米専門家「在日米軍の出動には日本の了解が必要」

様々な思惑が錯綜したAPECアメリカの韓国に対する態度に変化が見られたようですが、その全てが大きく報道されているわけではありません。
今回は、そういったあまり取り上げられていないアメリカの動きを、追いかけたいと思います。

韓国・聯合ニュースは12日、米国のアジア・太平洋安保研究センターのジェフリー・ホノン教授が、戦略国際問題研究所(CSIS)に寄稿した文書の中で「安倍首相が7月に参議院で『朝鮮半島有事の際に在日米軍基地から米海兵隊が出動するには、日本政府の了解を得なければならない』と発言したのは、法的に正確だ」と指摘したと報じた。
この問題について駐米韓国大使館は「在日米軍基地は、国連軍司令部の後方基地としての任務を遂行しており、日本政府が介入する根拠はない」とし、「米国政府も半島有事の際には事前協議なしに在日米軍を出動させることができると明言している」と主張している。
http://www.focus-asia.com/socioeconomy/photonews/401296/

以前、安部首相が国会答弁で、朝鮮半島有事に対応する在日米軍の派遣には、日本の了解は必要としたことについて、韓国では大批判が起きていました。
 

朝鮮半島有事に在日米軍は自動投入=韓国軍当局」
関係者は「朝鮮半島を直接防衛する役割を持つ在韓米軍が紛争地域に投入されるには韓国政府と協議し、了解を得なければならないが、在日米軍は異なる」と指摘。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/pgm/9810000000.html?cid=AJP20140716003100882

日本人としては、なんで在韓米軍の投入に韓国政府の了解がいるのに、在日米軍に日本政府の了解が必要ないのか、その理屈が理解できませんし、いつの間に在日米軍が国連司令部の後方基地と認定されたのか不思議に感じると思います。当然のことながら、在日米軍は「日米安全保障条約」に沿って駐留しているわけで、直接日本への侵略行為にならない朝鮮半島有事は派遣の理由になりません。
 
在日米軍が自動的に投入されて、日本が後方支援として勝手に戦争に巻き込まれるなら、なんのために憲法9条があるのかという話にもなります。韓国側だって、「憲法9条を守れ」と叫んでいるんですから、日本が後方支援として自動的に戦争参加するような在日米軍の自動投入なんて、「とんでもない」とむしろ拒否しなければならないでしょう。
 
■失効の「有事密約」 生きている「交換公文」
韓国側の安部首相の「了解必要発言」を軽視してきた最大の理由の一つは、アメリカと日本との間に結ばれていた密約にあるようです。いわゆる「朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動に関する密約」と呼ばれるもので、平成21年に明らかになりました。ついでにその時に、すでに失効していることを確認。現安部政権も、密約の失効という処理を継承しております。
 
一方、「岸・ハーター交換公文」の方は、正真正銘アメリカと日本の間に結ばれた協定です。
本来、安保条約とは、その5条において、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」と規定しているわけですから、自国への武力攻撃以外で行動できません。
そして6条で「日本と極東の安全のために在日米軍基地を設置する」としていますが、在日米軍基地をどう使うかは、当然5条に規定する条件が前提なのです。しかしそれでもわざわざ、「岸・ハーター交換公文」によって、基地使用には日本の了解を必要とするとダメ押しの協定を結びました。密約と違って、こちらは今も有効に機能中です。
 
それなのに、これまで韓国側は「在日米軍が自動投入される」と、主張してきました。今回、アメリカの専門家に「日本の了解が必要」と指摘されたことで、今までの強弁が否定されたことになります。
韓国のマスコミは「このような主張はワシントンの主流の見解ではないというのが外交関係者の見方だ」と火消しをしていますが、実際の運用はともかく、原則は了解が必要であることは間違いないところでしょう。
 
■在韓米軍削減と迫られる日米軍事演習の踏み絵
韓米同盟は順調だというのが、韓国の見方です。最近は少しアメリカの視線が厳しくなってきていますが、これは日本のロビー活動のせいだとしていますね。
ただ、アメリカが韓国への視線を変えつつあるのは、確かなようです。
 

「在韓米軍:韓国北部の旅団解体、ローテーション派遣へ」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/11/07/2014110701016.html

「旅団を常時配備するのとローテーション配備では重要度が違う。兵士たちの練度も違い、戦力も落ちるはずだ。これまで警察署や交番を置いて地域を守ってきたが、今後はパトカーで巡回するようなものではないか」
航空自衛隊南西航空混成団司令を務めた佐藤守・元空将はこう語る。
http://news.livedoor.com/article/detail/9446578/

つまり、これまで常駐してきた在韓米軍の一部を解体。ローテーション駐留に変更するというですね。アメリカの朝鮮半島防衛に関する大変な方針転換だと思うのですが、あまり話題になっていません。しかもこれ、前触れなくいきなり発表しました。韓国側はアメリカの方針転換について、もっと危機感を持つべきだと思いますが、問題を矮小化しようとしているのか、能天気です。
 

韓国軍関係者は「第1装甲師団は寄せ集めの部隊だが、新たに派遣されるのはかねてから部隊として活動してきた旅団。かえって戦闘力が増すのではないか」と期待感を寄せている。
http://www.focus-asia.com/socioeconomy/photonews/400886/

どういう期待やねんと不思議に思うのは、間違いなのでしょうか。このアメリカの方針転換は明らかに韓国側への警告だと思うのですが、それを無視した形になると、今後更に深刻な事態に陥ると思います。 
そしてもう一つ、ニュースが入ってきました。

「韓国国防部「米の要請で日本の離島防衛訓練に参加」
国防部は12日、報道官名義のプレスリリースで「日米共同統合演習は日本本土防衛のため、日米両国が隔年で日本列島周辺において実施する統合演習だ。今回の演習に韓国軍が参観するのは米国の要請によるもので、中佐クラスの実務者が参加する予定だ」と述べた。
「キーン・ソード(Keen Sword=鋭い剣)」とも呼ばれるこの日米共同統合演習は、日本列島防衛のため隔年で行われており、韓国は2010年からオブザーバーとして参加している。 2010年に4人、12年には2人が派遣された。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/11/13/2014111301278.html

過去2回参加している「仮想敵国が中国の軍事演習」に、今回も呼ばれたよ、という記事なのですが、2年前と違い中国傾斜を強めてる韓国には、日本の軍事演習に、それも対中国のものに参加するのは簡単にはいきません。アメリカもそれがわかってて要請しているはずであり、明確な踏み絵を要求しているのでしょう。
もちろん今年いきなり不参加となれば、アメリカからの猛烈な圧力は確実なため、参加するのでしょう。わざわざ11月19日に行われる演習への参加を、こんなギリギリまで隠していたのも、中国からの反発をする時間を与えない配慮だと思われます。
ただ、韓国民の「日本の防衛演習に、なんで韓国のオブザーバーが出るんや」というもっともな疑問が大きくなる可能性もあり、この1週間は予断を許しません。
日韓関係に続き、韓米関係にも大きな亀裂が入ろうとしています。二股外交なんて相手の信用を失わせるだけという当たり前のことに、韓国は気付くことができるのでしょうか?