PSPはどこへいく――SCE社長平井氏の言葉から読み解く

11月1日に発売が決まっている「PSP go」。まず注目点は、価格が6000円以上の値上がりすることです。これだけの価格上昇を受け止めるだけの性能があるのか、平井氏のコメントも含めて、見ていきたいと思います。
1 周辺機器のコネクタ形状が違うため、従来のPSPの周辺機器が使えない。
2 携帯性を重視したため、液晶画面の大きさがこれまでの4.2インチから、3.8インチに小さくなった。
3 UMDが廃止されたので、従来のソフトがそのまま使えない。
4 アナログスティックの位置が中に移動した結果、操作性が落ちた。

1番から見ていきましょう。
 もうとにかくメモリースティックから、ワンセグチューナから全部コネクタ形状が違うので、そのまま使えません。変換アダプタ導入の検討しているという情報は出てきていますが、結論が出るまでなぜ時間がかかっているのかわかりません。こんなことは正式アナウンスと同時に、アダプタでサポートするよ、と発表されてしかるべきではないでしょうか? またBluetooth2.0の導入は素晴らしいのですが、LANはIEEE 802.11b準拠の規格のままです。UMDを廃止して、オンラインオンリーの構成にしたなら、通信規格もレベルアップをして欲しかった所です。こういうところは、DSiIEEE 802.11b/gに対応させた任天堂と非常に違いがあります。
2番は携帯性との取引ですが、これまで対抗ハードとして目されていたDSの液晶の大きさがDSiで3.25インチでしたから、差が0.5インチ程度に近づいたことになります。正直言って、0.5インチのダウンは相当小さく感じますよ。パソコンでも何でもそうですが、画面の大きさは操作性も含めて想像以上に影響がありますからね。
そして誰もが変化を求めるCPUの向上がありませんでした。CPUがバージョンアップしていれば、以上2点のスペックダウンでも、納得できるユーザーは遥かに多かったと思うのですが。この点について、平井氏は以下のように答えています。

「E3 2009特別編 SCE 平井一夫CEO インタビュー」
〜「PSP go 誕生」の狙いと「値下げなきPS3」の勝算〜
PSP goは、基本的にPSPとハードウエア構成が同じですよね。あえて「バリエーション」として開発した意図は、どういったところにあるのですか? 例えば、「タッチセンサーが欲しい」とか「グラフィックやCPUのパワーは上げるべきなんじゃないか」とか、いろんな意見があったとは思うのですが。

平井:基本的には「一貫性」、「Continuity(持続性)」のためです。当然のことながら、技術的には、タッチパネルをつけるだとか、アナログスティックをもう一本つけるだとかいったことはできます。 ただし、それをやってしまった瞬間にどういったことが起こるかというと、「PSPのソフト」ではなくなってしまうわけです。 たとえばデュアルスティックをPSP goにつけたとしましょう。PSP goユーザーの方はいいですよ。でも、すでにお持ちの5,000万台のユーザーの方に「ごめんなさい、遊べません」と言えますか?
プラットフォームホルダーの責任として、それはできないです。やはり一貫性がすごく大事。PSP goのためにつくっていただいたゲームも、オリジナルのPSP-1000で、ディスクベース・ダウンロード両方で楽しんでいただける。これが、PlaystationのDNAです。

http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/rt/20090604_212396.html

うーん。平井氏は「PlaystationのDNA」と胸を張りますが、もう既にこの段階でPSPgoは従来のPSPと別物なんですけど。そんなDNAがあったのなら、周辺機器の継承くらいは即座に表明して欲しかったですよね。
そして最も大きな3番目のトピックです。UMD廃止によって、今後ソフトはどのように販売されるのでしょうか?

−ではこれからは、基本的に「両方同時発売」と考えていいんですか?

