「日本が礼儀正しくなった!」日韓首脳会談での成果を確信した韓国

12月16日、3年半ぶりに局長級対話が開催されました。当初、この会議で韓国のグループA(ホワイト国)復帰が決まると報道されてましたが、予想通りそうはならず。さぞかし落胆の報道が溢れると思いきや、全くそういう報道がありません。

■「日本が礼儀正しくなった!」 大喜びする韓国
韓国の新聞もテレビも取り上げるのは、会議室の状況とか「水だけじゃなく、コーヒーも揃ってる!」って、そんな話ばっかりです。

「ホコリが溜まった倉庫→特別会議室…5カ月前とすっかり変わった日本の儀典」中央日報
同じ韓日間協議だったが雰囲気は全く異なっていた。韓国産業通商資源部と日本経済産業省間の協議のことだ。今年7月に東京で開かれた韓日実務協議と、16日に東京で開かれた両国局長級対話の雰囲気の違いを比較してみたい。
形式を重視する日本の特性上、首脳会談まであと10日も残っていない状態でこのような変化を見せたことは意味がないわけではないとの分析が出ている。
https://japanese.joins.com/JArticle/260587

 
日本が重視する「形式」と韓国の考える「形式」が、全く違いますね。
日本が重視する「形式」とは、「ちゃんと書類が揃ってるかな」とか「日付に矛盾はないかな」とか、そういう手続き上の「形式」であって、部屋の隅に椅子が積んであるかどうかとか、水だのコーヒーだのがあるかとか、そういう韓国が重視する「形式」とは違うものです。と言うか、それは日本じゃ「形式」とは言いませんね。なんて言うのかな? ちょっと思いつきませんけど。
そもそも前回行われたのは、臨時に行われた「課長級説明会」です。今回は本来定例で行われるはずの「局長級対話」です。おのずと会議室のグレードが変わるのは当然です。
飲み物については、前回は2時間程度で終わるかと思ったら、5時間も掛かって、水無しで大変だったんでしょう。今回は予定では午前10時から午後5時までと長丁場を覚悟してましたから、飲み物を用意したわけです。経験に学びましたね。しかもさらに3時間も伸びて合計10時間に及んだわけですから、担当者はホントにお疲れさまでした。

■日本側の要求を全て飲ませた10時間
さて、発表されたニュースリリースを見ると、日本側が韓国側に全ての要求を飲ませるために頑張ったことがよくわかります。

1 発表内容を同じにし、それ以外の発言を封じる
日韓双方の発表内容を見てみましょう。

「第7回輸出管理政策対話を開催しました」経済産業省(2019.12.16)
12月16日、経済産業省において、韓国産業通商資源部との間で、第7回輸出管理政策対話を開催しました。
https://www.meti.go.jp/press/2019/12/20191216007/20191216007.html

 

「(参考資料)第7回韓 - 日輸出管理政策対話の開催結果」韓国産業通商資源部
http://www.motie.go.kr/motie/ne/presse/press2/bbs/bbsView.do?bbs_seq_n=162468&bbs_cd_n=81&currentPage=1


前回の「課長級説明会」では会議後に、政府高官同士の言った言わないが起きまして、双方が非難する結果になったんですが、今回は発表内容が全く同じになり、「言った言わない」が一切起きませんでした。
これは安倍首相を待ち伏せて、勝手に写真を撮ったりした韓国側としては、凄い姿勢の変化です。

2「輸出管理」以外の言葉を使わせない
韓国側はこれまで頑なに「輸出規制」と言う言葉を使ってきました。韓国メディアに至っては「経済報復」とまで書いてる報道もあったんですが、今回の発表には徹頭徹尾「輸出管理」という言葉しか使わせていません。

3 輸出管理制度に懸念があることを認めさせる
韓国側はキャッチオール制度について、問題は無いとしてきましたが、今回の合意事項で「懸念がある」ことを認めました。まぁ、ここは「両国」となってますから、日本としてはちょっと妥協した点です。とはいえ、「対話継続」という結果しか出さなかったんですから、日本側の完勝と言っていいでしょう。
本来、日本は許可を与える側ですから、「ガタガタ言うなら許可できないが、それでいいのか」って言ってしまえるので、韓国側が全面的に引くのは、当たり前と言えば当たり前です。

■「日韓首脳会談で成果発表」
韓国側は「日本が礼儀正しくなって、和解を求めている」という立場ですから、12月24日に予定されている日韓首脳会談で、当然輸出管理の厳格化解除といった成果が出てくると考えています。

「「立派な会議室」「コーヒーも用意された」 3年半ぶり政策対話、韓国メディア「待遇」に一安心」
ソウル新聞は、
「特に日本の代表団は、韓国代表団が会議場に着席した後、席に座るなど終始丁寧な態度を見せた」
とも指摘。
同紙はこの日の社説で、首脳会談の場で「進展した成果をなすのが望ましい」と訴えている。
https://www.j-cast.com/2019/12/17375344.html?p=all

 
どっちが先に座ったかどうかなんて、どうでもいい気がしますが、韓国側の感性では「成果が出ている証拠」になってしまうんですね。

「10時間のマラソン対話の翌日…日本メディア「輸出規制すぐには撤回されない」」中央日報
ホワイト国からの除外に先立ち7月初めに日本側が実施したフッ化水素など半導体関連3品目の輸出手続き強化措置については「ホワイト国問題と比べると解決しやすい」という指摘が出ている。
首脳会談まで時間が迫っているだけに、両国政府は事前接触でこの3品目の輸出規制問題をどう解決するかに議論を集中する可能性がある。 
https://japanese.joins.com/JArticle/260609/

