<GSOMIA>支持層猛反発に揺れる文政権 12月の首脳会談が天王山に

11/22に急転直下で更新されたGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)。破棄によって韓国が終わるんじゃないかと思っていたため、この土壇場の更新発表はびっくりであります。韓国側でも破棄の決断が大勢だったため、午後6時のニュース番組で解説者が絶句する場面がありました。

■勝利宣言するも、支持母体から批判の嵐

「条件付き更新」という発表も分かりにくかったためでしょう。当初の反応は、批判すればいいのか喜べばいいのか、どっちかわからないという感じでした。
大統領府はGSOMIA更新を「日本側が3品目の輸出規制に対する、再検討の意向を見せたため」と発表し、「文政権が日本に勝った!」という世論形成を図ります。

青瓦台「日本、輸出規制再検討の意向見せGSOMIA終了延期」(2019.11.24)
青瓦台(チョンワデ、大統領府)は23日、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了延期決定の背景を「日本が3品目に対する輸出規制措置再検討と『ホワイト国』の意向を見せたため」と明らかにした。
https://japanese.joins.com/JArticle/259881/

 
がしかし、日本側の発表の詳細は、韓国側の期待を裏切るもので、文政権の支持母体である政党や労働組合が、揃って非難声明を発表する事態になっています。
それだけでなく、支持母体はかなり「反米傾向」が強く、「アメリカの圧力に屈した」という形にも納得していません。

「「米国の圧力に屈した」!文政権のGSOMIA破棄中断に支持層が猛反発!」
「民主労総」は「(文在寅政権は)安倍政権とペンタゴン、さらには(GSOMIA破棄撤回を求めて断食中の)黄教安(自由韓国党代表)に屈服した」と怒りを露わにしたが、「韓国進歩連帯」や極右の「ウリ共和党」と真逆の左翼政党である「民衆党」もそれぞれ「米国の不当な強圧に屈服し、屈辱的にもGSOMIAを延長させてしまった」と、文政権に憤りをぶつけていた。

https://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/20191124-00152230/

 
今の韓国が、アメリカ無しに到底成立することはできないと思うのですが、なんでこんなに反米団体が増えているんでしょうね。

■日本批判で矛先を逸らそうとするが、失敗
盛り上がる批判に、大統領府は日本の報道を問題にしようとしました。

「韓国大統領府、GSOMIAの歪曲報道で日本から「謝罪あった」
日本と韓国のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の維持をめぐり、韓国政府の高官が「日本は合意内容を意図的に歪曲(わいきょく)して発表した」と批判していた問題で、韓国の青瓦台(大統領府)は25日午前、「日本から謝罪があった」と明かした。
https://www.wowkorea.jp/news/japankorea/2019/1125/10246099.html


日本人なら、今のこの流れで「日本政府が謝罪することは無いだろうな」と感じると思いますが、日本側の「輸出入問題にかかる課長級会議」について「GSOMIAと全く問題がない」と言い切ったことに関して、「謝罪があった」と政府高官が断言してしまいます。
当然のことながら、日本側は即座にこれを否定。

「菅官房長官「政府が韓国に謝罪した事実ない…非生産的なので対応しない」」2019.11.25
菅義偉官房長官は「謝罪をしたのは事実か」という日本記者の質問に対し、「韓国側の発言一つ一つにコメントや対応をすることは生産的でない」とし「政府として謝罪した事実はない」と述べた。また、「韓国政府は日本が輸出規制を撤回することにしたという主張だが、撤回を検討しているのか」という質問に対し、「輸出管理の見直しは輸出管理制度を適切に運用するためのものであり、GSOMIAとは全く別の問題」という従来の立場をそのまま堅持した。
https://japanese.joins.com/JArticle/259921/


官房長官の「一つ一つにコメントや対応をすることは生産的でない」という言葉は、本当に本音だと思うのですが、韓国という国は、「反論しないのは、正しいと認めたからだ」という論理を、国民的に持っている国なのですね。たとえば、日本から謝罪があったと記者会見したユン・ドハン国民疎通首席は、こんなこと言ってます。

