崖っぷちのソニー

エントリの表題は、実は「週刊東洋経済」(2009年1月31日)の特集の表題です。既に、社外秘で行われたアンケート結果が報道されていますね。
「購入したソニー製品が予定より早く壊れてがっかりしたことがありますか?」
という設問に、ソニー社員が85%も「ある」と答えているというアンケートです。

ソニーより製品品質が高いと思うメーカーは?」という設問に、4000人(約40%)の社員がパナソニックを上げています。さらには「約半数の社員が、ソニー製は競合他社より、耐久性・信頼性の面で劣ると答えている」

他にもこの特集は見逃せない事実のオンパレードで、個人的に衝撃を受けたのは、対iPod戦略に関する記述です。

冒頭のカンファレンスに先立つ16日。ある《敗北宣言》がひそかに発表された。「《iPod王国》に今後、ウォークマンは戦いを挑まない」。オーディオ・ビデオ事業部の新年キックオフ会議で、事業部門の幹部がそう明らかにした。
(中略)今回の宣言で、今後ソニーは米英などiPodが圧倒的に強い市場には、ウォークマンの新製品を大々的に投入しない公算だ。(中略)同時に米国だけで販売してきたiPodiPhone接続型のスピーカーや目覚まし時計、ヘッドフォンなどを、日本を含む各国市場で順次展開する。これまで妥当すべきライバルと位置づけてきたiPodが、今後は部分的ながらもソニーのビジネスの拠り所となるのだ。

こりゃまたびっくり。ソニーの生ける伝説、盛田氏のアイデア商品「ウォークマン」は、事実上の撤退。俗に言う『フェードアウト』が決定していたのです。2008年第3四半期の業績発表会の資料によると、ソニーの赤字の約7割がソニーエレクトロニクスであり、テレビ事業の採算悪化です。公開された業績発表会の質疑応答によると、高値で買いすぎた液晶パネルが原価を押し上げ、価格競争で大きく利幅が減ったことが大きな原因とのこと。週刊東洋経済の特集では、この状態を抜け出すための七転八倒が描かれています。

品川本社の会議室。集まったテレビ事業本部の若手・中堅エンジニアらは、時折ため息を漏らしながら真剣に耳を傾けた。この日開催されていたのは、テレビ技術の社内フォーラム。テーマは「韓国サムスン電子の徹底解剖」。ソニーのテレビ事業は、サムスンから学ぼうとしている。

特集のコラムの1つ。覆面座談会では

パナソニックの製品を分解すると、現状では負けを認めざるを得ない。驚くほど低コストの汎用部品を使って、ソニー以上の性能と品質を実現している」

と語る技術系の社員の言葉が胸をつきました。
思えばPS3も、何十倍もの拡大画像で比較しないとわからない程度しか、Xbox360との性能差を出せていません。Xbox360が1年先行しているはずにも関わらずです。
しかも中鉢社長の言葉もかなり辛らつ。

「本当にキャッシュを生める研究なのか。投資に無理、無駄はないか」。中鉢社長の言葉にはセルからの教訓がにじむ

これはつまり、ソニーの中でCELLは無理、無駄な投資の代名詞となってしまっているということでしょうか?
PS3の逆ザヤ状態は、2009年度末まで続くと予測されており、売れば売るほど赤字が出てしまう状況を改善できていません。ゲーム事業の黒字は、ひとえにPS2によるものであり、そのPS2も今年に終焉を迎えることは、ソニーの業績発表会でも明らかです。

PSPは「思ったほど売れなかった」」
主な減収要因は円高,ハードウエアの販売台数減少など。据え置き機の「PS2」「PS3」やポータブル機「PSP」の販売台数がいずれも前年度同期比で減少している。ソフトウエアに関しては,PS3用は増収だったものの,PS2用およびPS2が減収だった上,円高の影響もあり,ソフト全体で減収となっている。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090129/164841/

PS2ハード 前年同月比53%減。PSPハード 前年同月比12%減
PS2ソフト 前年同月比51%減。PSPソフト 前年同月比15%減
黒字を支えてきたPS2の終焉のお陰で、これから坂道を転がるように赤字が増えてしまうことになります。なんとかなるのは、今年いっぱい。PSP2の投入も最初は赤字になるはずで、この先ゲーム事業を守ることにもなるためにも、PS3の撤退は必要なのではないでしょうか?