中国のハードランディング懸念増大 日本は助けるべきか否か

2月8日は旧正月です。これに合わせて大量の中国人が「爆買い」に訪日しています。

日本としてはまことに景気が良い話ですが、一方で2016年に入ってから中国のデフォルトリスク(クレジットデフォルトスワップ)が急騰しています。

「韓国「破綻リスク」上昇 中国経済失速に連動してCDS値急騰」

中国のCDS値も今年に入って一時133bpをつけたが、年初来の上昇率は約23%と、韓国の方が上回る。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160128-00000006-ykf-int

記事は韓国がヤバいよ、という内容です。が、上昇率はともかく、韓国のCDSはまだ「一時74bp」という値ですから、比較をすればヤバいのはもちろん中国です。

 

■外貨準備高が1か月で約1000億ドル減った中国

「中国の外貨準備高、大幅減少続く 1月末995億ドル減」

中国の外貨準備高はなお世界最大で、2位の日本の約2.6倍の規模がある。ただ、15年は23年ぶりに通年で減り、減少幅は5千億ドル以上に達した。4兆ドル近くにのぼったピーク時の14年6月からみると、足元ではすでに約2割減った。

 ユーロ安などで評価額が目減りしたり、中国企業の海外進出の支援に活用したりした減少分はあるものの、中国の外貨準備が大幅に減っている大きな要因は為替介入だ。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM07H1R_X00C16A2FF8000/

今、中国は猛烈な資金流出が起きており、人民元の下落が起きています。日本で起きている「爆買い」だって資金流出の一端なんですね。

去年一年間で中国人が日本で使った予算は、なんと1兆円以上。「爆買い」だけで1兆円です。これが中国国内で起きるなら、何の問題もありません。市場が活性化されて中国の景気も一発で好景気です。ところがご存じのとおり、彼ら海外で使っちゃう。国内で儲けた金が、海外で使われてしまうから、国内景気がなかなかよくならない。トリクルダウンなんて嘘っぱちという状態です。

 

とはいえ、まだ3兆2309億ドル(約378兆円)もの外貨準備高がある中国です。当面大丈夫なように見えますよね。ただ、この金額が全て自由に使えるわけではありません。債権の担保などで、だいたい1兆5000億から二兆ドルは動かせないだろうと言われています。つまり2兆ドルを割り込むと危険水域に入ると見られているんですね。

ということは、1か月に1000億ドル使う現状の状態が、一年続くと危険ということになるのです。じゃあ為替介入しないで、人民元安をそのままにしておけばいいのか。すると今後は、人民元が急落し過ぎて、『ハイパーインフレ』の可能性も出てきてしまいますから、中国も為替介入を止めるに止められない状況なのです。
来年2017年までの1年間は、ソフトランディングできるかどうかの重要な期間と言えるでしょう。
 
バブル崩壊のタイムラグ 中国は下手をするとクラッシュへ
バブル経済の崩壊は、株価下落が始まってすぐには来ません。たとえば日本のバブル崩壊を見ると、1990年初頭の株価下落から不動産価格暴落まで、だいたい1年半から2年かかっています。中国の株価下落が始まったのが2015年6月ですから、日本の前例を参考にすると、2017年の初頭から後半に掛けて、中国でもバブル崩壊が広がってくる計算になります。
外貨準備高の枯渇と、なぜか時期が一緒と言うのが不気味ですね。逆に言えば、色んな指標や数値が限界を迎えるからこそ、ハードランディングになるのでしょう。

景気減速や外貨準備高の減少を不安視する習近平が、人民元の流出を食い止めるため、3月開催の全人代において、富裕層に対する「爆買い禁止令」を通すのではないかという見通しも浮上している。それが最悪シナリオへと通じるアリの一穴になるかもしれない。
http://diamond.jp/articles/-/85869?page=4

人民元下落を食い止めるには、資金流出対策もする必要がありますが、その方策として「爆買い禁止令」をやるかもしれません。しかし、金を持ってる人間に「消費をするな」と命令することは、かえって中国経済復活の足がかりを失い、危機を内外に宣伝することになりかねないわけですね。
様々なエコノミストシンクタンクが、中国のハードランディング懸念を出し始めているのは、年初に明らかになったサーキットブレイカーを導入した直後に引っ込める醜態を晒したからです。中国政府の経済担当陣が、思ったより経済オンチだったことを世界に示してしまい、こりゃダメだと失望感が広がってしまいました。中国政府が今年のリミットをうまく切り回せなければ、ハードランディングを飛び越えて、クラッシュにまで至るかもしれません。

 
■中国がクラッシュになった時、日本はどうするか

これから世界は、中国発の世界同時不況を引き起こしかねない可能性とその誘因因子を、徹底的に洗い出す必要があるのではなかろうか。とりわけ中国と経済上のつながりが深い日本は、中国やアジア諸国と協力しながら、チャイナショック防止を議論するための戦略プロジェクトチームを発足させるなどして、中国の体制整備に力を注ぐべきであると、筆者は提案したい。
http://diamond.jp/articles/-/85869?page=4

経済誌週刊ダイヤモンド」の嶋矢志郎氏は、この事態に対応して「中国等と協力しながら中国の体制整備に力を注ぐべき」と日本の支援を提言しました。中国と日本との通貨スワップを交渉材料に、言論の自由や直接選挙の導入を受け入れさせるとかでしょうか。
いろんな考え方があると思うんですよ。「中国共産党が崩壊した方が日本のためになるんだから、ほっとけ」と言う人だっているかもしれません。が、それは悪手になる可能性もあるわけです。
だって、中国共産党が倒れたら、チベットやモンゴル北部辺りは間違いなく独立を宣言するでしょうし、そうなると当然ロシアが出てきます。となればアメリカは出ざるを得ないですし、もちろん日本にも声が掛かるでしょう。あれれ。なんのことはない、アメリカが加わっただけで太平洋戦争勃発前夜と情勢がそんなに変わらないわけですね。そういう一触即発の状況を招く前に、周辺国でチャイナショック対策を検討しておくというのは必要かもしれません。
ロシアが介入してロクデモナイ状況になる前に、中国に対してどのように関わるのか、今年の重大な議題になるかもしれませんね。