ハーフミリオン突破! ゴッドイーターはポストモンハンを狙えるか?

完全新規のソフトながら、PSPでハーフミリオンを突破したソフトが出ました。
バンダイナムコゲームズの「ゴッドイーター」です。
このソフト、体験版などを通じてユーザーの意見を取り入れ、改良を重ねて売り出されました。伸び悩むPSPソフト陣の中で、ブレイクスルーを起こせるのでしょうか?

「新作ゲーム紹介:「ゴッドイーター」 体験版140万配信の期待作 協力プレーで逆転」
ゲームは、フィールドを動き回りながら、神機を銃・剣・捕食形態に瞬時に切り替えて、巨大なアラガミを攻撃する3Dアクション。捕食形態ではアラガミを「食らう」ことで能力を一時的にコピーできるほか、仲間と共有して超強力攻撃に発展させ、一発逆転が狙える。アラガミから手に入れた素材で、神機を400種類以上にカスタマイズできる。
無線通信に対応し、本体とソフトを持ち寄れば、最大4人まで協力プレーが楽しめる。1人プレー時はコンピューターが仲間の操作を担当する。
http://mainichi.jp/enta/mantan/graph/game/20100202/

PSPを持ち寄って、通信機能を使って仲間で協力して敵を倒す。これは「COOP」プレイと言うものです。海外では、ネットワークを使い、ボイスチャットで会話をしながらCOOPを遊ぶ方法がとっくの昔に定着しているのですが、日本のコンシューマゲームの中ではモンスターハンターポータブル2Gでようやく本格的に広がりました。
それまでもパソコンのオンラインゲームの中ではそこそこ広がってはいたのですが、どうも日本人は協力する相手の顔が見えないと遊べないようで、海外に比べて圧倒的に立ち遅れてたんですね。
実際、モンスターハンターは海外ではほとんど売れていません。COOP前提で、300時間以上地味なプレイが延々と続くのは、今の海外のトレンドに逆行する内容だからのようです。

日本では社会現象にまでなっているMHP2Gだが、海外においては過去に「モンスターハンター」シリーズがヒットしたことはない。07年8月に北米で「モンスターハンターポータブル2nd(MHP2)」の海外版「Monster Hunter Freedom 2」が発売されたが、20万本前後しか売れていない。
http://it.nikkei.co.jp/digital/column/gamescramble.aspx?n=MMITew000002052008

しかし海外で売れなかろうと何だろうと、日本だけでしっかり200万本以上売れるなら何の問題もありません。モンスターハンターの掘り当てた金鉱を狙って、似たようなCOOPを売りにしたソフトがいくつも出たのは、当然のことだと言えます。
しかし実際にはパッとしませんでした。

2008/7/31 ファンタシースターポータブル  636,973本
2009/12/3 ファンタシースターポータブル2 560,523本(差 -76,450)
 
2004/12/12 みんなのGOLFポータブル  399,257本
2007/12/06 みんなのGOLFポータブル2 287,296本(差 -111,961) 
 
2008/11/20 機動戦士ガンダム ガンダムVS.ガンダム         415,104本
2009/12/03 機動戦士ガンダム ガンダムvs.ガンダムNEXT PLUS  387,940本(差 -27,164)
などなど。

一番売れた後釜ソフトのファンタシースターシリーズ含めて、続編の2になって売上を落とすケースが目立ちます。どう考えても成功とは言えません。
もちろんPSPというハードの寿命という要因もありますので一概には言えないのですが、モンスターハンターで発掘されたユーザー層のニーズを掴みきれていないのは事実でしょう。
そんな中で、ゴッドイーターが2009年一番売れたソフトのファンタシースターポータブルに匹敵する販売本数を叩き出したのは、非常に目立ったトピックスです。クローズアップされたのは、ユーザーの意見を積極的に取り入れる姿勢でした。

