日本の輸出規制(準備)で起こる半導体大変動
でも面白いのは、韓国の状況に着眼している分析ほど、低迷派が多く、アメリカの需要を基準に着眼している分析ほど、回復傾向と見ていることですね。
■サムスンのビジネスモデルが破綻か
まず大きなトピックは、業界最大手サムスン電子の業績低迷です。
「サムスン電子営業益が前年比56.3%減 前期比では増加=4~6月」2019/07/05
サムスン電子の営業利益が2四半期連続で6兆ウォン台にとどまったことを巡っては、「底を打った」との楽観論と「不振が長期化する」との悲観論が交錯している。
http://www.wowkorea.jp/news/korea/2019/0709/10237542.html
サムスン電子の場合、とにかく「工場を止めない」ということが収益の源になっています。
「韓経:40分間停電で500億ウォンの損失…サムスン平沢工場に何が?」
少なくとも20分間は電力の供給が完全に中断し、クリーンルームの清浄真空状態を維持できなかった。このためラインにあった製品を失うことになった。半導体に薄い膜をかぶせる蒸着工程に入っていた製品もそのまま固まって使用できなくなった。
https://japanese.joins.com/article/631/239631.html
この「需要の増減関係なく工場動かしっぱなし。需要があればオッケー。無くて在庫が余っても、価格安で他社が困るからオッケー」という構図をなんとかしないと、半導体やディスプレイ市場はどうしようも無いのですね。
では、今回の日本による輸出規制措置(の準備)が、市場にどう影響を与えるのでしょうか?
■韓国と世界は逆方向?
「19年の半導体製造装置市場は18%減、前回予測から大幅下方修正」2019年7月17日
17~18年の過去2年はメモリー投資拡大で韓国が最大マーケットであったが、19年は主要メーカーが投資を抑制する一方、ファンドリーの積極投資で台湾が再び1位の座に返り咲く見通し。韓国は前回予測に比べて40億ドル引き下げられており、今回の大幅下方修正の主因といえる。
https://news.infoseek.co.jp/article/toushin1_12215/
しかしよく見ていくと、サムスン電子などの韓国メーカーと、韓国以外の半導体メーカーの動きが、逆方向なのですね。
「日本株は急反発、米利下げ観測や半導体業績期待高まる-全33業種上げ」2019年7月19日
上げを主導した半導体関連については「TSMCが予想されていたより設備投資を行うことで、需要や設備投資が戻ってくるのがみえてきた。半導体サイクルは在庫調整一巡から来年には回復してくるのではないか」と予想した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-07-18/PUUZRD6JTSEB01
「マイクロン、広島工場の拡張工事を完了 - 年末より1Znm DRAMの生産を計画」2019/06/12
同社は1Znmプロセス世代以降としても1αnm、1βnm、1γnmと微細化を進めていくことを明らかにしており、1α、1βnmプロセスに対応予定のF棟も一部だが広島工場内にて建設が開始されるなど、引き続き日本地域への投資を行っていくとしており、その額もこれまでの投資を含め、累計で数十億ドルにおよぶとしている。
https://news.mynavi.jp/article/20190612-841736/
「ディスコ、設備投資6割増 半導体需要の急減に逆らう 」2019/7/3
米中摩擦などで半導体需要が冷え込み、2019年3月期は減収減益に陥った。それでもディスコはひるまない。むしろ収益力強化の機会だととらえ、積極的に攻めに出た。
「ディスコ」は、半導体・電子部品の切断、研削、研磨装置の世界シェア8割の企業です。
「日本の輸出規制、世界のハイテク企業に悪影響=韓国政府筋」2019年07月17日
韓国政府筋は17日、日本による半導体材料の韓国向け輸出規制の強化は世界のハイテク企業に悪影響を及ぼすとともに、米テキサス州オースティンにあるサムスン電子の半導体工場の操業に打撃を与えると述べた。
https://www.newsweekjapan.jp/headlines/2019/07/244003.php
韓国は日本の今回の対応について、盛んに世界市場への悪影響を叫んでいます。まぁ、完全に輸出を止めるならまだしも、書類審査が厳しくなった程度で、世界に打撃が出るとは大げさに過ぎると思いますが。
ただ確かに、これまで安価な半導体やメモリで製造されてきた製品にとって、悪影響があるのは間違いないでしょう。サムスン電子などが減産を行えば、自動的に半導体やディスプレイ価格は上昇し、末端製品の価格も上がることになります。
でもこれはチャンスでもあります。これまで安すぎてビジネスにならなかったIT市場が、適正価格に戻り、様々な会社が参入するキッカケになるかもしれません。実際、韓国系以外の半導体やディスプレイメーカーが、ナイスタイミングで新工場を稼働させており、このまま行けば「韓国IT依存市場」を変えてしまう匂いがします。
複雑怪奇なグローバル経済の中で、どこに影響が跳ね返るかまだまだ不明ですが、崩壊した半導体やディスプレイ市場の再構築につながるよう、みんなが正しい選択をできればいいですね。