなるほど、経済が復活しようとするタイミングで消費税を上げて、景気回復を妨害してきたのです。
■消費税を上げても、税収全体が上がらない当然の理由
消費税はその名の通り、消費が活発になり売買が行われるほど、税収増となるシステムです。だから好景気になって消費が多くなり、売買が増えれば、自動的に増収となります。当たり前ですね。
消費税率が上がると、当然のことながら物価を直撃します。原材料も上がり、運送費も上がり、通信費も上がります。単に店頭の価格が上がるだけじゃない莫大な影響があるのですね。その結果、消費が冷え、消費税も含めた税収全体が落ち込んでしまうのです。消費税率を上げても、税収全体が増えないどころか減少することすらあるのは、そのせいです。
過去にそうだったのですから、今回も景気後退が起きます。ポイント制などの小手先を駆使しても、焼け石に水であることは間違いありません。
では、どうやって税収を上げるのか?
■インターネット時代に合わせた新たな税収の仕組みを
これまで納税してこなかったグローバル企業に課税するための、新たな仕組みを作っていくことが必要なのです。たとえば、インターネットを駆使したグローバル企業が典型です。彼らは現在の「本社が当該国にある企業に課税する」という従来の税制度の隙間を突いて、莫大な課税を逃れてきました。アマゾンなんかが典型です。
「アマゾン、日本で巨額の「税金逃れ」か…過去5〜7年分の追徴課税の可能性」2017.10.06
アマゾンでは購入者が商品の評価を書き込むことができるが、そのレビューの内容をめぐって、東京都内のNPO法人がアマゾンのアメリカ本社と日本法人に対して投稿者の情報開示などを求める訴訟を東京地方裁判所に起こしていた。
その訴訟のなかで、アマゾン側は「日本語サイトの運営主体は、日本法人のアマゾンジャパンである」と認めて敗訴したのだ。それにともなって、アマゾンジャパンは巨額の無申告重加算税(無申告加算税に代えて課される重加算税)を追徴される可能性が生まれた。
アマゾンは、長らく日本法人に関して、「物流施設のひとつであり、アマゾンが日本で直接的な事業活動を行っているわけではない」と弁明してきました。だから、とんでもない利益を日本で稼いでいるにも関わらず、税金を収めてこなかったわけです。
ところが、あるNPO団体に所属していた人の書籍について、中傷する「口コミ」が連発され、投稿者の情報開示を求める訴訟が起きました。アマゾンの「口コミ」の管理者は、いったい誰なのか? 訴訟でアマゾンは、口コミ管理も含めた日本語サイトの運営が、アマゾンジャパンにあることを認めざるを得なくなり、敗訴する破目になりました。2016年のことです。
アマゾンが日本に上陸した2000年から、敗訴するまで16年間。アマゾンは嘘をつき続けてきました。兆を軽く超える莫大な脱税です。
他にもアップルやマイクロソフトなどのグローバル企業も、様々なインターネットサービスについて同じ理屈で税収を逃れています。日本だけでなくEUなどとも連携が必要な問題ですが、この3社だけでも何十兆円もの税収を取り逃がしているわけです。こういう企業は、これからも減らないでしょう。むしろこれからも増えていくと考えた方がいいです。
景気後退のリスクを抱える消費税増税に走るより、インターネットを介したグローバル企業への課税を、どうするのか考える方が、結局は日本の未来を拓くのではないでしょうか?
当ブログが指摘した「<旭日旗問題>日本が反撃をしてこなかったツケ」のような外交問題と共に、消費税のような内政問題でも、日本政府が正しい選択をすることを期待しています。