 
中央日報は「グループA復帰」は難しくても、半導体関連3品目は「通達」で実行できるため、日韓首脳会談で結果が出せるという立場です。「輸出管理制度に懸念がある」という結論になったのに、その辺のことを丸ごとすっ飛ばして、「手続きの簡便なところから首脳会談までにまとめろ」と言ってる辺り、何もわかってません。
タイトルで「すぐに撤回されない」となってるのに、この結論です。

12月24日の日韓首脳会談で、文大統領側が、何か劇的な材料でも提示する可能性があるんでしょうか。できるなら、とっくにやってる気もしますが。

 

■超特急で法案を提出した文国会議長

そんな中、例の「天皇は戦犯の息子」発言で物議をかもした文国会議長が、募集工(徴用工)問題解決を目的とした財団設立法案を提出しました。

韓国、元徴用工救済“噴飯法案”の中身」

元徴用工が「慰謝料」を受け取るかは自由なため、拒否した場合、日本企業への裁判や請求は続くことになる。徴用工問題の抜本的解決にはつながらない。

韓国側でも、文大統領が陣取る大統領府(青瓦台)では、文議長の法案には直接関与しない姿勢を示している。

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/191217/for1912170004-n1.html

早ければ、17日か18日に発議されるそうで、まさに超特急の法案化であります。この早さはどう考えても、日韓首脳会談での交渉材料にする腹積もりでしょう。

内容も内容ですが、問題は、文大統領がこの件について、何も発言していないことです。後々、元募集工の人から猛反対にあって撤回されても、文国会議長の責任として、片付けられる未来しか見えません。どう考えても、最後に文国会議長はトカゲの尻尾切りにあいますよね。

こんなものが取引材料として成り立つと、本気で思っているんでしょうか。韓国マスコミでは、相変わらず「不買運動で大打撃を受けた日本が、韓国との和解のタイミングを探ってる」という報道が続いており、「礼儀正しくなった日本」なら、この程度の案でなんとかなると考えているのかもしれません。

 24日の首脳会談までに何が飛び出すのか、目が離せない展開になってきました。

 

勝手なストーリーで、勝手に追い詰められる韓国 日本の韓国への忖度は逆効果

再開される「日韓局長級輸出管理政策対話」の日程が、急ピッチに整理されつつあります。

 

「韓日の輸出規制巡る協議が来月本格化 首脳会談にらみ突破口開くか」綜合ニュース( 2019.11.29)

韓国産業通商資源部は29日、輸出規制に関する韓日局長級の輸出管理政策対話の開催に向け前日に課長級の準備会合を開いたとしながら、12月4日に局長級の準備会合、同月第3週中(16~20日)に東京で局長級対話を開催することで合意したと発表した。

https://jp.yna.co.kr/view/AJP20191129001900882

12/4に準備会合、第3週に局長級対話、最終週に日韓首脳会談という流れになりそうです。

 

■自分に都合のいい報道が続く韓国

韓国側の報道は、相変わらずGSOMIA「日韓軍事情報包括保護協定)の「条件付き終了延期」によるものという報道がされており、「GSOMIAが政治的交渉カードになる」という幻想を捨ててません。引用した総合ニュースの記事の中にも、こんな記述があります。

この当局間協議は韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の条件付き終了延期を決めたことに伴うものだが、合意発表の際には日本側の「歪曲(わいきょく)」があった。

梶山弘志経済産業相が11/22の段階で、「GSOMIAは関係ない」と明言しているにも関わらずです。総合ニュースは通信会社なので、この配信記事を元に韓国各紙が一斉に報道します。おかげで韓国国民はずーっと間違い続けるというわけです。

日本側の立場は最初から明確で、局長級対話の開催は「WTO提訴の手続きを中断した」ためとしています。

「日韓、局長級対話再開へ=輸出管理厳格化は継続」(2019.11.22)

政府は22日、輸出管理に関する韓国との局長級対話を再開すると発表した。実現すれば2016年夏以来となる。韓国が日本による半導体材料の輸出管理厳格化に関する世界貿易機関WTO)提訴の手続きを中断し、問題改善への意欲を示したと判断した。ただ、輸出管理の厳格化措置は当面継続する方針。梶山弘志経済産業相は同日、省内で記者団に対し「(これまで通り)適正な輸出管理をしていく」と述べた。

https://trafficnews.jp/post/91593

なぜ局長級対話が再開することになったのかといいますと、元々韓国とは2年に一度行われることになっていたのですが、これを韓国側が拒否。さらに輸出に不適切な事例がみつかったとされ、韓国をグループA(ホワイト国)から降格させました。韓国側はこれを「不当措置である」として、WTOに提訴していたわけです。

しかしこの度、韓国はWTO提訴を中断し、局長級対話に応じることを宣言しました。一応「不当措置である」という主張を引っ込め、局長級対話を受けるという、日本の要求に応じた形になります。つまりGSOMIAは関係ありません。

これに対して韓国は、GSOMIA延長とタイミングを同じにすることで、意図的に混同させ、韓国世論の非難を回避しようとしたわけです。いや一般市民はともかく、マスコミも揃いも揃って、「WTO手続き中断の意味は何か」と考えないのは、何故なんでしょうね? 不思議だと思わないんでしょうか。

 

■自分に都合のいい言葉が続く韓国政府

「輸出規制撤回以外にGSOMIA延長は無い」と叫んできた韓国政府。それが崩れ猛批判が続いています。たかが局長級対話をやるだけのためにGSOMIAを延長したと言うわけでにはいきませんから、「局長級対話=輸出規制撤廃」と関連付けています。

しかし日本の対応はそうなってません。

 

