グリー田中社長、「ガチャ」は射幸心を煽る福袋やくじと同じと開き直る?

初の前期比マイナス決算となったグリー。株式市場も敏感に反応し、ストップ安寸前まで行きました。1月から3月までの決算と比較して、4月〜6月決算で約13%も売上高が減少。もちろん、上場以来初の出来事です。 

「交流ゲーム、陰る成長 開発会社は依存見直し」

グリーの場合、ゲーム内で道具やくじを利用する際に顧客が支払う課金収入が売上高の約9割を占める。4〜6月期はコンプガチャ見直しでゲームの利用を活発にするイベントが計画ほどできなくなり、課金収入が前の四半期から15%減った。規制の影響が本格化する今期は、利益増にブレーキがかかる公算が大きい。
 
■アップル向け配信
通常、ゲーム開発会社がグリーやDeNAのプラットフォームに配信した場合、売り上げの4割は2社の取り分となり、自社に残るのは6割にとどまる。アップストアだと開発会社は7割を得られるため、「グリーやDeNAを離れた方が収益力が上がる」と話すゲーム会社も出てきた。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGD1405Y_U2A810C1EA2000/

コンプガチャショックは5月5日ですから、4月〜6月決算の期間的には半分ぐらいです。コンプガチャの影響もこれからが本番ですね。
しかし、日経新聞の記事にある折れ線グラフを見ても、どの会社もコンプガチャの影響は凄まじいものがあります。いったいどんだけ依存していたんでしょうか?
グリーの業績に注目すると、2012年2月2日に行った通期業績予想では、売上高が160,000百万〜170,000百万だったのに対し、実際の業績は158,231百万でした。つまり初の業績マイナスだけでなく、初の通期業績予想未達でもあります。わざわざ100億円の幅を持たせている業績予想の、さらに下を行ったことは、株価にインパクトを与えるのに十分と言えるでしょう。
 
■ガチャは福袋やクジと一緒か
日経新聞とグリー田中社長とのインタビューで、「ガチャ」が福袋やクジと同じと答えて話題になっています。

「グリーの田中良和社長「社会が受け入れるサービスを」2012/8/14

――任天堂岩田聡社長は4月に「射幸心をあおり高額課金を誘発するビジネスは、お客様との関係が長続きするとは考えていない」と指摘した。ユーザーとの関係性をどう考えるか。
 
「世の中には中身の分からない福袋や宝くじなど、射幸心をあおるようなものはたくさん存在している。 コンプガチャがそういったものとは異なると社会が判断したことは、きちんと受け止め真摯に対応してきた。 だが、社会に受け入れられるものであれば問題はない。我々の提供するサービスは、社会に広く受け入れられることが第一だ」
 
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/management.aspx?g=DGXNMSGD1405RN14082012000000

「福袋や宝くじは射幸心を煽る。でも社会に認められてもいる。だから、ガチャも認められればオッケーだ!」という凄い言葉です。
がしかし、現在この射幸心の部分は、訂正されて記事から抹消されてしまいました。

――任天堂岩田聡社長は4月に「射幸心をあおり高額課金を誘発するビジネスは、お客様との関係が長続きするとは考えていない」と指摘した。ユーザーとの関係性をどう考えるか。
 
「世の中には福袋やくじなど、中身のわからないものを使う販売手法が存在してきた。コンプガチャがそういったものとは異なると社会が判断したことは、きちんと受け止め真摯に対応してきた。だが、社会に受け入れられるものであれば問題はない。我々の提供するサービスは、社会に広く受け入れられることが第一だ」

まぁ、最初のままの記事だと問題ありすぎですね。なにしろ田中社長自らガチャが「射幸心を煽ってる」と認めてしまっています。特に宝くじは風適法の枠が細かく掛かっています。田中社長がガチャで射幸心を煽っていると自覚し、クジなどと同じと認めるなら、風適法の範疇で運用されなければなりません。サービス提供時間や、未成年への利用制限、確率に関する監査、暴力団への対応など、今のビジネスで抜け道がいくつもある状態が、警察主導で管理されることになるでしょう。
もちろんサービスは認可制になります。認可制と言うことは、認可取り消しがあると言うことです。これがパチンコ店や場外馬券場なら、その店舗が営業停止になるだけですが、ソーシャルゲームメーカーの場合、ゲームごとに認可を受けるわけではありません。つまり何が起こるかと言うと、釣りスタで問題発生したら、認可取り消しはグリーになりますから、探検ドリランドも聖戦ケルベロスも、みんな一発でサービス停止なるということですね。
まさにギャンブル。株式市場的にも、超危ない業種の誕生となることでしょう。
射幸心と言う言葉自体は削除されましたが、このインタビューでクジなどとガチャを同列に見ている事実が判明したわけです。現状、確率調整含めてなんの保障も担保されない「ガチャ」の状況は、やはり改革されなければならないでしょう。
 
■ガチャ運用ガイドラインが9月から施行へ
日本オンラインゲーム協会かまとめたガチャガイドラインが発表されました。興味深いところをピックアップしてみます。

3.有料ガチャの設定に関する事項
(2) 有料ガチャについては、下記のいずれかを遵守するものとする。なお、有料ガチャにより提供されるガチャアイテムの価値について、その価額が明記されていない場合、可能な限りにおいて、その類似または同類のアイテム等の価額を参照するものとする。
□ a. 有料ガチャ1回利用時に提供されるガチャアイテムの価値は、有料ガチャ1回の価額と同等またはそれ以上とする。
 