ゴッドイーター:オリジナル新作で異例の50万本超の大ヒット 人気の秘密とは?」
富澤祐介プロデューサーは「徹底的にユーザーとのコミュニケーションを取りながら作り上げていった」と語る。
ゴッドイーター」は、実際に遊んでもらっての感想や1000人近いユーザーを対象にしたアンケートなど、さまざまな形で試作版の段階からユーザーに意見を求めた。試作版に盛り込まれた青い空や緑の草原といった明るい背景のせいでユーザーから「子供向け」という意見が相次いだことを受けて、世界観を一から作り直したこともあった。
http://mainichi.jp/enta/mantan/news/20100320mog00m200018000c.html

富澤プロデューサーは、ブログやツイッターなども逐一チェックし、最速の反映を約束しています。ユーザーの望みに応えて、どんどん改良され、成長していくというのは、ネットゲームの形式に近いものがあります。
しかし実はこれは諸刃の剣になる可能性も持っています。意見を言うのが、ゲームを楽しんでいる最大公約数とは限らないからです。むしろいわゆるコアゲーマーのさらにヘビーコアゲーマーと分類される人が意見を言う確率が高いのです。
上記のリンクでも、エクセルファイルで企画書の形式で意見を送ってきたツワモノのエピソードが紹介されていますが、そんな人はゲーマーの中でもかなりニッチであることは間違いありません。
かつて一世を風靡した「格闘ゲーム」や「シューティングゲーム」も、寸暇を惜しんでやり込むヘビーゲーマーに対応させていった結果、ジャンル自体が死に瀕するという現状を生み出してしまいました。
ユーザーの声を広く反映させていくつもりが、どんどん先鋭化されてしまい、気がついた時には、ついてきている人は極わずか。しかもその人たちは何が出ても満足できないヘビーコアゲーマーだった。こんな状況にならないとも限りません。そうならないためには、極めて優れたバランス感覚が必要になるのです。
 
そして「ポストモンハン」を狙う時に、根本的に気になることがあります。
モンスターハンター」というゲームは、それ自体かなり「ヘビーユーザー向け」の仕様です。そもそもモンスターを倒すのに実時間1時間を越えるのが普通と言うゲームはなかなかありません。「やりがいがある」と言えばそれまでですが、モンスターハンター2Gを買った累計400万人のユーザーが、のきなみヘビーユーザーであるとは到底思えません。そこにはかなりの「ライトユーザー」が、「みんながやっているから」「友人に誘われて」といった簡単な理由で『一過性のブーム』として入り込んできた背景があるのではないでしょうか? そうでなければ、下手をするとプレイ時間1000時間などという凄まじいゲームが、これほどまでに売れないでしょう。
そうなると、ゲームの良し悪しに関わらず、考えなければならない事項が出てきます。それはモンハンによって『消費』された『やる気』とか『好奇心』といった目に見えないものです。
発売されて既に4年目に突入し、そろそろ飽きが来てモンハンプレー人口が減ってきています。しかしそれらのユーザーの内、すぐに次のソフトを物色し始めるヘビーコアユーザーは、それほど多いわけではありません。過去の事例を見ても、そういう人はだいたい30〜40万人程度なんですね。それ以外の人が、モンハンのようなヘビーゲーマー仕様のゲームを買いに走るのは、一旦消費された『やる気』や『好奇心』が、またゲームを買いに走らせるほど溜まっていき、丁度タイミング良く友人の評判を聞いたり、店頭に並んでいたりした時なのですね。
 
ですから、今までPSPに投入されたCOOP仕様のゲームがパッとしなかったのは、この投入タイミングに達していなかったからとも言えるでしょう。
今回売れたゴッドイーターは、積極的にユーザーの意見を取り込むということで、ユーザーの好奇心を引き付けました。もちろんそこには、体験版をやって「面白そう」と思えるソフトとしてのポテンシャルも秘めてなければなりません。
でも、「ポストモンハンを獲得する上で必要なのは、ユーザーの意見をインターネットを監視して取り入れることだ」とするのは、結構危険でしょうし、事態を見誤ることになると思います。やはりモンハンによって『消費』されていた『やる気』や『好奇心』が、ユーザーに戻りつつあるという視点が必要なのではないでしょうか?
 
今年の年末には、本家モンスターハンターポータブル3がいよいよ投入されます。ブームを再び起こせるのか、「ポストモンハン」はやはり「モンハン」のみが成し遂げられるという結果になるのか、いろいろな意味で注目です。