「韓経:日本「韓国、ホワイト国復帰に数年かかる」…青瓦台「長くは待てない」警告」

日本政府はホワイト国復帰の条件として▼2国間政策対話が開かれていないなど信頼関係が損なわれている▼通常兵器に関する輸出管理の不備▼輸出審査体制、人員の脆弱性--の3点の改善を主張する予定だという。これら条件は日本が持続的に要求してきたものだが、韓国政府は認めなかった内容だ。経済産業省の保坂伸貿易経済協力局長はこの日、自民党の会合で「3つがクリアされない限り、ホワイト国に戻すことはない」と述べたという。

産業通商資源部の関係者は「日本の一部の当局者の発言に関する報道を深刻に受け入れる必要はない」とし「対話をすることにしたので、日本の輸出規制の根拠を確かめ、お互い合意点を見いだす過程が重要だ」と述べた。

https://japanese.joins.com/JArticle/259972

韓国政府側は「日本の一部の当局者」などと言って問題の矮小化を狙ってますが、「政府の姿勢を、経産省の局長が自民党の会合で説明した」という報道なわけですし、発言した保坂伸貿易経済協力局長は、まさに担当者であります。韓国政府の対応は、目と耳を塞いで、「あーあー聞こえないー」とやってる子供みたいです。

とはいえ、さすがにこのまま局長対話に突入したら、何も解決しないと悟ったんでしょう。韓国政府は輸出管理部門の組織拡充に手を付けました。

 

「韓国、輸出管理を強化」日経新聞(2019/11/30)

韓国政府は輸出管理体制を強化する。安全保障にかかわる戦略物資の輸出について、審査を担当する専門部署の職員数を2020年1月1日付で5割増やし45人体制にする。

政策対話の再開と管理体制の拡充で2点は対応が進むが、軍事転用可能な部品や素材を韓国が輸出する際の審査体制である「キャッチオール規制」では見解の相違が残る。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52785000Z21C19A1MM8000/

 45人でもまだ少ないと思いますが、取り組みが始まったことは間違いありません。ただ肝心のキャッチオール規制について、まだ渋っているようです。今までは違反した企業名すら公表していませんからね。もっとも、もし公表が始まったら、日本どころか世界中から行政処分を食らいかねないので、大変な話になるのですが。

 

■日本はやるべきことを淡々とやればいいだけ

現在のところ、日本政府は一貫した態度で、この問題に取り組んでおり、結果的に韓国側がひたすら現実に裏切られる状況が続いています。日本はこのまま姿勢を変えなければいいだけなのですが、自民党内には韓国への配慮を求める声が出始めているようです。

自民党旭日旗決議」推進…一部では「韓国のGSOMIAの傷に配慮を」」

自民党内では「日本はGSOMIAで外交的に勝利した。あえて傷口に塩を塗る必要はない」という意見もあり、

https://japanese.joins.com/JArticle/260078/

GSOMIAで勝利したのはアメリカで、日本は勝利も敗北もしてません。頑張ったのもアメリカじゃないですか。

そもそも募集工(徴用工)問題や従軍慰安婦問題、レーダー照射問題などなど、まだ何も解決したものはないんですよ。それどころか募集工(徴用工)問題の現金化措置は今月か来月にも開始されるかもしれないわけで、今まさにこっちに斬り掛かって来ている相手です。そういう変な忖度をしてきたからこそ、今の状況があるのではないでしょうか。

どうも自民党内には、「今のこの状況を導いたのは自分たちだ」という自覚の無い人が残っているようです。政治家が危機感を持たないと、外務省を始めとする役所も動いてくれませんよ。やっと過去の清算ができる環境が整いつつあるのです。足を引っ張らないよう、気を引き締めていって欲しいですね。

 

 

 

 

<GSOMIA>支持層猛反発に揺れる文政権 12月の首脳会談が天王山に

11/22に急転直下で更新されたGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)。破棄によって韓国が終わるんじゃないかと思っていたため、この土壇場の更新発表はびっくりであります。韓国側でも破棄の決断が大勢だったため、午後6時のニュース番組で解説者が絶句する場面がありました。

■勝利宣言するも、支持母体から批判の嵐

「条件付き更新」という発表も分かりにくかったためでしょう。当初の反応は、批判すればいいのか喜べばいいのか、どっちかわからないという感じでした。
大統領府はGSOMIA更新を「日本側が3品目の輸出規制に対する、再検討の意向を見せたため」と発表し、「文政権が日本に勝った!」という世論形成を図ります。

青瓦台「日本、輸出規制再検討の意向見せGSOMIA終了延期」(2019.11.24)
青瓦台(チョンワデ、大統領府)は23日、韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了延期決定の背景を「日本が3品目に対する輸出規制措置再検討と『ホワイト国』の意向を見せたため」と明らかにした。
https://japanese.joins.com/JArticle/259881/

 
がしかし、日本側の発表の詳細は、韓国側の期待を裏切るもので、文政権の支持母体である政党や労働組合が、揃って非難声明を発表する事態になっています。
それだけでなく、支持母体はかなり「反米傾向」が強く、「アメリカの圧力に屈した」という形にも納得していません。