4.有料ガチャの運用に関する事項
(1) ガチャアイテムの提供割合は、事前の告知無くこれを変更しない。ただし、緊急を要する場合はこの限りでは無いが、変更の可能性が生じた時点から可及的速やかにその旨を告知するよう努めるものとする。
(2) b. 運用責任者は、有料ガチャが設定された通り適切に稼働することを確認し、書面等により確認の結果等を記録する仕組みを社内に構築するものとする。
 
5.禁止事項
(1) 有料ガチャの利用条件やガチャアイテムの内容に関して、事実に相違する表示、実際のものよりも著しく優良、有利、その他利用者に誤認されるおそれのある表示をしてはならない。

6.内部監査に関する事項
(1) 本ガイドラインが適切に運用されるよう、監査を行うものとする。
http://www.japanonlinegame.org/pdf/JOGA120815.pdf

まず3、(2)、aは、1回300円のガチャで得られるのは、最低でも300円の価値のものとなります。通常100円で購入できる回復薬が1個出てくるということはなくなりそうです。100円の回復薬が当たったの場合、3個出てくることになるでしょう。
次に4、(1)は、ソーシャルゲームの肝であるユーザーの出入りに応じて、確率調整することを禁止ということです。なにげにソーシャルゲームの一番の強みを制限する内容ですね。「ちょっとイベント戦の参加人数が低いから、確率を上げよう」。「掲示板で当たりやすいっていうコメントが増えて、参加人数も増えてきたから確率を下げよう」。こういうことができなくなります。
bは、書面でガチャの設定を残せと言っています。紙の仕様書は存在しませんなどと逃げることは、許されなくなります。
そして5の禁止事項。元の確率も出さずに、「20%アップ!」などと煽ることは、禁止事項となりました。
最後に6は、監査が必須項目になったということですね。
個人的には、確率調整の告知の義務化が大きいと思います。もちろん警察が介入しないように、なんとか必死なんでしょうね。
 
■海外進出の壁
ソーシャルゲームメーカーは日本での頭打ちから、海外へ脱出し始めています。田中社長のインタビューでも、海外進出が次の一手として強調されてました。が、もちろんそう簡単にはいきません。

グリー子会社のアトランティスの木村新司代表取締役も、3日に開催された「グリープラットフォームカンファレンスサマー2012」で、海外の広告企業を組み合わせる必要性を述べて、利用している10社の米企業の特徴を説明した。この発言を裏返して解釈すると、海外展開のためには多くの企業を使うことが必要であり、継続して人気を獲得し続けるためにはコストが日本以上に掛かるということだ。
 
09年に米ロックユーは、ユーザーが自分たちのゲームを「お試し」で遊んでもらうため「1人当たり1ドルかかっている」ことを認めている。同社はピーク時の10年には月間1800万ユーザーを獲得していたが、現在では約1000万ユーザーにまで落ち込んでいる。ユーザーに初めて触ってもらうために費用が掛かり、継続し遊んでもらうためにも大きな費用がかかるということだ。その費用に耐えきれなくなったことで、同社はユーザーを失っていったと考えられる。
http://s.nikkei.com/SB1FWg

ソーシャルゲームで花開いた「フリートゥープレイ」。最初は無料で遊ばせ、課金で稼ぐビジネスモデルですが、このビジネスモデルの維持には、莫大な広告費、初めて触れてもらうための企画費が、掛かり続ける問題点が見えてきました。金が切れた途端、800万人のユーザーを失ってしまうのです。

グリー秋山本部長「9割以上の売り上げを占めるコイン課金収入のうち、10%強の海外事業収入を見込んでいる。今期上期は先行投資の色合いが強いが、下期にかけて利益面で寄与できるのではないか」
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/management.aspx?g=DGXNMSGD1405RN14082012000000&df=2

収益率が落ちている理由を、「海外への先行投資」と説明したグリーですが、実は永続的に投資金額が膨れ続け、収益率は上がってこない可能性があると言うことなのですね。また、ファミ通のインタビューでグリーのヨーロッパ担当はこんなことも言っています。
 

「グリー吉田大成氏に聞く、ヨーロッパ市場への大きな手応え」2012年8月18日
 
――見つかった課題みたいなものはありますか?
日本だと1回につき5分〜7分を複数回という感じなのですが、ヨーロッパだと1回のプレイサイクルが15分〜30分くらいという方が多いんです。5分くらいで体力がなくなると、「ぜんぜん遊べないから……」ということで、辞められてしまう。15分以上遊べたほうが、つぎのモチベーションにつながるみたいなんです。
――出したものでも、結果がよくなかったら果敢にカルチャライズすることも辞さない?
もちろんです。たとえば、チュートリアルなんかも、日本と同様に5分くらいで設定すると翌日再びアクセスしてくれる率がものすごく悪くなってしまうんですね。それが15分、30分と伸ばすと、どんどんアクセス率が上がっていく。「ああ、こういうことなんだ!」という気づきがありました。
 
http://app.famitsu.com/20120818_85168/

凄いことをみつけた、という感じに書かれていますが、要するに日本人のように簡単に食いついてこないので、無料で長く遊ばせないといけないということになります。当然収益化は日本より効率悪くなりますよね。また、日本人は電車に乗っている5分、10分でプレイするといった、隙間時間にプレイする人が多いですが、ヨーロッパはそうした暇つぶしにプレーする人は、圧倒的に少ないこともわかります。そもそもそういう文化自体無いのでしょう。
つまり遊んでいる人は、余暇をゲームに使う普通のゲームユーザーということになります。日本では、暇な数分を携帯ゲームでしか遊ばない「スーパーライトユーザー」のような新たなシェアを掴みましたが、欧州では普通のゲームユーザーの取り合いという厳しい戦いになる可能性が高いのですね。
ライバル「ディー・エヌ・エー」と同じく、海外の収益化は今年中に行う予定ですが、本当にそう行くのか注目です。