<火器管制レーダー照射>韓国反論動画に反論する

4日に韓国国防部から火器管制レーダー照射事件に関する「反論動画」が公開されました。もう突っ込みどころ満載で、本当に「議論できない人」と話すのは面倒臭いなと感じる内容です。

「反論動画、閲覧200万回突破=計8カ国語公開へ:韓国」1月6日
韓国語版は158万回を上回り、英語版は約42万回に達した。
同省当局者は「日本語、中国語版なども作成中だ」と述べ、計8カ国語の動画を公開する計画を明らかにした。
一方、「反論動画のサムネイル(縮小見本表示)は合成画像」という指摘に関し、韓国国防省当局者は「編集されている」と認めた。 
https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0106/jj_190106_2447617792.html

八ヶ国語版なんて作るんですね。あれで反論した気でいるのが凄いです。韓国側の動画には、出典表記が無いので、明らかに問題があるはずなのですが。
日本としては、一撃で相手を潰すことを回避した以上、長期戦になることは間違いありません。途中で腰砕けにならないことを祈ります。
 
■反論1:レーダー照射はあったのか
現在のところ、日韓双方の動画でこれと言う決定的な情報は出ていません。
韓国の動画では、設問4つのうち、3番目。「威圧的低空飛行」について1、2番目に言及しており、明らかに議論を主題から逸らそうとしています。その3番目の反論もこんな感じ。

「[全訳] 韓国国防部「反論映像」全テクスト」
3. 広開土大王艦は日本の哨戒機に向けて、射撃統制追跡レーダー(STIR)を照射しませんでした。
もし、広開土大王艦が日本の哨戒機に向けて追跡レーダーを作動させたならば、(画面の中央に)日本の哨戒機は即刻、回避行動をとっていなければなりませんでした。
しかし、広開土大王艦の方に再び接近する常識外の行動を見せました。日本はなぜそうしたのでしょうか?答える必要があります。
https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20190104-00110128/

全くどうでもいい質問ですね。「再接近は、韓国駆逐艦の真意を確認するため」でも何でも、理由なんぞいくらでもあります。
韓国側は「追跡レーダー(電磁波情報)の証拠資料があるなら、両国の実務者協議において提出すればいい」などと言っていますが、今の韓国の状況では、火器管制レーダー情報を出しても、解決しない可能性の方が高いでしょう。

「重要証拠開示してもエンドレス=韓国は電磁波情報要求−海自機レーダー照射」時事通信(2019年01月05日)
自衛隊からは韓国側が公表した動画の内容を踏まえ、「収集した電波情報を開示しても、韓国側が誠実に対応しない可能性がある」「自衛隊の能力に関わる機微な証拠を提示してもエンドレスで不毛に終わる」と、政治・外交レベルでの早期収拾を求める声も出ている。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019010500040&g=soc

海自側のこの分析が正しいでしょうね。出すにしても、今では無いと考えます。質問に答えないのも何なので、「韓国駆逐艦が無線に答えなかったため」とか言っておけばいいでしょう。
 
■「威嚇的低空飛行」はあったのか
韓国側が途中から言い始めたこの「威嚇的低空飛行」ですが、当ブログでも指摘した「海上衝突回避規範(CUES)」の第3条と第4条に「危険な運動の禁止」というのが定められています。これが「船舶の近辺でのアクロバットな飛行や、模擬攻撃行動の禁止」を定めており、威嚇的な低空飛行もこの中に含まれます。
要するに、韓国は「韓国が火器管制レーダー照射で国際合意違反をしたと言うなら、お前も威嚇的低空飛行で国際合意違反をしたじゃないか」と言い出しているわけです。

1. 日本の哨戒機はなぜ、人道主義的な救助作戦の現場で低空威脅飛行をしたのですか?
日本の哨戒機は広開土大王艦の150メートル上空、距離500メートルまで接近しました。
艦艇の乗組員たちが、騒音と振動を強く感じる程に脅威的でした。相互間に偶発的な衝突が発生するかもしれないため、武装した軍用機が他国の軍艦に低空威脅飛行をしてはいけません。
日本の哨戒機がわが軍艦の上をなぜ低空で威脅飛行をしたのでしょうか?
(画面中央に)日本は答えなければなりません。
https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20190104-00110128/

