「ソシャゲ」の未来 TGSで見えた各社の思惑

9月20日から3日間。毎年恒例の東京ゲームショウが開催されました。来場者は過去最高の22万3753人。目玉は3DSで発売される「モンスターハンター4」のプレイアブル出展です。そしてもう一つ、ソーシャルゲームが出展を分けました。
 
■ビジネスモデル「ペイミアム」ってなに?

ペイミアムは、フリーミアムとプレミアムのいいとこ取りで、ハイクオリティーのゲームを安すぎず高すぎない価格で提供し、強力な武器や時短アイテムなどを販売する課金モデルを盛り込んだものだ。長く遊んでもらうための仕掛けも入っている。
人気のフリーミアムとプレミアムのいいとこどりがペイミアムだ
フリーミアムが全盛の今、ランキングに入っていることが非常に重要。消費者にとってはランキングに入っていないゲームはこの世に存在しないのと一緒」と手塚氏。ストリートファイター X 鉄拳 MOBILEは250円だが、クオリティーは1000円前後のものと変わらない。
 
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2400J_U2A920C1000000/?df=2

これまでの売り切りビジネスモデルを「プレミアム」と呼称しています。そしてここ数年で注目されてきたのが、最初は無課金で始まり、課金で稼ぐのが「フリートゥープレイ」ですね。そして今年のTGSで、カプコンが示したのが「ペイミアム」です。まぁ簡単に言いますと、「フリートゥープレイ」のような完全無料で始まるのではなく、250円といった手の届きやすい価格で始め、あとはアイテム課金を行う折衷ビジネスモデルですね。最初にある程度の収益を計算できるところが、大きく違います。
この方式がどのくらい安定して成功を収めるのかは、現段階ではわかりません。が、ただの集金マシーンになってるソーシャルゲームを健全化に導くことはできるのでしょうか?
 
■海外進出に苦戦するグリー
コンプガチャ規制のあと、ソーシャルゲームベンダー各社が導入しているのが、「パッケージガチャ」です。基本はいわゆる「ガチャ」の語源となった「ガチャポン」と同じです。ガチャで出るカードの総数が確定しており、出るレアカードの種類も表示されます。ただし総数が違う。だいたい250枚で1セットなっているんですね。250個の景品が入った、巨大なガチャポンを回していると考えるとわかり易いでしょう。
これだけ母数が大きいと、はっきり言ってコンプガチャと大して変わりません。むしろ最悪250回やれば出るせいで、かえってガチャを回してしまう心理が働いてしまうんですね。まぁそれでも1枚だけ入ってるSSRカードの確率は1%切りますから、初心者が天真爛漫に課金することは少なくなったのではないでしょうか。

TGS 2012】グリー小竹氏に聞くプラットフォームの今後
―――米国開発のタイトルも随時サービスインしていて、徐々にノウハウの蓄積が進んでいる段階でしょうか?
そうですね。フリー・トゥ・プレイ(F2P)といってもジャンルやデザインは様々なものが考えられますので、色々なタイプのゲームを出してみて、どのようなゲームが本当にユーザーさんの心を捉えるか検証している段階です。実際にやってみないと分からない面もありますし、変な話ですが、AppStoreで1位を取っている作品と同じものを作っても成功は難しいでしょう
http://www.inside-games.jp/article/2012/09/25/60061.html

海外展開では、今年中の収益化を目指しているグリー。しかし期待通りの結果を出せずに、次第に発言が変わってきています。去年のグリー田中社長の言葉を見てみましょう。

「重要だと思うのは、あるゲームデザインが流行ったときには、それをコアにしていろんなモチーフのゲームを作るべき。作り手は飽きてしまうので、『新しいものを』という考えになりがちだが、ユーザーとしては『まだまだ同じものが欲しい』という状態である。そういうとき(作り手)は早く変化しすぎずに、(ユーザーが)いま欲しいと思っているものを提供するべき」

http://news.livedoor.com/article/detail/5864856/

この発言は、グリー田中社長が、去年のTGSで講演した内容(2011年09月15日)です。当たったゲームデザインを出しまくれと言ってのけた、伝説の公演なんですが、1年で壁にぶつかってしまったようです。実は今現在もアップルストアに限らず、売れたソフトのパクリゲームが物凄い数出まくる混沌の状態が、携帯ゲーム業界で氾濫しています。「パクって収益化なんて無理じゃね?」と去年の段階で言われていましたが、やっぱり無理だったんでしょうね。
 
■日本市場に大異変 「NTTドコモ」が、ソーシャルゲームに参入

NTTドコモ(9437)がソーシャルゲームの配信プラットフォームに参入の報道について」
バンダイナムコゲームスセガー、カプコンタイトー、KLabなど十数社からゲームの提供を受け、11月下旬をめどに配信を始める。KDDIなど他社の携帯電話からも利用可能にする方針。
これはSAP(コンテンツ供給者)にとって、DeNAやグリーに配信するよりも1.6倍収入が増加し、営業利益は倍以上と、東海東京調査センターでは計算。
http://www.nsjournal.jp/news/news_detail.php?id=312569

スマホの普及で、いろんな意味で出遅れていたドコモがついに動きました。ゲームソフト供給側にとっては、グリーやモバゲーが間に入らないことで、当然利益が上がり、NTTドコモにとっても、自前でやった方が利益が上がると言う、正に「ウィンウィン」の関係であります。今まで5割しか貰っていなかった利益が、8割に跳ね上がると言うんですから、圧倒的な差です。価格競争が始まったら、そのシステム上、グリーやディーエヌエーは、NTTドコモに勝てないでしょう。
この報道を受けて、グリーとディーエヌエーの株価は急落。収益を支えていた日本市場に火がつくことになりました。もう日本での収益が削られるのが早いか、海外市場の収益化が早いか、という競争です。以前から叫ばれていた「海外市場の今年中の収益化」は努力目標ではなく、絶対到達目標になったと言えるでしょう。
あと半年におけるグリー、ディーエヌエー陣営の奮闘に注目したいと思います。