沖縄と韓国の民意は日本人にとって同等か 外国人差別に繋げる暴論に反論する

最近、韓国を擁護しようとして、無理筋な主張を行う人が多くなってきた気がします。

「徴用工判決で、なぜ韓国の民意を無視するのか?」2018/11/26
しかし日本では、「国家と個人が対立したら個人の側に立つべきだ」とするリベラル派まで、元徴用工に寄り添った判決を否定し、韓国の民意を「国民情緒法」などと揶揄しているのです。大法院の判決で日韓関係が揺らぐのが問題なら、辺野古への移転に反対して日米関係を危機にさらすことも同じように問題でしょう。
私の疑問は、「沖縄(日本人)の民意は大切で、韓国(外国人)の民意はどうでもいい」というのは、外国人差別ではないか、というものです。それとも、沖縄の民意は正しく、韓国の民意は間違っているという決定的な理由があるのでしょうか。
https://news.yahoo.co.jp/byline/tachibanaakira/20181126-00103723/

そこら中に突っ込みどころがあるので、問題を絞って検討していきましょう。
 
■日本国民に他国の民意を重視する義務は無い
超根本的な話ですが、日本人に他国の民意を重視する義務はありません。むしろ日本人が日本人の民意を重視するのは、当然の権利であります。今、アメリカとメキシコの国境で、大変な騒ぎが起きております。

「「キャラバン」国境へ、米当局 検問所を一時閉鎖」
メキシコ・ティファナで25日、中米諸国から北上してきたキャラバンおよそ500人が、「我々は犯罪者じゃない。国際的な労働者だ」などと叫び、アメリカ・カリフォルニア州との国境の検問所近くまでデモ行進を行いました。
これを受けて、メキシコ政府は不法に国境を越えようとした人たちを国外に追放すると発表しました。
ティファナには、およそ5000人のキャラバンがすでに到着しているうえ、後続のキャラバンも近く合流するため、集団は9000人ほどに膨れ上がる可能性も出ていて、ティファナ市は「人道的危機だ」として、国連に支援を求めています。
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3533730.html

メキシコが国外追放を叫んでどうすんだ、という気もするニュースです。上の記事の動画も見ると、もう既に収拾がつかない状況ですね。
で、まさに中南米の人たちは自分たちを「国際的な労働者だ」(外国人差別をしないでアメリカに入国させろ)と叫んでいて、アメリカ側は国境閉鎖して受け入れない姿勢を示しているわけです。要するにアメリカは、中南米の人たちの民意を無視して国境閉鎖する権利を、今まさに行使しているのですね。ここで「アメリカは民意を汲んで、じゃんじゃん入国させろ」と叫ぶのは、暴論であります。
とはいえ、「自国は自国、他国は他国」と問答無用にぶった切るのは、「殺伐に過ぎる」と言いたいのであれば、私も同意します。対等な国として、それぞれの民意を尊重し合い、互いに利益になるよう「Win-Winの関係」を作っていくのなら、それに越したことはありません。
でも現状、韓国との間でその関係は無理であります。なぜなら、当の韓国自身が日本との対等な関係を望んでいないからです。にも関わらず、「韓国は日本の民意を無視し、日本は韓国の民意を重視せよ」というのは、やはり暴論と言う他ありません。
 
■国際条約は、国内法に勝る
次に、日韓基本条約という「国際条約に反する民意」と、沖縄のあくまで「日本国憲法81条に反する民意」という差があります。国際条約とその国の憲法や国内法とでは、重みは圧倒的に国際条約の方が上です。なぜか韓国人の多くが理解できていませんが、国内法の決定は、国際条約の決定を上回ることはできません。
わかりやすい例が、既にあります。対馬の盗難仏像です。