「「米国の圧力に屈した」!文政権のGSOMIA破棄中断に支持層が猛反発!」
「民主労総」は「(文在寅政権は)安倍政権とペンタゴン、さらには(GSOMIA破棄撤回を求めて断食中の)黄教安(自由韓国党代表)に屈服した」と怒りを露わにしたが、「韓国進歩連帯」や極右の「ウリ共和党」と真逆の左翼政党である「民衆党」もそれぞれ「米国の不当な強圧に屈服し、屈辱的にもGSOMIAを延長させてしまった」と、文政権に憤りをぶつけていた。

https://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/20191124-00152230/

 
今の韓国が、アメリカ無しに到底成立することはできないと思うのですが、なんでこんなに反米団体が増えているんでしょうね。

■日本批判で矛先を逸らそうとするが、失敗
盛り上がる批判に、大統領府は日本の報道を問題にしようとしました。

「韓国大統領府、GSOMIAの歪曲報道で日本から「謝罪あった」
日本と韓国のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の維持をめぐり、韓国政府の高官が「日本は合意内容を意図的に歪曲(わいきょく)して発表した」と批判していた問題で、韓国の青瓦台(大統領府)は25日午前、「日本から謝罪があった」と明かした。
https://www.wowkorea.jp/news/japankorea/2019/1125/10246099.html


日本人なら、今のこの流れで「日本政府が謝罪することは無いだろうな」と感じると思いますが、日本側の「輸出入問題にかかる課長級会議」について「GSOMIAと全く問題がない」と言い切ったことに関して、「謝罪があった」と政府高官が断言してしまいます。
当然のことながら、日本側は即座にこれを否定。

「菅官房長官「政府が韓国に謝罪した事実ない…非生産的なので対応しない」」2019.11.25
菅義偉官房長官は「謝罪をしたのは事実か」という日本記者の質問に対し、「韓国側の発言一つ一つにコメントや対応をすることは生産的でない」とし「政府として謝罪した事実はない」と述べた。また、「韓国政府は日本が輸出規制を撤回することにしたという主張だが、撤回を検討しているのか」という質問に対し、「輸出管理の見直しは輸出管理制度を適切に運用するためのものであり、GSOMIAとは全く別の問題」という従来の立場をそのまま堅持した。
https://japanese.joins.com/JArticle/259921/


官房長官の「一つ一つにコメントや対応をすることは生産的でない」という言葉は、本当に本音だと思うのですが、韓国という国は、「反論しないのは、正しいと認めたからだ」という論理を、国民的に持っている国なのですね。たとえば、日本から謝罪があったと記者会見したユン・ドハン国民疎通首席は、こんなこと言ってます。

「日本側が謝罪していていないのなら、公式ルートを通して抗議してくるだろう」と伝えたことがわかった。
https://www.wowkorea.jp/news/japankorea/2019/1125/10246099.html

 
昔の日本なら、「個別の発言にいちいちコメントしない」として放置だったと思いますが、実はそれが韓国側に間違ったサインを与えていたのですよ。菅官房長官の言うとおり、確かに「生産的ではない」のですが、「損害を生まない」手段でもあるのです。プラスの効果は無いでしょうが、マイナスをゼロにする効果はあるのですね。

■文政権の明暗は、12月の首脳会議に
いろいろ言い合いがあったとしても、問題は結果を出せるかどうかで、GSOMIA延長の真価が問われます。その瞬間は12月に開催される日中韓首脳会議の場になりそうです。

「[社説]日本は韓日「合意」を歪曲せず交渉に誠実に応ぜよ」
今回の事態を巡って韓国内では、政府が当初からGSOMIA終了カードを持ち出したのが無理な手であり、結局日本から勝ち取った具体的なものはないという批判も提起されている。
政府がこのような酷評を落ち着かせるためには、何より今回開かれた韓日間の対話の窓口を通じて、日本の輸出規制中止などの実質的な成果を得ることが重要なことを忘れてはならない。
http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/35055.html


ハンギョレ新聞も今回の文政権の対応は、擁護できなくなりつつあります。
12月の下旬、予定では24日ごろに日中韓首脳会議が、中国四川省成都で行われます。この時に、日韓首脳会議で「輸出規制撤回と徴用工をめぐる日本側の正式謝罪」と勝ち取るかどうかと、エライ高すぎるハードルをブチ上げています。
それは無理じゃないかな、と日本人なら思うのですが、GSOMIAショックは、それぐらいじゃないと治まらない事態にまで進んでしまいました。
追い詰められた文政権は、禁じ手も含めて様々な方策で、何としても言質を取ろうとしてくると考えられます。と言うか「謝罪した」とか何とか、もうその戦いは始まっていると言えるでしょう。

さらに日韓首脳会談で「輸出規制撤廃」を現実化するために、既にこんなコメントが出ています。

「「輸出規制撤回に1カ月程度必要」 GSOMIA終了前に日本が言及=韓国政府筋」綜合ニュース(2019.11.25)

日本側は「輸出規制を撤回するなら、形式的ではあるが韓国の輸出入管理体制に問題がないことを確認しなければならない」とし、「1カ月程度の時間がかかる」との趣旨の立場を伝えてきたとされる。

この消息筋は「政府はGSOMIA終了を念頭に置いて準備してきたが、日本のこのような提案で雰囲気が変わった」と説明した。

https://jp.yna.co.kr/view/AJP20191125003100882

「形式的に一か月程度手続きの時間がいる」と言ってきたため、GSOMIA更新をおこなったという主張です。

しかし本来、グループA(ホワイト国待遇)にするためには、厳格な輸出管理措置の規則の徹底や、運用実績がないと認定されません。にもかかわらず韓国は、規則の徹底に関して「自分は問題ない」と非を認めていませんし、運用実績に関しては、まだ数えるほどしか許可されていない状況です。

これまでの経緯を考えると、日本側が「形式的に1か月」なんて言うとは、到底考えられません。まぁ、日韓首脳会談で何としても結果を出さなければならない韓国側の、足掻きなんでしょう。

こういう報道に、いちいちコメントをするのは実に非生産的かもしれませんが、これからの1か月はその対応が必要な期間なのです。日本側は「非常事態」と考えて、きめ細かい対応をしていって欲しいですね。 