平井:基本的には、です。ファーストパーティーはまさにそうですが、サードパーティーさんの中には、色々なビジネスプランをお持ちの方がいらっしゃいますので、あくまで彼らのご判断です。(ディスクとダウンロードの併売を必須のことと)縛ることはできないですよ。

そうかもしれませんが、やはりここは「サードパーティーにも対応してもらえるよう働きかけています」ぐらいのことは言って欲しかったですね。PSPの場合、魅力的なソフトはサードパーティーの方が多いので、非常に心配です。
さて、既存ユーザーの関心事は既に購入済みソフトが、「PSPgoでも使えるような何らかのサポートはあるのか?」でしょう。これについて情報が入ってきました。

ソニー、これまで発売された大量のPSPソフトをダウンロード販売へ」
発売済みPSPソフトのダウンロード販売は「PSP Go」が発売される前後に行われる予定で、これによりUMDで発売されているPSP向けソフトの大多数が「PSP Go」でプレイできるようになるとのこと。なお、サードパーティPSPソフトのダウンロード販売については各ゲーム会社の判断によると推測されています。
http://news.livedoor.com/article/detail/4197829/

これまたアダプターのようなものが発売される可能性があったのですが、携帯性重視のハードが、かさ張るアダプターを出せるはずがありませんよね。せっかくの特徴が死んでしまいますから。そしてデジタル変換は、無料でやるのは不可能でしょう。SCE本社に送りつけるのはユーザー側の手間と窓口の整備が大変ですし、一般の店舗に頼んだら、それこそ無料にならずダウンロード販売した方が安上がりです。しかしそれでも、やはり何らかのサポートが発表されることを、辛抱強く待ちたいと思います。

そして最後の操作性です。ご存知の通り、アナログコントーラが真ん中に位置を移しています。またそもそも大きさが小さくなったせいで、十字キーの位置が下がりました。これでどのように操作が変わるのか、最新のファミ通(2009年6月26日号)にPSPgo実機プレイの写真がありましたので、それを見てみます。
ま、予想通り操作性が落ちていることは、一目瞭然ですね。モンハンの視点変更で、アナログコンを親指の間接、十字キーを親指の先で操作していた人はもとより、人差し指で十字キーを操っていた人もPSPgoで遊ぶのは不可能でしょう。人差し指を非常に窮屈に曲げても、十字キーの上にしか届きません。この写真の状態を1時間とか続けたら、指ぶっ壊れますよ普通。

さてここまで性能を見てくると、積極的に購入するのをためらう内容が多いことがわかります。PSPgoはいったい誰をターゲットにしているのでしょうか?

「「PSP go」は「PSP2」までの中間ステップか」
平井:「私は、PSPの次のステップの進化を公式に紹介できることを喜びと思う。PSP goPSPの新しい進化であり、特にデジタルライフスタイルのために設計された。PSP goは、デジタルメディアライフに生きていて、ネットワーク経由のコンテンツダウンロードに慣れており、もはや物質的なメディア、UMDやCD、あるいはDVDなどを家やバックパックの中に持ちたいという欲求を持たない人のためのものだ」
位置づけは明瞭だ。PSP goはネットワークに接続され、コンテンツをダウンロードすることに慣れた“デジタルコンシューマ”に向けたデバイスだ。しかし、PSP goは現行のUMDドライブを持つPSP-3000を置き換えるのではない。新しいモデルの追加となる。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/kaigai/20090611_285704.html

要するに、そもそもこれまでPSPを持っていない人がターゲットなのですね。携帯を持っていて、プラスアルファを望んでiPhoneなどに買い替えを検討している人たちに、アピールしたいのでしょう。
つまり、予想以上に高い価格とか、周辺機器やUMDのサポートがはっきりしないのも、実は今のPSPユーザーに買ってもらうのは困るからと考えるとすっきり理解が出来ます。SCEとしては今のPSPをバリバリやりこんでいるPSPユーザーには、PSPgoをスキップしてもらって、近い将来出てくるPSP2を買ってもらいたいのでは、ないでしょうか?
もしそうなら、その発表はPSPgoが発売される前にしてもらいたいものです。買ってしまってからPSP2のアナウンスがあっては、ついてきているユーザーに酷すぎます。
今年の東京ゲームショー2009は、9/24〜9/27までの4日間に開催されます。タイミング的にここで発表するのが一番ドラマチックですし、ユーザーにとって被害が少ないのですが。東京ゲームショーでのサプライズに期待したいと思います。