対馬の盗難仏像めぐり韓日市民が大討論会を開催」2018年11月27日
今月24日、釜山(プサン)で「瑞山(ソサン)浮石寺(プソクサ)金銅観音像を元の場所に奉安するための韓日研究者討論会」が文化財還収国際連帯など韓国市民団体の主催で開かれた。
討論会を主催した釜山外大の金文吉(キム・ムンギル)名誉教授は「韓国と日本の歴史問題の一つである仏像返還について両国市民が議論する意味深い場所だった。問題の早期解決のために、来年上半期に瑞山浮石寺対馬観音寺の住持が日本で顔を合わせる会合を推進する」と述べた。
https://japanese.joins.com/article/513/247513.html

討論なんかしても全く解決しないでしょうが、こんな討論会が行われたのですね。はっきり言って対馬観音寺はこんな討論会に出る必要は無いでしょう。単に「関係者からも意見を聞いた」というアリバイにしか使われないからです。
こんな討論なんてしなくても、既に結論は出ています。ユネスコ条約では、盗難文化財の所有権を認めていません。それどころか「返還すべし」と規定しています。

第 13 条
締約国は、また、自国の法律に従うことを条件として、次のことを約束する。
(a) 文化財の不法な輸入又は輸出を誘発するおそれのある所有権譲渡をすべての適当な手段によって防止すること。
(b) 不法に輸出された文化財がその正当な所有者にすみやかに返還されるよう自国の権限のある機関が協力することを確保すること。
(c) 亡失し又は盗取された文化財の正当な所有者又はその代理人が提起する当該文化財の回復の訴えを受理すること。

しかし韓国は、ユネスコ条約を批准しているにも関わらず、裁判で「返還しないことは適法である」と判決してしまいました。もし、日本側が韓国の民意とやらを重視してしまったら、国際条約は有名無実化、韓国側は文化財窃盗をやりたい放題になってしまいます。
韓国の「国際条約として既に結論が出ている問題の民意」と、沖縄の「あくまで国内問題。それに議論進行中の民意」とを同列に語るのは、全く意味がありません。
 
■沖縄の民意を、募集工問題と同じ形にしてみたら
募集工問題での韓国の民意を、沖縄の民意で無理やり表現してみましょう。

1 安倍首相が基地移転を強行し、アメリカへの供用を開始。
2 沖縄住民、なぜかアメリカに損害賠償要求。アメリカで敗訴したから日本で訴訟を起こす。
3 日本の最高裁判所、沖縄住民の勝訴判決を出すウルトラC
4 安倍首相、判決を尊重すると発表。アメリカに誠意を求める。

しかもアメリカは、とっくに地元住民に10億円と安部首相への詫び状を出している! マジか。信じられん!
もしかしなくても、こんなことしたらアメリカ怒りますよね? だから日本の民意が怒ってもいいのですよ。
そして沖縄の人たちは、ここまで常識はずれじゃないでしょう。もし訴えるにしても、日本政府を訴えるでしょうし、アメリカが何か言うとすれば、「安倍首相、地元住民となんとか合意しろよ」と言うだけだと思います。

文大統領が「判決を尊重する」と宣言するおかしさもここにあります。外交的な結論は一本で無ければなりません。司法や民意が政府の意向と違うなら、それを取りまとめる責任は、韓国政府にあります。日本政府ではありません。
 

「元徴用工訴訟、29日にもう1件も判決 韓国の最高裁」2018年11月24日
戦時中に名古屋の軍需工場に動員された元徴用工が、三菱重工業に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、韓国大法院(最高裁)は29日に判決を言い渡すことを決めた。大法院は同日、同社を相手取った別の元徴用工の訴訟でも判決を出す予定で、いずれも賠償を命じる可能性が高い。
https://www.asahi.com/articles/ASLCS3FSTLCSUHBI00L.html

当初次の判決は、12月5日が一番早いと思われてきましたが、11月29日に最高裁判決が出ることになっています。三菱重工が敗訴する可能性大ですが、日本政府のどのように反応するのでしょうか? 注目したいと思います。