答えろと言われてますが、韓国側が唯一新しく自分たちで出した映像が、自分の主張を否定しています。


画面の歪み方から見て、かなり小さいレンズで映された映像です。推測するに韓国警察艦からスマホで撮影された映像ではないでしょうか? もっとちゃんとした映像解析もやった方がいいのでしょうが、個人でもある程度、哨戒機の高度を計測できます。
哨戒機の全長を測り、水平線までの哨戒機が縦に何個分あるか計算してみましょう。図の通り、ちょうど5個分ありました。映像の哨戒機の全長は38mですから、韓国側の映像では、約190mの高度を飛行していることがわかります。
もちろん、哨戒機の映像が真横に来ていないと本当の距離は出せませんし、この計測方法は近過ぎると誤差が大きくなって上手くいきません。極端な話、真上を飛ぶ画像だと水平線が無いので、どうしようもないわけです。逆に遠過ぎて豆粒のようになってしまうと、1mmなのか0.9mmなのかで誤差が大きくなってしまい、やはり上手くいきません。今回の倍くらいの大きさの映像から、あと数ミリ小さいぐらいまでが、有効な推定値を出せる限界ではないでしょうか。そういう意味で、哨戒機の高度は大きな誤差の無い、信用に足る数字が出せていると思います。
ですから反論は「韓国側の映像から、哨戒機の高度は問題ないことが証明された」と発表しましょう。
 
■軍用機の低空制限の違反はありえるか

2. 日本が国際法を遵守したと主張するのは果たして事実でしょうか?
国際民間航空機構(ICAO)国際民間航空協約付属書(Annex)2-4。高度150メートル以下の視界飛行を禁止する条項があります。
しかし、付属書の趣旨は国際法的に一般の民間航空機の運航と安全のための、一般飛行規則を定めるためのものです。さらに、国際民間航空機構(ICAO)の国際民間航空協約は、軍用機には適用しないと明確に規定しています。
(画面中央に)日本は国際法を恣意的に歪曲し解釈しています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20190104-00110128/

これが死ぬほど馬鹿馬鹿しい主張なんですよね。日本の主張は、「民間航空協約に照らしてすら、問題ない」と言っているんです。韓国側は、何が問題か全く理解していないとしか思えません。
私が調べた限り、軍用機の最低制限高度を定めた国際条約や、それに類する規定は無いのです。日本にも韓国にも、軍用機の低空飛行制限の規定はありません。ヨーロッパを見てみると、ベルギーなどが「軍用機の最低制限高度は80mとする」としています。民間機より遥かに低い高度制限です。しかもこれ市街地での高度制限ですから、海上ではヨーロッパでも問題にならないでしょう。
ですからこれの反論は簡単ですね。「民間機の高度ですら問題無い高度を飛行しているのに、軍用機の飛行高度でどんな問題があるのか国際条約等で根拠を示せ」です。
 
■無線に応答しなかったのは何故か

4. 日本の哨戒機の通信内容は明確に聞こえませんでした。
日本側が試みた通信は、雑音がひどく、広開土大王艦では明確に聞こえませんでした。
(画面中央に)すでに救助作戦の上空から相当程度、離れた後でした。
https://news.yahoo.co.jp/byline/seodaegyo/20190104-00110128/

ここで何か妙な電子音の後に、海自の無線が流れます。防衛省が出した音声と比較して、ノイズが大きくBGMがあるせいで、よく聞き取れません。そもそも何の音声なんですかね? 防衛省側の音声を勝手に編集しているなら、捏造になるんですが。本格的に音声解析したら、修正されたものか韓国側で受信した無線なのか、わかると思います。
それはそれとして問題は、確かに聞こえにくいですが「Korean naval ship, Hull number 971]と言っていることは確認できることです。「コリアコースト」とは聞こえません。
ですから、「コリアコーストとは聞こえないが、発言を撤回するのか?」と確認することが必要でしょう。また、「救助の上空から離れていようと、返答しない理由にはならない」とはっきり指摘した方がいいと思います。今後の有事の際、韓国側の応答が無いとそれはそれで困るのですから。
 
以上のように、韓国国防部の動画は、全く反論になっていません。日本側はさらなる反論を用意しているようですが、まず必要なのは、長期戦を行う覚悟です。
なんとか、なあなあで収めようと言うのが一番まずいです。それは結局日本の国益になりません。長い目で見れば、韓国にとっても益にならないでしょう。
北朝鮮周りがまたきな臭くなって来てますし、こんなことやってる場合かという議論は当然出てくると思いますが、初心貫徹して欲しいですね。