募集工(徴用工)の売却措置も12月になりそうです。
日韓関係は、いよいよ天王山が近づいてきました。

<暴走韓国>対韓輸出のせいで、日本企業の利益が激減と大喜び 一方韓国LGが大量不良品の危機

5か月目に突入した対韓輸出管理の強化。「輸出規制によって困っているのは日本!」という記事が、相変わらず韓国で流れています。

フッ化水素世界最大手ステラケミファ、営業利益が10分の1に」2019年11月11日
高純度フッ化水素の世界市場でシェア70%を占める日本企業、ステラケミファは7ー9月期の営業利益が前年同期の10分の1にまで激減した。日本政府が韓国へのフッ化水素輸出を規制したことで、業績が悪化するというブーメラン効果を生んだ格好だ。
https://news.livedoor.com/article/detail/17362287/

 
今回取り上げられたステラケミファは、記事にもある通り、高純度フッ化水素の最大手の一つです。四半期決算の数字はかんばしくなく、株価もさぞ下がったろうと思ったら、メディカル系で新薬を発表して逆に上がってました。決算報告を見ると、日本やアメリカの半導体工場が立ち上がってくるので、来年以降に業績回復してくるという見方のようです。
危機が伝えられていたジャパンディスプレイに、アップルが資本投入するニュースがあったり、半導体周りは地下変動が進んでいます。そんな中、LGディスプレイのニュースが駆け巡りました。まだ日本語の記事が出てきていないので、翻訳します。

iPhone向け有機ELに大量不良品の衝撃

LGディスプレーiPhone 11向け有機EL(OLED)品質不良発生 9月に供給「ゼロ」レベル」2019.11.8

LGディスプレーにおいて、iPhoneに供給されるOLED(有機発光ダイオード)パネルに、品質問題が発生していたことが分かった。 8月中下旬から9月までの、1カ月以上生産された全量が、廃棄されたものと把握される。
LGディスプレーの内部事情に詳しい関係者は「9月に問題が生じたiPhoneに置いて、LGディスプレー側の責任で見る雰囲気が強い」とし「問題が生じた製品は全量廃棄されるのが原則であるだけに、損失が避けられない」と述べた。
http://daily.hankooki.com/lpage/ittech/201911/dh20191108114711138240.htm

 
韓国では、フッ化水素管理強化に関して、「国産化切替えに成功した」というニュースが、何度も大きく取り上げられました。「日本の『報復』に完全抵抗した韓国は凄い!」という記事が溢れかえっています。

その「国産化」の影響なのかどうかは不明ですが、LGディスプレイiPhone 11向けに受注した有機ELが、ひと月分を丸ごと廃棄という、衝撃的なニュースであります。その責任として、LGディスプレイが追及されていると言うのですね。アップルが資本投入を始めた理由がこの辺りにあると、なかなか問題は深いことになります。


ですが、今回報道された品質問題に関するニュースも、大手の報道を待ってたんですが、なかなか報道されません。
しかし、今回のような事態はアップルの商品展開に影響が出る可能性があるわけで、「見なかったらなんとかなる」とはならないと思うんですが、どうなんでしょうか。日本人から見ると、「そもそもそんなに簡単に国産化できるなら、今までなんでできなかったのか」という突っ込みが入るところですが、残念ながらそういう報道は韓国マスコミに出てこないのが現状です。


GSOMIA終了の期限が11/23 0:00に迫る韓国。都合のいいニュース報道は結局、国民に損害を与えることにしかならないと、韓国マスコミは気付くことはできるでしょうか。
まぁその危険性は、日本も同じことですけど。

逆切れする韓国 文大統領親書への無反応を「無礼だ!」

10月24日、韓国の李首相と安倍首相が一年ぶりに会談を行いました。日本側の報道は総じて冷静。過度な期待はしない報道が目立ちました。

 

「日韓、展望なき対話継続」日経新聞2019/10/25)

安倍首相は元徴用工訴訟で日本企業に賠償を求めた韓国大法院(最高裁)判決を巡り「国際法に明確に違反している」と是正を求めた。李首相は日韓請求権協定を守っていると主張した。日韓両政府は対話を継続するが、関係改善は見通せていない。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO51355140U9A021C1EA2000/

 また注目された文大統領からの親書も、何の解決策を示す者でなく、肩透かしな内容に終わったようです。

 

李氏が示した文(ムン)在寅(ジェイン)大統領の親書は「日本は北東アジアの平和のために協力する重要なパートナーだ」とし「懸案が早期に解決されるよう努力しよう」と呼び掛けているというが、当事者意識がある内容とは思えない。

https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/960309

 福井新聞の社説ですら、この手厳しい評価ですからね。しかし、韓国側では全く違う期待を寄せていました。

 

■「親書は韓国の誠意」という『とてつもない』意識の差

韓国側の報道では、日本は不買運動で経済が大打撃を受けていることになっており、さらに当ブログで取り上げたとおり、「二階発言などからアメリカが仲裁に出てきた」と分析していました。

だから李首相が即位の礼に出席し、さらに安倍首相に親書を渡せば、日本はそれをきっかけにして、韓国の協議に応じると見ていたのです。

 

「「安倍政権が変わることを」…韓国政府が“制限的な期待感”」2019/10/21

韓国政府の最高幹部の一人であるイ首相が“天皇即位の礼”に参席すること自体、また 文在寅ムン・ジェイン)大統領の親書まで持参するということ自体が、我々としては(日本に対する)対話の意志をみせていることであるというのが青瓦台の認識である。

https://www.wowkorea.jp/news/korea/2019/1021/10243846.html

アメリカが出てきた。良かった、よかった」というわけで、韓国では李首相の訪日と親書があれば、問題解決されるという報道が山のように溢れていました。

日本と韓国間にあるこの意識の差は、本当にここしばらくマリアナ海溝より深く感じます。

そして蓋を開けてみれば、結局ほとんど何も進展せず。韓国紙の日本語版ではなかなか記事になっていませんが、その衝撃度は凄いものがあります。

 