「日本側が謝罪していていないのなら、公式ルートを通して抗議してくるだろう」と伝えたことがわかった。
https://www.wowkorea.jp/news/japankorea/2019/1125/10246099.html

 
昔の日本なら、「個別の発言にいちいちコメントしない」として放置だったと思いますが、実はそれが韓国側に間違ったサインを与えていたのですよ。菅官房長官の言うとおり、確かに「生産的ではない」のですが、「損害を生まない」手段でもあるのです。プラスの効果は無いでしょうが、マイナスをゼロにする効果はあるのですね。

■文政権の明暗は、12月の首脳会議に
いろいろ言い合いがあったとしても、問題は結果を出せるかどうかで、GSOMIA延長の真価が問われます。その瞬間は12月に開催される日中韓首脳会議の場になりそうです。

「[社説]日本は韓日「合意」を歪曲せず交渉に誠実に応ぜよ」
今回の事態を巡って韓国内では、政府が当初からGSOMIA終了カードを持ち出したのが無理な手であり、結局日本から勝ち取った具体的なものはないという批判も提起されている。
政府がこのような酷評を落ち着かせるためには、何より今回開かれた韓日間の対話の窓口を通じて、日本の輸出規制中止などの実質的な成果を得ることが重要なことを忘れてはならない。
http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/35055.html


ハンギョレ新聞も今回の文政権の対応は、擁護できなくなりつつあります。
12月の下旬、予定では24日ごろに日中韓首脳会議が、中国四川省成都で行われます。この時に、日韓首脳会議で「輸出規制撤回と徴用工をめぐる日本側の正式謝罪」と勝ち取るかどうかと、エライ高すぎるハードルをブチ上げています。
それは無理じゃないかな、と日本人なら思うのですが、GSOMIAショックは、それぐらいじゃないと治まらない事態にまで進んでしまいました。
追い詰められた文政権は、禁じ手も含めて様々な方策で、何としても言質を取ろうとしてくると考えられます。と言うか「謝罪した」とか何とか、もうその戦いは始まっていると言えるでしょう。

さらに日韓首脳会談で「輸出規制撤廃」を現実化するために、既にこんなコメントが出ています。

「「輸出規制撤回に1カ月程度必要」 GSOMIA終了前に日本が言及=韓国政府筋」綜合ニュース(2019.11.25)

日本側は「輸出規制を撤回するなら、形式的ではあるが韓国の輸出入管理体制に問題がないことを確認しなければならない」とし、「1カ月程度の時間がかかる」との趣旨の立場を伝えてきたとされる。

この消息筋は「政府はGSOMIA終了を念頭に置いて準備してきたが、日本のこのような提案で雰囲気が変わった」と説明した。

https://jp.yna.co.kr/view/AJP20191125003100882

「形式的に一か月程度手続きの時間がいる」と言ってきたため、GSOMIA更新をおこなったという主張です。

しかし本来、グループA(ホワイト国待遇)にするためには、厳格な輸出管理措置の規則の徹底や、運用実績がないと認定されません。にもかかわらず韓国は、規則の徹底に関して「自分は問題ない」と非を認めていませんし、運用実績に関しては、まだ数えるほどしか許可されていない状況です。

これまでの経緯を考えると、日本側が「形式的に1か月」なんて言うとは、到底考えられません。まぁ、日韓首脳会談で何としても結果を出さなければならない韓国側の、足掻きなんでしょう。

こういう報道に、いちいちコメントをするのは実に非生産的かもしれませんが、これからの1か月はその対応が必要な期間なのです。日本側は「非常事態」と考えて、きめ細かい対応をしていって欲しいですね。 

募集工(徴用工)の売却措置も12月になりそうです。
日韓関係は、いよいよ天王山が近づいてきました。