<韓国大使アグレマン問題>もちろん韓国側が菅政権の妥協点を探る観測気球である

新型コロナとアメリカ大統領選に沸いた2020年が過ぎ、波乱が続く2021年となりました。菅政権は9月に就任してから早3か月が過ぎましたが、荒れ狂う海外の状況に対しては、どちらかと言うと静観している印象です。
さて、お隣韓国はとても菅政権誕生に期待を寄せていたのは、ご存じの通り。3か月経ってその期待は何か変化があったのでしょうか。
 
■「日本は安倍政権の批判をしている!」
まず大前提から違うのですが、韓国にはマスコミを中心に「安倍政権は日本国民に人気が無く、批判されていた」という認識があります。
まぁ確かに「桜問題」やら「モリカケ問題」も批判を受けましたし、「消費税増税」は経済施策として間違っていたと思います。逆に外交施策については、特段否定する声は大きくなかった印象ですね。まぁ「慰安婦合意」に関しては、賛否両論でしたが。
つまり、全面的賛成を受けてない代わりに、全面的な否定も受けてなかったわけです。
しかし韓国では、これが理解できません。韓国の政権交代は、前政権の全面的な否定から行われるので、批判を受けた政策も支持を受けた政策もあるということがわからないのです。だから、「菅首相は国民から批判を受けた安倍政権と違う政策(韓国にとっては日韓関係改善)をするはずだ」という思い込みがあります。

「韓国メディア、菅氏の自民党総裁選出で韓日関係改善求める声」中央日報(2020/9/15)
韓日関係で安倍首相が踏んだ強硬路線を踏むならば『外交門外漢』というレッテルとともに日本の孤立を自ら招くだろう。未来指向的韓日関係構築を望むならば菅時代の日本は変わらなければならない
https://japanese.joins.com/JArticle/270222

新聞を見る限りは、中立的な表現のものも見られるのですが、テレビのワイドショーレベルまで広げると、上で引用したような記事の内容がほとんどです。
もういきなり安倍首相の外交路線継承は「外交門外漢だ」と決めつけてしまう。で、「未来志向の韓日関係を望むなら日本は変わらなければならない」と説教するわけです。
この一方的な上から目線も、韓国マスコミの共通した姿勢です。ワイドショーを見れば、主婦代表とか元スポーツ選手のコメンテイターが、揃って「この機会に日本は目を覚ますべきだ」みたいなことを言って、みんなで「そうだそうだ」と同意するシーンが頻発して、見てると背中がムズムズします。

■あれ? 安倍政権から変わったのに変わらない?
根拠なく「安倍政権が終わったから、やっと日本は韓国と関係改善に意欲を示してくる」と報道していた韓国マスコミが少し変わってきたのは、日中韓首脳会議の延期が決まってからでした。

「韓経:韓日中首脳会議の年内開催見送り…韓日関係、反転なかった」中央日報(2020/12/22)
今回の会議不発で文在寅ムン・ジェイン)大統領と日本の菅義偉首相のトップダウン式交渉を通じて突破口を設けることも期待するのが難しくなった。
来年初めに同盟価値と韓日米三角共助を重視する米国のバイデン次期政権が発足すれば韓日関係にも反転の契機が作られるだろうという見通しが出ている。
https://japanese.joins.com/JArticle/273620

相変わらず「コロナのせいで仕方がない。でも本心で日本は韓国と関係改善したがっているのは間違いない」というような報道が続いていますが、ちょっと風向きが変わってきました。
多くなったのは、上の記事のような「日本はバイデン大統領が切っ掛けを与えるのを待っている」という記事です。
これには「アメリカは日韓関係改善の希望を持っているから、アメリカにちゃんとロビーして日本を叱ってもらおう」という意識があります。バイデン大統領が「慰安婦合意」の後押しをしたという事実は、なぜか無視されているのが不思議ですが。

■日韓両国新任大使のアグレマンに異様な注目
ここにきて俄かに韓国で注目されているのが、日韓両国大使の「アグレマン(駐在国の事前同意)」問題です。
日本ではそこまで注目されているニュースではありませんが、韓国では凄いことになっています。
韓国から大使に内定されているのは姜昌一(カン・チャンイル)氏です。

駐日大使に「反日のかたまり」を送り込んでくる文在寅大統領の頭の中 「韓国では天皇陛下を日王と呼ぼう」 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

昨年10月に韓国KBSラジオで「韓国では(天皇陛下を)日王と呼ぼう」と話した。 

https://news.livedoor.com/article/detail/19306448/

 調べれば本当に反日発言が多くて、大使として日韓関係改善に寄与する人選とは思えません。ちなみに「天皇ではなく日王と呼べ」という呼び方に固執する理由ですが、「天皇」の韓国呼びはそのまま「天の王」と言うことになり、「朝鮮王朝」の上の意味を持ってしまうからですね。他の国はそんなこと気にしません。韓国だけです。
さらに、韓国側で問題になっているのは、これら発言のせいで姜昌一氏が「大使として妥当かどうか」では無いのです。注目されているのは「どんな人選であろうと、日本が韓国の言うことを拒否するのか」ということです。
韓国的な発想では、日韓関係を良くするなら「日本は韓国の言うことに反論してはいけない」と考えるのです。なぜなら韓国が「謝れ」と言えば謝罪し、韓国が「条約は無効だ」と言えば無効になるのが、『正常な日韓関係』なんです。これにはちゃんと理由があって、「昔の日韓関係」は本当にこういう関係だったんです。だから日韓関係を清算した安倍政権を、冒頭の記事のように「外交門外漢」と全面拒否するのですね。

■「アグレマン問題」は観測気球(アドバルーン

「韓日、両国新任大使にアグレマン年内付与へ」2020/12/30
韓日両国は駐日大使に内定した姜昌一(カン・チャンイル)氏、駐韓大使に内定した相星孝一氏に対し、年内にアグレマン(外交使節に対する駐在国の事前同意)を出すという。
韓国日刊紙ソウル新聞は29日、外交筋を通じて、韓国政府が28日午後に相星氏に対するアグレマンをすでに出したと報じた。
https://japanese.joins.com/JArticle/273919

そんな人を日本は大使として認めたという報道が出てきています。日本側の大使も韓国側に同意されない可能性があるからですね。ですが、これは悪手としか言いようがありません。 

そもそも、なぜ文大統領は反日発言が続いた人間を大使に任命したのでしょうか? この人しか人材がいなかった? そんなわけないでしょう。

これはもちろん「菅政権がどこまで韓国側に妥協してくるか」を探る観測気球です。

なにしろ海外の全権大使は必ず「信任状」を、天皇陛下宮内庁で提出しなければなりません。「 信任状捧呈式」と言うんですが、「日王と呼え」と言った人が天皇陛下直接拝謁し「大使として来ました。よろしく」と挨拶するわけです。「天皇を『日王』と呼ぶことを、天皇自身が認めた」と絶対後で報道されますよ。

菅政権がそれを認めて、韓国に妥協する気持ちがあるかどうか、韓国側はじっと菅政権の姿勢を見定めようとしています。

日本側の大使も事前信任されない可能性もありますが、それは仕方がないです。外交では妥協することも大事な方策ですが、こと韓国との外交で安易な妥協は、必ず傷を残します。特に政権の最初の段階でいきなり妥協して間違ったサインを与えるのは、正しい判断ではありません。

菅政権の今後のために正しい判断をしていって欲しいですね。l