■「安倍首相は無礼である」

一例を出しましょう。以下のサイトは韓国の報道局SBSの公式サイトです。実際に報道されたニュースの、文字起こし記事ですね。

 

[アンカー]
韓日首脳会談で、李洛淵首相と安倍首相は「疎通」に共感しました。もちろん疎通の必要性に対して両国が感じる温度は冷たくはありますが、 今日(25日) 日本報道を通じて知られた安倍首相の言動は、一方疎通を越えて、無礼でした。

(中略)


 [記者]
チョ・セヨン外交部次官は、今日のラジオでのインタビューで 「解決案のようなものが用意されなければ、首脳会談は容易でない、という立場を日本は持っている」と明らかにしました。次官は 「日本はすぐ首脳会談ができる思っていない」と言いました。
総合して見れば、安倍首相は私たちの方から徴用問題の解決なしには、問題解決の意志がないということを再び確認したように見えます」。

https://cnbc.sbs.co.kr/article/10000959900

無礼って言っちゃった。

李首相がわざわざ日本に行って、文大統領の親書まで渡したのに、今までの態度と全く変えなかった。なんという無礼な態度だ、というわけですね。

他の様々な報道を見ても、親書で何も状況が変わらないということが、本当に衝撃だったんだなと感じます。

GSOMIAの失効する期限が、11月23日に迫っています。アメリカからの圧力がこれから本格的になるにつれ、韓国も切羽詰まってくるでしょう。日本の冷静な対応が求められます。

ですが、共同通信が、スクープ記事を流しています。これどこまで本当なのでしょうね。

 

「日韓、「徴用工合意」へ検討着手」2019/10/28

日韓両政府が元徴用工問題を巡り、事態収拾に向けた合意案の検討に着手したことが28日、分かった。複数の日韓関係筋が明らかにした。これまでの協議で、韓国の政府と企業が経済協力名目の基金を創設し、日本企業も参加するとした案が浮上。1965年の日韓請求権協定で賠償問題は解決済みだとする日本政府の立場を踏まえた考え方とみられる。

https://this.kiji.is/561493460296647777?c=39546741839462401

こんな基金を作ったとしても、文政権の次の政権で、「真正性がない」とかなんとか理由をつけて、なかったことになるのは目に見えているのですが、本気でしょうか。「経済協力名目では謝罪していない」って言って、「慰安婦合意」と全く同じ展開になりますよ。

今は焦って動くことは無い状況だと思います。今後100年先を考えて、正しい選択をして欲しいですね。

「GSOMIA継続で輸出管理撤回を引き出せ」 相変わらず韓国は暴走中

10/22に行われる「即位礼正殿の儀」。韓国の李洛淵首相が参列することが決まっていますが、このタイミングを利用して、日韓関係を『正常化』しようと頑張っているようです。
 
■安倍首相の「韓国は重要な隣国」発言に色めき立つ
10/16の参議院予算委員会で行われた安倍首相の発言を、韓国各紙は一斉に報道しました。

「安倍首相、李洛淵首相の訪日控えて「韓国と対話継続しなければ」」中央日報(2019.10.17)
たとえ短い分量ではあるものの安倍首相が対話の必要性に言及したのは、今月22日に李首相が徳仁天皇即位式への出席を契機に22日から24日まで訪日することに先立ち、韓日関係改善の必要性が提起される日本国内の世論を意識したものとみられる。
https://japanese.joins.com/JArticle/258630

日本にそんな世論はあったかな? と思いますが、安倍首相が韓国との対話の重要性について発言したのは、久しぶりですので、その理由を探さないといけないわけですね。
もともと、李洛淵首相を「知日派」として日本が期待しているという認識が、韓国にはずっとありまして、そういう報道がたくさんありました。

「李首相が天皇即位の礼に参列へ、日本で期待感」東亜日報(2019.10.15)
李首相が5月中旬、「司法手続きが行われているのに、政府が出て何かをするのは、三権分立の原則に合致しない」とし、一部要人は失望感を示した。にもかかわらず依然として官僚社会では、「韓国で話が通じる人は李首相」という認識が強いという。
http://www.donga.com/jp/article/all/20191015/1874677/

この「日本側の『官僚社会』ってどこやねん」って思いますが、外務省なんでしょうね、おそらく。日本側としては、文大統領に期待できない裏返しの言葉なのでしょうが、韓国側はそう素直に取りません。
「一度期待外れの発言をしたのに、諦めない日本」→「日本は韓国と和解したくて、そのタイミングを探している」
と、こんな理解をするのですよ。
確かに筆者も、文大統領より李首相の方がよっぽど話が通じるだろうな、と思います。しかし、話が通じようが何だろうが、今の韓国は文大統領の独裁状態なんですから、李首相に何か期待しても意味が無いんですよ。だから「李首相に期待するか?」と問われたら、「文政権の間は何も期待できない」と答えとけばいいのです。そうじゃないと、今の韓国はまた変な方向に暴走するだけなんですね。

■GSOMIAは切り札足り得るのか
李首相が以前「経済報復を撤回すれば、GSOMIA破棄を再検討する」と発言したせいか、未だに韓国内ではこの二つの問題をセットにする報道ばかりです。

