E3で話題をさらったモーションコントローラーの波

アメリカはロサンゼルスで、毎年恒例E3が開かれました。広告効果が疑問視されてから縮小路線を取ってきましたが、ここで再び拡大路線に転換しての開催です。

「E3プレゼンの勝者は? 3大巨頭がメディアに放ったインパクト(後編)」
http://www.gpara.com/kaigainews/eanda/2009060601/

各陣営のプレゼンに対する海外の記者たちの反応によると、もっともインパクトを与えたのは、カメラで人を認識して、その動きで操作を行うXbox360陣営の「Natal」です。次は光るコケシのような棒状コントローラーを発表したPS陣営。そして最後が脈拍センサーの任天堂陣営でした。

さて、任天堂から見ていきます。
正直、脈拍センサーは、文字通り健康市場の脈拍測定をサポートするためでしょう。Wiiを企業のメタボ対策ツールとして本格的に売り込むには、どうしても脈拍測定が必要だったに違いありません。ゲームにも取り込めるかもしれませんが、モーションプラスなどとは次元の違う製品です。まぁ王者の貫禄と言うか、今更革新的なデバイスを投入する必要はないということなんでしょうが、がっかり感は強いです。

PS陣営を見てみます。
SCEのモーションコントローラは、まだまだ実験中そのままといった製品。頭の光るコケシのようなものを2本操るのですが、正直Wiiリモコンより見た目が良くないです。もう少しデザインを気にして発表すればよかったのに、ソニーらしくないプレゼンだなと思いました。
性能自体は非常に良好。PS3の性能と後発の立場ということもあって、これぐらいは実現してくれないと困ります。ただ問題は価格でしょうね。本体同梱となっているWiiリモコンと違って周辺機器ですから、相当価格を抑えないいけません。今のソニーにそれができる余裕があるかが問題です。
と言うのも、今回お披露目となったPSPシリーズの新型「PSP GO」が2万6800円という価格で発表されたからですね。おそらくこれは、本来初代PSPが発表したかった値段なのでしょう。「空白の17分事件」のお陰で、出せなくなってしまいましたが、性能を考えれば非常に妥当な値段だったと思います。
しかしそれも当時でのことです。今この状況で従来のPSPより6000円以上も高いバージョンを出すのは、得策とは思えません。しかもUMDが使えなくなったお陰で、互換性はPS3を介したアーカイブだけという、ほぼゼロの状態です。
SCEは従来のソフトをデジタルバージョンに交換するサービスを準備*1しようとしているようですが、それでも既存ユーザーへのメリットが非常に少なくなるのは間違いありません。いっそCPUを刷新したPSP2なら、まだ理解できたのですが。ユーザーがちゃんとついて来るのか注目したいと思います。

そしてもっとも評価の高かったXbox360陣営。
確かに個々の体格関係なく人を認識し、コントローラーを持たずに遊べるのはかなり凄いです。その精度を左右するのは認識ソフトのデキにかかっていますが、今回公開されたデモだとまだまだデキは20%と言ったところ。
それがよくわかるのが、プロジェクトNatalのペイントデモです。

このデモでは、Natalを使って絵を描き、最終的にサバンナの象が描かれるのですが、よーく見ていると、現在のNatalの限界が透けて見えます。
1 最初から最後まで絵を描いていない。
 意外に思われるかもしれませんが、実はペンキを投げることしかしていないのですね。木を描くのさえ、筆を取り出して書くことをせず、ペンキを大雑把に投げているだけです。
2 象が1人で描けない。
 ペンキを投げることしか出来ないせいで、象のようなキャラクターが描けません。ではどうするか? なんとデモではもう1人呼び、影絵のように象の姿を作り、それにペンキを塗って、影絵を切り抜いた形で描くのです。PS3のモーションコントローラでは、スプレーで「E3」といった文字を書く実演デモがありました。しかしNatalのデモでは、1度として字を描くといった高い精度を発揮する実演デモはないのです。
おそらく、まだ字を書けるほどの精度が、Natalで実現していないのでしょう。ポインターが無く、カメラの認識だけでそこまでの精度を出すには、まだまだ時間がいるようです。そして、実際のゲームにおける精度もこれから先長い研究が必要になると思います。バーンアウトパラダイスをNatalで操作する実機プレイを報道陣に公開したようですが、やはり精度にはまだ研究の余地がたくさんありました。

こうして見てくると、今年のE3で話題が大きかったモーションコントローラほど実現が遠く、地味な発表ほど地に足の着いた発表だったと言えそうです。
この先Wiiを追う2陣営について、PS3の方はあのデザインがどのように妥当なデザインに落ちるのか。Xbox360の方は、いつ手袋などポイントを使う方法に転換するのか? 見定めていきたいと思います。