垂直落下が止まらないグリーとモバゲー

2月に入って、相次いでソーシャルゲーム大手の決算発表が行われました。
ずーっと落ち続けているグリーに加えて、踏ん張ってたDeNAも業績が決壊。今後の展開に暗雲が垂れ込めております。
 
■プラットフォームビジネスが遂に崩壊

「ディーエヌエの今期、上場来初の営業減益 モバゲーの利用低迷」
ディー・エヌ・エーは5日、2014年3月期通期の連結営業利益(国際会計基準)が前期比31%減の530億円になりそうだと発表した。通期で営業減益となるのは05年の上場以来、初めて。交流サイト「モバゲー」で提供するソーシャルゲームの利用が国内で低迷していることが主因。ゲーム内で使用する仮想通貨「モバコイン」の消費も減少している。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL050Q7_V00C14A2000000/

DeNAは、上場以来初の営業減益。しかもいきなり前期比31%減という強烈な結果です。
しかし、こんな程度で驚いてはいけません。グリーはさらにこの上をいきます。

「グリー7〜12月期、純利益46%減 フィーチャーフォン落ち込み、スマホ向けもヒット出ず」
グリーが 2月14日に発表した2013年7〜12月期連結業績は、純利益が前年同期比45.8%減の98億円に落ち込んだ。フューチャーフォン向けゲームの課金売 り上げが減り、スマートフォン向けでもヒット作が出なかった。売上高は12.1%減の679億円、営業利益は36.9%減の189億円、経常利益は 34.2%減の207億円。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1402/14/news138.html

純利益46%減! ほぼ半減です。
両社とも仮想通貨の消費が減少しているのが特徴で、これは両社のプラットフォームを使わず直接ソフトをダウンロードする、ネイティブソフトの浸透を示しています。パズドラ以降に進むと予想されていた「プラットフォームはずし」が、いよいよ数字に出るほど進んできたのですね。

10〜12月期の仮想通貨「コイン」(1コイン=1円相当)消費は、フィーチャーフォンで前年同期比43%減の148億コインに落ち込んだ。スマートフォ ンではネイティブゲームで40%拡大し、128億コインとなったが、ブラウザゲームでは3%減の194億コインとなっている。海外事業は12月に単月黒字 化を達成したという。

今回の決算で、フィーチャーフォンからスマートフォンへの乗り替える際に、ブラウザゲームのユーザーが、ネイティブゲームに乗り代えてしまうことが、確定しました。
もちろん、これはモバゲーでも同様の現象です。

国内「Mobage」でのソーシャルゲーム利用が、利益率の高い内製・協業タイトルを中心に低迷したことが主因。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1402/05/news133.html

自社で提供するプラットフォームでランキングを管理し、仮想通貨で稼ぎまくるビジネスモデルは、ついに崩壊したと言えるでしょう。まぁ中抜きビジネスが、ここまで長続きしたことの方が特殊だったのかもしれません。
 
■今後の対策⇒「ヒット作待ち」というソーシャルゲームメーカーの限界

これから「どのように収益を上げていくのか」が注目されますが、2社とも新しいビジネスモデルを提示できていません。

ディー・エヌ・エーは、平成26年3月期 第3四半期決算を発表しました。
ソーシャルメディア事業では、引き続き国内外で「Mobage」のゲーム関連売上収益の拡大を目指していきます。従来から利用が活発なユーザ層向けのもの から、これまでのラインナップではとらえきれなかったユーザ層向けのライトなものまで幅広いジャンルを対象として、引き続き新規リリースを行い、ブラウザ ゲーム、アプリゲームの両方で、新規タイトルからヒット作を創出していくとのことです。
http://www.inside-games.jp/article/2014/02/06/74143.html

「売上の回復、「ヒットタイトルの創出」がカギ--グリー田中社長」
最近は明るい話題の少ないグリーだが、第2四半期のみ(10〜12月)の売上高は326億円、営業利益は92億円で減益となったものの、費用削減によって前四半期と比べて6億円の減少にとどめている。
苦戦が続く国内事業については、第3四半期まではスマートフォンならではのゲーム性を取り入れた新規タイトルの開発に注力する“仕込みの時期”と説明。新規タイトルの売上貢献が期待できる第4四半期での反転を狙いたいとしている。

http://japan.cnet.com/news/business/35043912/

ちなみに、「新規タイトルの投入による業績の回復」は、去年の8月からずーっと言ってることであります。
もともとソーシャルゲーム各社は、新規にヒットタイトルを開発していくことの意味が違っていました。

「稼げるゲームはこう作れ。グリーが明かす「セールスランキングNo.1プロダクトの作り方」
収益化モデルの構築には,失敗に意味があることをきちんと演出することが重要であり,有料アイテムは見た目に効果が分からないとダメだという。「細かなゲームバランスよりも,課金機会の演出,効果の演出のほうが大事」と岸田氏は指摘する。
http://www.4gamer.net/games/127/G012735/20110908100/

大変物議を醸した「ゲームバランスより演出の方が大事」発言を見ればわかるとおり、「ヒットタイトルの開発」とは「課金させる演出の開発」であるわけです。結果、違法なコンプガチャに手を出し、痛いしっぺ返しを受けて、その後「演出開発」に行き詰まることになったわけですね。
普通に考えると、演出いじった程度でヒットタイトルを連発できれば苦労しません。そして実際に難しいから、この決算にはなっているのではないでしょうか。
 
■グリーは来月までの業績予想を開示

 事業の洗濯と集中の進捗のなどにより業績が大きく変動する可能性があることから、通期の業績予想は開示せず、第3四半期(累計)の業績予想を発表した。第3四半期の売上高は990億円(対前年同期比14.1%減)、営業利益は270億円(同33.9%減)、経常利益は285億円(同34.8%減)、当期純利益は145億円(同36.5%減)になる見込みだ。
http://www.rbbtoday.com/article/2014/02/14/116893.html

未だに通期の予想を出さないグリー。一応3月、つまり来月までの予想を発表しました。
営業利益、経常利益、純利益全て3割減以上と、未だ底を打っておりません。海外市場は単月黒字を達成したようですが、日本の業績低下の方が早くて、どうにもならない状態です。
『ヒットタイトルが出れば業績向上。出なければジリ貧』というのは、コンシューマーゲームメーカーとなんら変わらないのですが、いいのでしょうか? ソーシャルゲームの「新時代の新しいゲームビジネス」といったかつてのブランドは、今や煤けてサビが目立つ看板になりつつあります。
これから本当に復活できるのか、グリーとモバゲーの舵取りに注目です。