「韓国首相、22日に訪日…安倍氏と会談の可能性」2019.10.14
日本としても強制徴用者問題の解決法が用意されないまま「貿易規制(ホワイト国リスト排除)-GSOMIA(韓日軍事情報包括保護協定)」問題について話し合うことを負担に思ったものとみられる。
https://japanese.joins.com/JArticle/258510/

しかし、GSOMIAは当ブログで指摘してきたとおり、「軍事情報共有協定」ではありません。「軍事情報包括保護協定」です。情報の保護、つまり第三国への漏洩防止を目的にした協定です。日米韓の中でどこが情報漏洩しそうかを考えたら、韓国の足枷が目的である協定なのは明らかです。
それだけではありません。GSOMIAの更新は毎年あるんですよ。もしこれで交渉できてしまったら、毎年更新を渋って、無理難題をゴリ押しできてしまうじゃないですか。日本も、もちろんアメリカだって、そんなことは望んでいないでしょう。
ただ、既にGSOMIAは再延長済みという分析もあったりします。

「韓国、GSOMIA破棄撤回への下準備が進行中。日本に頼るしかなく、北のSLBM発射で観念=勝又壽良」
米統合参謀本部は10月2日(現地時間)、マーク・ミリー同本部議長が米国防総省で、日本の山崎幸二統合幕僚長、韓国の朴漢基(パク・ハンギ)合同参謀本部議長と1日に会い、北東アジアの平和と安定のための多国間協力を活用することで合意したと発表した。日本の防衛省統合幕僚監部も3カ国の軍制服組の会談結果を発表している。
だが、なぜか韓国合同参謀本部だけ、公式結果の発表をしなかったのだ。
https://www.mag2.com/p/money/783465/2

 2日に韓国が日本に対して、GSOMIAに基づく情報提供を依頼してきましたが、それは日米韓の軍事部門の責任者が会って、「多国間協力を活用することで合意した」と発表したせいだ、というわけですね。
これが本当なら、李首相は日本の輸出管理強化について交渉する材料自体持ってないことになるんですが、果たしてどうなのでしょうか。

■中国に全面降伏したハンギョレ
そんな中、ハンギョレ新聞がGSOMIA継続できない理由として、「中国が怖いから」と本音をブチ撒けました。

「韓日GSOMIA終了、その先にある問題」2019-10-16
韓国は、米・日とは違い、中国を現実的脅威としては認識しない。たとえ潜在的な中国脅威を認めても、現実的に中国を敵対視するいかなる集団防衛体制にも参加できない。中国を頭に載せて生きる朝鮮半島地政学的運命といえる。
http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/34666.html

 「地政学的運命」と言ってますけど、それって「永遠に中国に逆らえないことを運命として許容する」ってことですよね。潜在的な脅威を認めても、現実的な脅威としないなんて、中国に対する土下座ですよ、土下座。
日本やアメリカに対して強硬な姿勢を貫いてきたハンギョレ新聞が、中国に対してここまで低姿勢の記事を掲載するなんて、ある意味凄い話です。日本人もアメリカ人も、到底理解しにくい思考でしょう。
でも理解しにくくても、「韓国はそういう国なのだ」と納得するしかありません。アメリカが遂に韓国を切る決断をしたという報道がチョロチョロ出てきていますが、日本も韓国の位置づけを再設定して、対応していく必要があるのだと思います。
李首相への期待のように、「韓国の覚醒」に望みを持つような姿勢が、相変わらず外務省内部にあるようですが、そろそろ目を覚ますのは自分たちだと気付いて欲しいものです。

<輸出管理強化3か月>韓国の焦りと二階幹事長の余計な一言

7月から行われた輸出管理強化から、丸3か月が過ぎました。サムスンやSKなどの韓国企業にとって、備蓄していたフッ化水素の量が、枯渇する時期であります。
ただ、日本で9月26日に相次いで報道された、「フッ化水素の8月輸出はゼロ」報道については、経産省が否定する発表を出しています。

「主要メディアの「8月の韓国向けフッ化水素輸出ゼロ」の報道を経産省が否定」2019年9月30日
日本の経済産業省は、日本の主要メディアが軒並み「8月の大韓民国向けフッ化水素輸出がゼロ」と報道したことにたいして、この報道を否定するとともに、経済産業省として8月中も許可の対象となるフッ化水素大韓民国に輸出されていることを確認していることを発表した。
https://portal-worlds.com/news/asean/19252


財務省が発表する貿易統計と、経産省の輸出品目には、相違があるそうで、管理対象のフッ化水素案件が「再輸出品」という項目に入っていることがあるのだとか。上の記事では、「貿易実務に携わっているなら、通常認識していること」としていますが、わかりにくい話であります。

■肝心の液体フッ化水素の輸出がゼロ
一方、韓国の産業通商資源部は、10月1日に「日本の対韓国輸出規制発表から3カ月経過に関する立場文」を発表しました。
これによると、韓国側が敏感に反応しているのは、エッチングガス(気体フッ化水素)ではなく、ハイエンド半導体製造に使用される「液体フッ化水素」です。

「韓国政府「日本の輸出規制、非常に差別的」…3カ月間で液体フッ化水素の輸出許可0件」2019-10-02
「特に、半導体用の液体フッ化水素の場合、国連の武器禁輸国に適用される9種の書類提出を求めているうえ、数回の書類補完を理由に申請後90日が経ったにもかかわらず、まだ一件も承認されていない状況」だと明らかにした。
http://japan.hani.co.kr/arti/economy/34533.html

大事なのは後段です。「数回の書類補完を理由に」ということは、追加書類を数度求められた上、その書類が提出されていないことを理由に、審査が止まっているってことです。
このことについて、立場文は「4大輸出統制体制に加入していない国よりもさらに差別的に制度を運営している」と指摘しています。
つまり、経産省パブリックコメントまで集めて改正した輸出貿易管理令が、クリティカルに液体フッ化水素を直撃しているんですね。

では、その改正とはどんなものだったのでしょうか? 制度変更の文章は非常に分かりにくいので、簡単にまとめますと、以下のように申請書類の「様式6」が追加されました。


1 貨物の需要者の当該貨物の調達実績(過去3年間)
2 最終製品の生産状況(過去3年間)

要するに、「液体フッ化水素の調達実績と、それによって製造された製品リストを過去3年間分出しなさい」というわけです。もちろんこれは、韓国だけじゃなく全ての国の申請者が提出を求められますから、そこは差別的ではありません。実際「立場文」も「運営」を問題にしています。
おそらくですが、単に「リストが埋まっていればいいのか」、それとも「グラム単位で整合性を求められているのか」、の違いを言っているのでしょう。
製造に使われても、製品自体のロスも出るでしょうし、保存が難しいフッ化水素の廃棄分も出るわけです。そこで製品のロスが出たなら、その資料。廃棄が出たら産廃処理証明書を、全て求められてるのかもしれません。

実際、本当に資料請求されたら、大変な事務量になります。提出する方だけでなく、審査する側の手間も、半端ありません。
でも、未だに1件も審査を通過していないってことは、やってるんでしょうなぁ、それを。この審査の厳格化を「差別的」とするかどうかは、見解の相違ということになるんでしょうが。
結果、待ち切れなくなった韓国企業は、国産フッ化水素の使用を開始したようです。

「日本がフッ化水素の韓国向け輸出を許可 規制強化後2例目」2019年10月2日 
SKハイニックスは、規制強化後まだ1回も輸入されていない液体のフッ化水素については「1日に一部生産ラインに国産の液体フッ化水素を投入した」と明らかにした。
 先月初めにはLGディスプレー、サムスン電子などが日本の高純度フッ化水素の一部を国産品に切り替えている。https://news.livedoor.com/article/detail/17170009/

影響の少ない一部分に投入していた国産フッ化水素を、韓国企業がこの10月からどのように扱っていくのか、注目です。

■二階幹事長、その考えはもう古い
9月28日、読売新聞の二階幹事長のインタビューが、韓国で話題になりました。なにしろ各紙一面トップですよ。

「二階幹事長の発言「韓国に譲ろう」 日本ではベタ記事、韓国紙は1面トップの大騒ぎ」2019/10/ 1
『円満な外交が展開できるよう、韓国の努力も必要だが、まず日本が手を差しのべて、譲れるとことは譲るということだ』と述べた。二階氏は韓国政界に独自の人脈を持つ知韓派として知られる。『我々はもっと大人になって、韓国の言い分もよく聞いて、対応していく度量がないとダメだ』とも語った」
https://www.j-cast.com/kaisha/2019/10/01368865.html

元記事は、二階氏の政治姿勢に関するインタビュー記事で、タイトルも「二階氏、課題の山 改憲論議都知事選対応 党内融和に腐心」という政治全般に関するものです。

その中で韓国に触れたのは、たったの16行。韓国各紙が取り上げなかったら、誰も気付かなかったんじゃないかっていう記事です。

そこで言及された「韓国に譲って経済がうまくいくなら、譲ればいいじゃないか」という考えは、かつてなら、普通の思考だったと思います。なにしろ20年ぐらい前に、筆者も同じこと考えてましたからね。
しかし、今の日韓関係を見れば、その思考では現状維持どころか悪化の原因になってしまうのです。
実際、韓国側はこの二階発言をどう報道したでしょうか。

「観光客の急減に…二階幹事長「韓国に譲れるところは譲る」中央日報(2019.09.30)
二階氏が両国関係の改善を主張し始めたことをめぐり、「韓国内の日本製品不買運動日本旅行忌避による日本経済の打撃のため」という見解もある。韓国観光客の減少で西日本地域の経済が落ち込み、8月1カ月間の日本ビールの韓国輸出は昨年同月比92%減少した。
https://japanese.joins.com/JArticle/258051

不買運動のおかげで日本がすり寄って来た」という反応です。もうこの、「不買運動で日本がヤバい!」という報道は、韓国における日本の報道で大流行中でして、韓国報道だけ見てると、日本人はみんな安倍首相に激怒して、次の選挙では自民党は消え去るんじゃないかって感じるくらいです。もちろん単にマスコミが煽ってるだけなら、大した問題はありません。とりあえず「いつもの二階」で終わる話です。
でも、現在の色々と余裕のない韓国側はそうは取りません。韓国政府側ですら、間違ったサインとして捉えてしまっています。

韓国サイドから見ると、米国は悪化した日韓両国の仲介役を果たそうとしてこなかった。それが最近、ようやく重い腰を上げ始めたというわけだ。その米国の水面下の動きが「二階発言」という形で表れてきたと、韓国政府は見ているというのだが......。
https://www.j-cast.com/kaisha/2019/10/01368865.html?p=3

おそらく二階氏は『ごく一般的な意見』のつもりだったと思いますが、韓国政府は、「米国政府によって日本が軟化した」と見てる可能性があるのですね。日本政府としては、「韓国政府が具体策を取る」事無しに何らかの行動は取らないと、再三言ってるはずですが、またその理解が遠くなる可能性があるのです。で、何が起こるのかというと、全く関係ない国際会議で、福島原発問題を取り上げたりといった、暴走するのですよ。

幹事長という立場であるならば、二階氏はもっと余計な一言に注意を払う必要があるでしょう。その方が日韓関係の解決は、どんな形であれ、早まると思いますよ。新たな日韓関係のために、まっすぐ進んでいって欲しいですね。